古いアパートを相続したらどうする?手続き・相続税評価・入居者対応と売却の選択肢を解説

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最終更新日:2026/10/29

築古アパート相続の全体像
築古アパート相続の全体像

アパートを相続すると家賃収入が得られる一方で、入居者への対応や修繕、税金の手続きなど、引き継ぐものも多くあります。特に築年数の古いアパートは、空室の増加や大規模な修繕、耐震性の問題など、何もしなければ収入が減り、資産価値も下がっていきます。
この記事では、古いアパートを相続したときの選択肢、相続直後にやるべき手続き、相続税の評価、入居者との契約や立ち退きの注意点、そして入居者がいるまま売る方法まで、入居者付き物件の買取を手がける当社の事例を交えて解説します。

古いアパートを相続したときの選択肢

古いアパートを相続した後の3つの選択肢
古いアパートを相続した後の3つの選択肢

築年数の古いアパートを相続した場合、大きく分けて次の選択肢があります。

選択肢 向いているケース 注意点
そのまま賃貸経営を続ける 入居率が高く、収支が黒字。近くに住んでいて管理できる 修繕費の増加、空室リスク、入居者対応の手間
リノベーション・建て替えをして続ける 立地が良く、改修すれば賃料を上げられる 多額の資金が必要。建て替えには入居者の立ち退きが必要
売却して現金化する 収支が厳しい、管理できない、相続人で分けたい、納税資金が必要 入居者がいると買い手が投資家などに限られる

1. そのまま賃貸経営を続ける

入居者がいて収支が回っているなら、そのまま経営を続けるのが最も手軽です。ただし、古いアパートは屋根や外壁、給排水管などの大規模な修繕が近づいていることが多く、設備の古さから入居者が離れ、新しい入居者も決まりにくくなります。修繕の計画を立て、収支が今後も成り立つかを確認しておくことが大切です。

2. リノベーションや建て替えをする

内装や設備を一新すれば、入居者の好みに合った部屋になり、賃料の見直しや空室の解消につながることがあります。ただし、リノベーションには多額の費用がかかるため、かける費用に見合う賃料の上昇や入居率の改善が見込めるか、事前に収支を計算しておきましょう。
建て替えまで考える場合は、今の入居者に退去してもらう必要があります。借地借家法で入居者は強く守られているため、立ち退きには時間と立退料がかかります(後述)。

3. 売却して現金化する

管理に時間や資金をかけられない場合や、相続人で公平に分けたい場合は、売却して現金化するのも合理的な選択です。売却で得たお金は、相続税の納税や、ほかの資産への組み替えに充てられます。
入居者がいるまま売る方法(オーナーチェンジ)と、入居者に退去してもらってから売る方法があります。相続した不動産の現金化については相続した不動産を現金化する方法、アパートの売り方はアパート売却の進め方で解説しています。

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アパートを相続したらやるべきこと

アパート相続時に行う5ステップ
アパート相続時に行う5ステップ

アパートの相続では、一般の不動産の相続手続きに加えて、賃貸経営を引き継ぐための手続きも必要です。主な手続きを期限順に並べると次のとおりです。

期限 手続き
すぐに 入居者・管理会社への連絡、家賃の振込先の確認、賃貸借契約書・敷金の確認、アパートローンの確認
1ヶ月以内 相続人が新たに賃貸経営を始める場合の開業届(個人事業の開業届出書)
4ヶ月以内 亡くなった人の準確定申告
青色申告をする場合 青色申告承認申請書の提出(亡くなった日により期限が異なる)
10ヶ月以内 相続税の申告・納付
3年以内 相続登記(2024年4月から義務化)

ステップ1. 入居者・管理会社への連絡と家賃の管理

オーナーが亡くなっても、入居者との賃貸借契約はそのまま相続人に引き継がれます。まずは管理会社や入居者に連絡し、家賃の振込先や修繕の窓口を確認しましょう。亡くなった人の口座は凍結されることがあるため、家賃の振込先を変える必要が出てきます。
遺産分割が決まるまでの間の家賃は、遺産そのものではなく、相続人が法定相続分に応じて受け取る権利があるとされています(最高裁平成17年9月8日判決)。実務では、代表の相続人が一時的に預かり、遺産分割が決まった後に精算するのが一般的です。

あわせて、賃貸借契約書と入居者から預かっている敷金の額、アパートローンの残高も確認します。敷金を返す義務は相続人に引き継がれます。アパートローンには団体信用生命保険がついていないことも多く、その場合は借入金も相続人が引き継ぎます。

ステップ2. 遺産分割協議で取得する人を決める

アパートを誰が引き継ぐかを決めます。複数の相続人で共有にすると、売却や建て替え、大規模な修繕に共有者の合意が必要になり、経営の判断ができなくなりがちです。できれば一人が相続し、ほかの相続人には代償金を払う、あるいは売却して代金を分けるといった方法を検討しましょう(参考:共有持分を相続することになったら)。

ステップ3. 準確定申告

準確定申告とは、亡くなった人のその年の1月1日から亡くなった日までの所得について、相続人が代わりに行う確定申告です。家賃収入がある場合は必要になり、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に申告・納税します。
相続人が2人以上いる場合は、原則として連署で申告書を提出しますが、それぞれが別々に提出することもできます。その場合は、提出した内容をほかの相続人に知らせる必要があります。

参考資料:国税庁|No.2022 確定申告を要する人が死亡したとき(準確定申告)

ステップ4. 相続人の賃貸経営の届出(開業届・青色申告)

アパートを相続した人は、翌年から家賃収入について自分で確定申告をする必要があります。新たに不動産の貸付けを始める場合は開業届を出し、青色申告をするなら「青色申告承認申請書」を提出します。青色申告をしていた人の事業を引き継ぐ場合の提出期限は、亡くなった日によって次のように異なります。

  • 1月1日〜8月31日に亡くなった場合:亡くなった日から4ヶ月以内
  • 9月1日〜10月31日に亡くなった場合:その年の12月31日まで
  • 11月1日〜12月31日に亡くなった場合:翌年の2月15日まで

期限を過ぎると、その年は白色申告になります。青色申告の最大65万円の特別控除は、アパートが5棟10室以上などの「事業的規模」の場合に限られ、それ以外は10万円の控除になる点にも注意しましょう。

ステップ5. 相続税の申告・納付

相続税は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告・納付します。遅れると延滞税や加算税がかかります。アパートは、自宅などに比べて相続税の評価額が低くなる仕組みがあります。

  • 土地(貸家建付地):自用地としての評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合30% × 賃貸割合)
  • 建物(貸家):固定資産税評価額 ×(1 − 借家権割合30% × 賃貸割合)

賃貸割合は、亡くなった時点で実際に貸している部屋の割合なので、空室が多いと評価額は下がりにくくなります。また、一定の条件を満たせば、小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)で、敷地の200㎡までの評価額を50%減額できます。相続人が申告期限まで賃貸経営と土地の所有を続けることなどが条件で、相続開始前3年以内に貸付けを始めた土地は原則として対象外です。入居者から預かっている敷金は、債務として遺産から差し引けます。
路線価の調べ方や相続税の計算は借地権割合の計算方法|路線価の見方や借地権の相続税はいくら?も参考にしてください。

参考資料:国税庁|路線価図・評価倍率表

ステップ6. 相続登記

相続登記は、アパートの土地・建物の名義を相続人に変える手続きです。2024年4月から義務になり、相続を知った日から3年以内(2024年4月より前の相続は2027年3月31日まで)に申請しなければ、10万円以下の過料の対象になります。登記をしないと、売却やアパートローンの借り換えもできません。司法書士に依頼するとスムーズです(参考:相続登記が未了の不動産は売却できる?)。

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築年数の古いアパートを相続したときの注意点

築古アパート相続の3つの注意点
築古アパート相続の3つの注意点

注意点1. 修繕費を見積もり、収支を確認する

築年数の古いアパートは、次のような修繕がまとめて必要になることがあります。

修繕が必要になりやすい箇所 確認するポイント
屋根・外壁・鉄骨階段 雨漏りやひび割れ、塗装のはがれ、さびがないか
給排水管・電気設備 漏水や漏電のリスク、配管の材質や交換の履歴
室内・設備 壁紙や床の傷み、キッチン・浴室・給湯器の古さ

修繕を先送りすると、入居者の安全や住み心地に影響し、空室も増えます。専門業者に建物を調べてもらい、今後10年程度でかかる修繕費を見積もったうえで、家賃収入から管理費、固定資産税、ローン返済、修繕費を差し引いて、手元にいくら残るかを確認しましょう。収支が赤字になるようなら、早めに売却も検討したほうがよいかもしれません。

注意点2. 耐震性と法令への適合を確認する

1981年5月31日以前に建築確認を受けた旧耐震基準のアパートは、大きな地震で倒壊するおそれがあります。建てた当時は適法でも、その後の法改正で現行の基準に合わなくなった建物(既存不適格建築物)は違法ではありませんが、入居者の安全や将来の建て替え・売却に影響します。
次のような点を確認し、必要に応じて対策しましょう。

  • 耐震診断・耐震補強:旧耐震の場合は、耐震診断を受けて補強を検討します。自治体の助成制度を使える場合もあります。
  • 消防設備:住宅用火災警報器や消火器など、消防法で求められる設備が設置・点検されているか確認します。
  • 避難経路:廊下や階段に物が置かれていないかなど、避難経路が確保されているか確認します。

建物の法令上のルールについては建築基準法とは?で解説しています。

注意点3. 入居者との契約を確認する(勝手には変えられない)

相続しても、入居者との賃貸借契約は前のオーナーとの条件のまま引き継がれます。オーナーが変わったからといって、一方的に契約を作り直したり、家賃を上げたりすることはできません。

  • 契約内容の確認:家賃、敷金、契約期間、更新の条件、特約などを一覧にし、契約書が見当たらない入居者がいないか確認します。
  • 家賃の見直し:相場より大幅に安い場合でも、値上げには入居者の合意が必要です。合意できなければ、調停や裁判で判断されます(借地借家法32条)。更新のタイミングなどに、丁寧に話し合いましょう。
  • 保証会社・火災保険:古い契約では保証会社や入居者の火災保険が入っていないこともあります。入居者の同意を得て加入してもらう、次の更新時に条件を見直すなどで対応します。

また、オーナー側の火災保険(建物の保険)の契約者や、管理会社との管理委託契約の名義も、相続人に変更しておきましょう。

注意点4. 立ち退きには正当事由と時間がかかる

「古いから建て替えたい」「空にして売りたい」と考えても、入居者に退去してもらうのは簡単ではありません。オーナーから更新を拒んだり解約を申し入れたりするには、借地借家法の「正当事由」が必要で、建物の老朽化だけでは認められにくく、立退料の支払いが求められるのが一般的です。長く住んでいる高齢の入居者などでは、話し合いが長引くこともあります(参考:立ち退きの正当事由とは?)。
なお、弁護士ではない業者が報酬を得てオーナーの代わりに立ち退き交渉を行うことは、弁護士法で禁じられています。立ち退きの交渉を誰かに任せる場合は、弁護士に依頼するか、物件そのものを買い取ってもらい、新しいオーナーとして交渉してもらう方法を選びましょう。

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相続後に賃貸経営を安定させるポイント

相続後の賃貸経営を安定させる3つのポイント
相続後の賃貸経営を安定させる3つのポイント

相続後もアパート経営を続ける場合は、次の3つを意識しましょう。

1. 地域の需要に合わせて経営を見直す

アパートのある地域の賃貸需要と供給のバランスを調べ、周辺の新築物件やリノベーション物件の家賃や空室の状況を確認しましょう。単身者、ファミリー、高齢者など、どんな人に住んでほしいかを決め、それに合った設備や家賃を設定します。たとえば、大学やオフィス街が近いなら単身者向けの設備を充実させる、といった工夫です。

2. 計画的に建物を管理・修繕する

古いアパートほど、壊れてから直すのではなく、計画的に修繕することが大切です。屋根や外壁の塗装、配管の交換、電気設備の更新などを計画に沿って行えば、大きなトラブルや急な出費を防げ、入居者の満足度も上がります。

3. 専門家の力を借りる

  • 税理士:相続税や毎年の確定申告、減価償却の計算、節税の相談
  • 建築士・工務店:建物の調査、耐震補強やリノベーションの計画
  • 不動産管理会社:入居者の募集・選定、契約書の作成、家賃の集金、クレーム対応、定期的な巡回や修繕の手配など

遠方に住んでいる場合や、本業が忙しい場合は、管理会社に任せることで負担を大きく減らせます。

入居者がいるまま売るという選択肢

古いアパートは、空室や修繕費、立ち退きの問題を抱えていることが多く、一般の投資家に売ろうとしても買い手が見つかりにくいことがあります。こうした場合は、入居者付きの物件を扱い慣れた買取会社に、今の状態のまま売る方法があります。

当社の「賃借人付き物件買取事業」では、古アパートや貸家、古ビルなど、入居者やテナントがいる物件を現況のまま買い取っています。

  • 賃貸借契約を引き継いでそのまま買取:今の賃貸借契約と敷金を当社が引き継ぐので、入居者に退去をお願いする必要はありません。入居者への貸主変更のお知らせも当社が行います。
  • 明け渡しが必要な物件も現況のまま買取:建て替えや老朽化で明け渡しが必要な物件も、入居者がいる状態のまま当社が買い取ります。取得後の明け渡しの交渉は、新しい貸主となった当社が自ら行い、明け渡しにかかる費用も当社が負担します。

売主様が入居者と話し合う必要はなく、ご相談の段階で入居者に知られることもありません。一棟アパートの買取については一棟アパートの買取とは?でも解説しています。

入居者のいる老朽アパートを、相続対策で売却(品川区西五反田)

借地上のアパートが老朽化し、相続対策もかねて手放したいというご相談でした。3戸のうち2戸に入居者がいましたが、建物は住み続けるのが難しい状態だったため、当社が引越し費用をすべて負担して退去いただき、借地権付き建物をそのまま買い取りました。
事例を見る:品川区西五反田8丁目

入居者はそのまま住み続けられる形で買取(江戸川区平井)

住み替えを機に、賃貸住戸2戸のある賃貸併用住宅を売りたいというご相談でした。入居者にはそのまま住み続けていただく形で当社が買い取り、オーナー住戸だけをリフォームして、自己使用を希望する方に販売しました。
事例を見る:江戸川区平井

テナント6店舗の老朽ビルを、相続対策で売却(港区赤坂)

大型店舗の退去で収入が激減し、相続対策として売却を決めた商業ビルです。当社が取得した後、6店舗のテナントと明け渡しの交渉を行い、約1年で全店舗から退去の合意を得ました。
事例を見る:港区赤坂

アパートの相続に関するよくある質問

Q. 遺産分割が決まるまでの家賃は誰のものですか?

遺産分割前の家賃は遺産そのものではなく、相続人が法定相続分に応じて受け取る権利があるとされています(最高裁平成17年9月8日判決)。実務では代表の相続人が一時的に預かり、遺産分割が決まった後に精算するのが一般的です。

Q. アパートを相続したら、入居者との契約はどうなりますか?

前のオーナーとの賃貸借契約が、そのままの条件で相続人に引き継がれます。敷金を返す義務も引き継ぎます。オーナーが変わったことを理由に、一方的に家賃を上げたり契約を作り直したりすることはできません。

Q. アパートは相続税の評価が低くなると聞きました。本当ですか?

本当です。土地は貸家建付地、建物は貸家として評価され、自宅や更地より評価額が下がります。条件を満たせば小規模宅地等の特例で、敷地の200㎡までを50%減額することもできます。ただし、空室が多いと評価額は下がりにくくなります。

Q. 古いアパートを建て替えたいのですが、入居者に退去してもらえますか?

入居者の合意があれば退去してもらえますが、合意が得られない場合にオーナーから契約を終わらせるには、借地借家法の正当事由が必要です。建物の老朽化だけでは認められにくく、立退料の支払いが求められるのが一般的で、時間もかかります。

Q. 入居者がいるまま、古いアパートを売ることはできますか?

できます。賃貸借契約を引き継いで売るオーナーチェンジのほか、当社のように、明け渡しが必要な物件も入居者がいる状態のまま買い取り、取得後に新しい貸主として明け渡しの交渉を行う買取会社もあります。

Q. マーキュリーはどのエリアに対応していますか?

東京都内を中心に、首都圏で開発を行っています。

まとめ

築古アパート相続の重要ポイント
築古アパート相続の重要ポイント

アパートを相続したら、入居者・管理会社への連絡と家賃の管理から始め、遺産分割、準確定申告、青色申告の届出、相続税の申告、相続登記と、期限のある手続きを順に進めましょう。築年数の古いアパートでは、修繕費を見積もって収支を確認し、耐震性や入居者との契約内容もチェックすることが大切です。入居者との契約は勝手に変えられず、立ち退きにも時間と費用がかかります。
経営を続けるのが難しい場合は、入居者がいるまま売るという選択肢もあります。株式会社マーキュリーは、入居者付きのアパートや明け渡しが必要な物件も現況のまま買い取り、戸建て、アパート、マンション、賃貸併用住宅、既存建物のリフォームなど、さまざまな事業の中から最も活かせる方法を考えてご提案します。アパートを相続した方、相続する予定の方は、ぜひ一度ご相談ください。

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