相続のルールはどう変わった?相続法改正と不動産相続で押さえたい最新ルール

所有権借地権手数料配偶者相続登記相続税遺言管理遺産分割固定資産税遺留分

最終更新日:2026/10/28

不動産 イメージ

相続のルールは、この数年で大きく変わりました。2018年に約40年ぶりとなる相続法の大改正があり、2019年から2020年にかけて段階的に施行されています。さらに2021年には、所有者がわからない土地の問題を解消するための民法・不動産登記法の改正があり、2024年からは相続登記が義務になりました。
「親の家を相続したけれど、昔聞いたルールのままでいいのだろうか」。そんな方に向けて、この記事では相続法の主な改正点を、不動産に関わるものを中心にまとめました。

改正相続法

2018年(平成30年)7月に成立した改正相続法は、一度にすべてが始まったわけではなく、内容ごとに施行日が分かれています。

施行日主な改正内容
2019年1月13日自筆証書遺言の方式の緩和(財産目録はパソコン作成などでもよくなった)
2019年7月1日遺留分制度の見直し、特別の寄与、預貯金の払戻し制度、夫婦間で贈与した自宅の扱いの見直しなど(原則的な施行日)
2020年4月1日配偶者居住権・配偶者短期居住権の創設
2020年7月10日法務局で自筆証書遺言を預かる「自筆証書遺言書保管制度」の開始

ここからは、特に影響の大きい「自筆証書遺言の緩和」と「配偶者居住権」を中心に、それぞれの内容を見ていきます。

自筆証書遺言とは

遺言とは、自分が亡くなったあとに、財産を誰にどう残すのかを書き記しておく文書です。きちんとした遺言があれば、相続人同士が遺産の分け方で揉める、いわゆる「争族」を防ぎやすくなります。
遺言にはいくつか種類がありますが、そのうち本人が自分の手で書くものを「自筆証書遺言」といいます。公証役場で作る公正証書遺言と違って、費用をかけずに一人で作れるのが特徴です。

改正前は、本文、財産目録、日付、氏名のすべてを自分の手で書き、押印しなければなりませんでした。民法には次のように定められています。

民法968条1項

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

e-Gov法令検索|民法

全文を自筆とされていたのは、本当に本人が書いたものかを確かめるためです。遺言が効力を持つのは、書いた本人が亡くなったあとです。そのときにはもう本人に確認できないので、筆跡で本人が書いたことを担保していたわけです。

民法985条1項

遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。

とはいえ、すべてを手書きするのは大変です。財産が多いほど、預金口座の番号や不動産の所在地・地番などを一つひとつ書き写すことになり、書き間違いも起こりやすくなります。面倒で書かないまま亡くなってしまったり、書いても記載の誤りで遺言どおりに手続きできなかったりと、さまざまな問題がありました。
こうした背景から、自筆証書遺言の方式が緩和されました。

自筆証書遺言の緩和内容

2019年1月13日以降に書く自筆証書遺言では、財産目録だけは手書きでなくてもよくなりました。

民法968条2項

前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

財産目録として使えるようになったのは、たとえば次のようなものです。

  • ●パソコンで作成した財産目録
  • ●家族など本人以外の人が代筆した財産目録
  • ●預金通帳のコピー
  • ●不動産の登記事項証明書

不動産をいくつも持っている方にとっては、地番や面積を手で書き写す手間がなくなり、書き間違いの心配も減りました。

自筆証書遺言の緩和の注意点

手書きでなくてよいのは、財産目録だけです。「誰に何を相続させるか」という本文や日付、氏名は、これまでどおり自分の手で書かなければなりません。

また、財産目録は本文とは別の紙にして、遺言書に添付する形にする必要があります。手書きの本文と同じ用紙に、パソコンで印字した目録や通帳のコピーを貼り付けることは認められていません。

手書きでない財産目録には、すべてのページに署名と押印が必要です。目録が3枚あれば3枚とも、両面に印刷した場合は表と裏の両方に署名・押印します。これは、誰かが後から目録をすり替えるのを防ぐためです。
形式を一つでも誤ると、遺言そのものが無効になるおそれがあります。不安があれば、専門家に確認してもらうか、公正証書遺言を検討するとよいでしょう。

法務局で遺言書を預かってもらえる「自筆証書遺言書保管制度」

自筆証書遺言には、「自宅で保管していたら紛失した」「誰かに書き換えられたり捨てられたりするおそれがある」「亡くなったあと見つけてもらえない」といった弱点がありました。
そこで2020年7月10日から、法務局で自筆証書遺言の原本を預かってもらえる制度が始まりました。保管の申請手数料は1件3,900円です。法務局で形式のチェックも受けられるうえ、この制度を使った遺言書は、亡くなったあとに家庭裁判所で行う「検認」の手続きが不要になります。

法務省|自筆証書遺言書保管制度

無料相談無料査定

不動産のお悩み、まずはお気軽にご相談ください

お電話なら、その場で状況に合わせたご相談が可能です

☎ 0120-127-444

受付 平日9:30-20:00
査定対応エリア:東京23区

「配偶者居住権」「配偶者短期居住権」とは

平均寿命が延び、夫婦の一方が亡くなったあと、残された配偶者が長い期間を一人で暮らすケースが増えています。
ところが、これまでの相続では、残された配偶者が住み慣れた自宅を相続すると、自宅の評価額が大きいぶん、預貯金などほかの財産をほとんど受け取れない、ということが起こりがちでした。家はあっても生活費が足りない、という状況です。

そこで2020年4月1日に始まったのが「配偶者居住権」です。自宅の権利を「住む権利(配偶者居住権)」と「それ以外の所有権」に分け、配偶者は住む権利だけを受け継ぐことができます。住む権利は所有権より評価額が低くなるため、そのぶん預貯金なども多く受け取れるようになります。
配偶者居住権があれば、家の所有者に家賃を払わずに住み続けられます。期間は原則として配偶者が亡くなるまでですが、遺産分割や遺言で期間を決めることもできます。

一方、「配偶者短期居住権」は、亡くなった人の家に無償で住んでいた配偶者が、一定期間はそのまま住み続けられるようにする権利です。手続きをしなくても、相続が始まった時点で自動的に認められます。住み続けられる期間は次の通りです。

  • ●配偶者も遺産分割に加わる場合:遺産分割で家を誰が受け継ぐか決まった日、または相続開始から6か月を過ぎた日の、いずれか遅い日まで
  • ●遺言で家が第三者に渡った場合や、配偶者が相続放棄をした場合:家を取得した人から「短期居住権を終わらせたい」と申し入れを受けた日から6か月を過ぎるまで

つまり、夫や妻が亡くなってすぐに家を追い出される心配はなく、少なくとも数か月は次の住まいを考える時間が確保されるということです。

シニア女性 イメージ

配偶者居住権の注意点

配偶者居住権は、遺産分割協議で配偶者が取得するほか、遺言(遺贈)によって配偶者に与えることもできます。いずれの場合も、亡くなった人が亡くなった時点で、配偶者がその家に住んでいたことが条件です。また、その家を亡くなった人が配偶者以外の第三者と共有していた場合は、配偶者居住権を設定できません。

配偶者居住権は、登記をしておかないと、家が第三者に売られたときなどにその人に対して権利を主張できません。家の所有者には登記に協力する義務があるので、配偶者居住権を取得したら、早めに設定登記をしておきましょう。

そのほか、次のような点にも注意が必要です。

  • ●配偶者居住権は、ほかの人に売ったり譲ったりすることはできない
  • ●家の所有者の承諾なしに、増改築したり人に貸したりすることはできない
  • ●配偶者居住権がついた家は、所有者が自由に使えないため、売却しにくくなる

なお、2020年4月1日より前に書かれた遺言では、配偶者居住権を遺贈することはできません。それ以前に遺言を書いている方は、内容を見直しておくと安心です。
配偶者居住権がついた家の固定資産税を誰が負担するかについては、配偶者居住権の固定資産税は誰が払う?所有者・配偶者の負担をわかりやすく解説で詳しく紹介しています。

法務省|残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます

無料相談無料査定

不動産のお悩み、まずはお気軽にご相談ください

お電話なら、その場で状況に合わせたご相談が可能です

☎ 0120-127-444

受付 平日9:30-20:00
査定対応エリア:東京23区

そのほかの主な改正点(2019年7月施行)

2019年7月1日には、遺言や遺産分割に関わる改正がまとめて施行されました。不動産の相続に関係の深いものを紹介します。

遺留分はお金で請求するものに

遺留分とは、配偶者や子どもなど、兄弟姉妹以外の相続人に法律で保障された最低限の取り分です。改正前は、遺留分を請求すると、不動産などがそのまま共有状態になることがありました。改正後は「遺留分侵害額請求」として、不足分を金銭で請求する仕組みに変わりました。不動産が共有になって身動きが取れなくなる事態を避けやすくなった一方、請求された側はお金を用意しなければなりません。

長年連れ添った夫婦間で贈与した自宅は、遺産の計算から外れやすく

結婚して20年以上の夫婦の間で自宅(居住用の土地・建物)を贈与したり遺贈したりした場合、原則としてその自宅は遺産分割の計算に含めなくてよくなりました。配偶者が自宅を受け取ったうえで、残りの財産からも取り分を確保しやすくなっています。

遺産分割前でも預貯金を引き出しやすく

以前は、遺産分割がまとまるまで、亡くなった人の預金は原則として引き出せませんでした。改正後は、葬儀費用や当面の生活費などのために、各相続人が一定額まで単独で払い戻しを受けられるようになりました(1つの金融機関につき150万円が上限)。

介護などに尽くした親族が金銭を請求できる「特別の寄与」

たとえば、長男の妻が義理の親を長年介護していても、相続人ではないため遺産を受け取ることはできませんでした。改正後は、相続人ではない親族でも、無償で介護などに尽くした場合には、相続人に対して金銭(特別寄与料)を請求できるようになりました。

2021年改正で変わった不動産相続のルール

相続法の改正とは別に、2021年には所有者がわからない土地を減らすための民法・不動産登記法の改正がありました。相続した不動産を持っている方に直接関わるルールが多いので、あわせて確認しておきましょう。

施行日主な内容
2023年4月1日相続開始から10年を過ぎると、遺産分割で特別受益や寄与分を主張できなくなる(原則として法定相続分で分ける)
相続放棄をした人の財産管理のルールの見直し
2023年4月27日相続した土地を国に引き取ってもらえる「相続土地国庫帰属制度」の開始
2024年4月1日相続登記の義務化(相続を知った日から3年以内。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料)
2026年4月1日住所や氏名が変わったときの変更登記の義務化(変更から2年以内。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料)

特に注意したいのが相続登記の義務化です。2024年4月より前に相続した不動産も対象で、2027年3月31日までに登記を済ませる必要があります。親の名義のままになっている家や土地があれば、早めに手続きしましょう。登記をしないまま売却を考えている方は、相続登記が未了の不動産は売却できる?義務化後の手続きと進め方を解説をご覧ください。

いらない不動産を相続したときの選択肢(売却・相続放棄・国庫帰属など)は、不動産を手放す方法を徹底解説|売却・買取・相続放棄・国庫帰属の選び方で、相続放棄を考えるときの注意点は不要な不動産は相続放棄前に買取の査定依頼を!で紹介しています。

また、税金の面では、2024年1月以降の生前贈与について、相続税の計算に足し戻す期間が3年から7年へと段階的に延びています。生前の対策を考えている方は、不動産で生前にできる相続税対策7選や生前贈与を非課税にする方法もあわせてご覧ください。

無料相談無料査定

不動産のお悩み、まずはお気軽にご相談ください

お電話なら、その場で状況に合わせたご相談が可能です

☎ 0120-127-444

受付 平日9:30-20:00
査定対応エリア:東京23区

相続法の改正についてよくある質問

相続法の改正について、よくいただくご質問をまとめました。

自筆証書遺言は、全部パソコンで作ってもよいですか

いいえ。パソコンで作ってよいのは財産目録だけです。本文、日付、氏名は自分の手で書き、押印する必要があります。パソコンで作った財産目録には、すべてのページに署名と押印が必要です。

改正前に書いた自筆証書遺言は無効になりますか

無効にはなりません。改正前の方式で正しく書かれていれば、そのまま有効です。ただし、2020年4月1日より前に書かれた遺言では、配偶者居住権を遺贈することはできません。

配偶者居住権があれば、家の所有者が変わっても住み続けられますか

登記をしていれば住み続けられます。配偶者居住権は、登記をしておかないと、家を買った第三者などに権利を主張できません。取得したら、早めに設定登記をしておきましょう。

配偶者居住権のついた家は売却できますか

所有権そのものを売ることはできますが、買った人も配偶者が住み続けるのを認めなければならないため、買い手は限られます。配偶者居住権そのものを売ったり譲ったりすることはできません。

相続登記の義務化は、昔に相続した不動産にも関係ありますか

関係あります。2024年4月1日より前に相続した不動産も対象で、2027年3月31日までに相続登記をする必要があります。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります。

遺産分割をしないまま10年が過ぎるとどうなりますか

2023年4月の改正により、相続開始から10年を過ぎると、原則として生前贈与などの特別受益や、介護などの寄与分を主張できなくなります。遺産は基本的に法定相続分で分けることになるため、早めに遺産分割を済ませることが大切です。

まとめ

相続のルールは、2018年の相続法改正と2021年の民法・不動産登記法改正で大きく変わりました。自筆証書遺言は書きやすく、預けやすくなり、残された配偶者は住まいを確保しやすくなりました。一方で、相続登記は義務になり、相続した不動産を放置しておくことは難しくなっています。
親から受け継いだ家や土地をどうするか決めかねている方、相続登記が済んでいない不動産をお持ちの方は、マーキュリーにご相談ください。借地権や底地、共有持分など、権利関係が複雑な不動産の買取にも対応しています。

無料相談無料査定

不動産のお悩み、まずはお気軽にご相談ください

お電話なら、その場で状況に合わせたご相談が可能です

☎ 0120-127-444

受付 平日9:30-20:00
査定対応エリア:東京23区

「不動産相続」に関連する項目

相続について

相続した不動産の売却

相続税について

相続の法律