「元気なうちに子どもへ財産を渡しておきたい」「実家の土地を生前に名義変更したほうがよいのか迷っている」。生前贈与を考え始めると、どこまでなら税金がかからないのかが一番の気がかりになります。
生前贈与には、贈与税がかからない基礎控除のほか、住宅の購入資金や夫婦間の自宅の贈与を対象にした特例があります。ただ、制度ごとに対象者や上限、申告の要否が異なり、使い方を誤ると思わぬ課税につながることもあります。
この記事では、生前贈与を非課税で行うための主な制度を一覧で整理し、それぞれの要件と注意点、相続前の贈与の加算ルール、不動産を贈与するときに見落としやすい費用まで順に解説します。
不動産のまま渡すか、売却して現金で分けるかの考え方も紹介します。税額は個別の事情で変わるため、税理士や税務署へご確認ください。
生前贈与の基本と非課税になる主な制度一覧
生前贈与とは、生きているうちに自分の財産を家族などに無償で渡すことです。個人から財産をもらった人には、原則として贈与税がかかります。贈与税の計算方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、どちらを使うかで非課税になる枠の考え方が変わります。
暦年課税は1年間にもらった財産の合計から基礎控除を差し引く方法、相続時精算課税は一定の親子間などで選べ、相続時に贈与財産を含めて相続税を計算し直す方法です。
さらに、住宅の取得資金や夫婦間の自宅の贈与には特例があります。主な制度は次のとおりです。
| 制度 | 非課税・控除の枠 | 主な対象 | 申告 |
|---|---|---|---|
| 暦年課税の基礎控除 | 年110万円 | 誰から誰への贈与でも可 | 110万円以下なら不要 |
| 相続時精算課税 | 年110万円の基礎控除+特別控除2,500万円 | 原則60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫 | 届出書と申告が必要 |
| 住宅取得等資金の非課税 | 省エネ等住宅は1,000万円、それ以外は500万円 | 直系尊属から18歳以上の子・孫など | 必要 |
| 夫婦間の居住用不動産の配偶者控除 | 基礎控除110万円のほかに最高2,000万円 | 婚姻期間20年以上の夫婦 | 必要 |
「非課税」でも申告が必要な制度が多い点に注意しましょう。税金がゼロになる場合でも、期限内の手続きが欠かせません。
申告と納税の期限
贈与税の申告と納税は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに行います。たとえば、2026年中に贈与を受けた場合は、2027年2月1日から3月15日までが期限です。申告するのは、財産をもらった側である受贈者です。
暦年課税の基礎控除110万円|仕組みと注意点
もっとも身近な非課税枠が、暦年課税の基礎控除110万円です。1年間にもらった財産の合計が110万円以下であれば贈与税はかからず、申告も必要ありません。
たとえば、父が長男と長女にそれぞれ年100万円ずつ現金を渡す場合、各自の受け取り額は110万円以下なので、通常は贈与税がかからないと考えられます。一方、父と母の両方から同じ年に長男が100万円ずつ受け取ると、長男の受け取り合計は200万円となり、基礎控除を超えた分が課税対象になります。
110万円を超えた部分の税率には一般税率と、直系尊属から18歳以上の人への贈与に使う特例税率があり、最高税率はどちらも55%です。
注意したいのは、贈与の事実を記録に残すことです。親が子の名義で入金していても、子が通帳を管理していなければ贈与とみなされない可能性があります。贈与契約書を作り、受け取る側の口座に振り込んでおくと安心です。
相続時精算課税|2,500万円の特別控除と注意点
まとまった財産を一度に渡したい場合に検討されるのが、相続時精算課税です。原則として60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫への贈与で選べます。
この制度では、年110万円の基礎控除(令和6年1月1日以後の贈与から)と、累計2,500万円の特別控除を差し引いた残りに一律20%の税率がかかります。申告の要否や手続きは贈与の内容によって異なるため、事前に税務署で確認しておくと安心です。
贈与した財産は、贈与した人が亡くなったときに相続財産へ加算して相続税を計算します。そのため、相続税そのものを減らす制度というより、財産を早めに移すための制度と考えたほうがよいでしょう。
注意点は、一度選ぶと暦年課税に戻せないことです。選ぶ場合は、最初の贈与を受けた年の翌年3月15日までに届出書を提出します。
たとえば、父から子へ自宅の土地を渡すケースでは、特別控除の範囲なら贈与時の税負担を抑えられる場合があります。有利・不利は相続財産の総額で変わるため、税理士に試算を依頼してから判断しましょう。
住宅取得等資金の非課税と夫婦間の配偶者控除
住まいに関する贈与には、2つの特例があります。子や孫の住宅購入を援助したい場合と、長年連れ添った配偶者に自宅を渡したい場合です。どちらも要件がこまかく定められているため、事前の確認が欠かせません。
住宅取得等資金の贈与の非課税
父母や祖父母などの直系尊属から、住宅の新築や購入、増改築のための資金をもらった場合に使える特例です。令和6年1月1日から令和8年12月31日までの贈与が対象で、省エネ等住宅は1,000万円まで、それ以外の住宅は500万円まで非課税になります。
受贈者は18歳以上で、合計所得金額が2,000万円以下などの要件があります。また、贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得し、申告をする必要があります。たとえば、東京都内でマンションを購入する子に親が頭金を援助するといった場面で活用が考えられます。
夫婦間の居住用不動産の贈与の配偶者控除
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用の不動産や、その購入資金を贈与した場合に使える特例です。基礎控除110万円のほかに、最高2,000万円まで控除できます。
同じ配偶者からは一生に一度しか使えず、税額がゼロでも申告が必要です。夫名義の自宅の持分を妻に移すケースなどで検討されますが、相続全体への影響は専門家に確認しましょう。
相続前の贈与の加算|3年から7年への延長
生前贈与を考えるうえで見落とせないのが、相続開始前の贈与の加算です。暦年課税で贈与した財産のうち、一定期間内のものは相続財産に足し戻して相続税を計算します。亡くなる直前の贈与では、相続税の対策としての効果が小さくなる場合があるということです。
この加算期間は、令和6年1月1日以後の暦年課税の贈与から、相続開始前7年以内に延びました。移行は段階的で、相続開始の時期によって加算される期間が変わります。
| 相続開始の時期 | 加算の対象になる期間 |
|---|---|
| 令和8年12月31日まで | 相続開始前3年以内 |
| 令和9年1月1日〜令和12年12月31日 | 令和6年1月1日以後の贈与が段階的に対象 |
| 令和13年1月1日以後 | 相続開始前7年以内 |
延長された4年分については、贈与額の総額100万円までは加算しないとされています。表の中段の期間は、相続開始の日によって対象になる範囲が異なるため、具体的な年数は税務署や税理士に確認してください。
たとえば、毎年110万円ずつ贈与していても、加算期間内の分は相続税の計算に戻る可能性があります。贈与を始める時期も含めて計画を立てることが大切です。
不動産を贈与するときに見落としやすい費用と手続き
現金ではなく土地や建物を贈与する場合は、贈与税以外にも費用がかかります。特に見落とされやすいのが、名義を変えるための所有権移転登記にかかる登録免許税です。
登録免許税は、不動産の価額に税率をかけて計算します。課税標準となる価額は、原則として固定資産課税台帳に登録された価格です。贈与による移転は、土地・建物ともに1,000分の20で、売買のような軽減税率はありません。
| 登記の原因 | 土地 | 建物 |
|---|---|---|
| 贈与 | 1,000分の20(軽減なし) | 1,000分の20 |
| 売買 | 1,000分の20(令和11年3月31日までは1,000分の15) | 1,000分の20 |
| 相続 | 1,000分の4 | 1,000分の4 |
贈与で渡すと、相続で引き継ぐより登録免許税の税率が高くなります。登記を司法書士に依頼する場合は報酬もかかりますが、金額は司法書士ごとに異なります。このほか、不動産取得税がかかる場合もあるため、都税事務所などで確認しておくと安心です。
登記の申請は、不動産の所在地を管轄する法務局に、書面またはオンラインで行います。東京23区の物件なら、固定資産の価格は納税通知書に同封の課税明細書で確認できるのが一般的です。
不動産のまま贈与するか、売却して現金で渡すか
親から子へ不動産を渡す方法は、名義を変えるだけではありません。売却して現金で分ける選択肢もあり、どちらが適しているかは、受け取る側がその不動産を使うかどうかで変わります。
子がその家に住むなら、不動産のまま渡す意味は大きいでしょう。住む予定がなければ、固定資産税や管理の負担だけが子に移ります。
特に注意したいのが、複数の子に1つの不動産を持分で分けて贈与するケースです。共有名義になると、売却や建て替えには共有者全員の同意が必要になり、意見が合わないと身動きが取れなくなります。
たとえば、東京都内の実家の土地を兄弟2人に半分ずつ贈与した結果、兄は保有、弟は現金化を望み、活用が止まってしまう例があります。分け方で揉めないよう、贈与の前に方針を決めておくことが大切です。
| 渡し方 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 不動産のまま贈与 | 受け取る人が住む・使う予定がある | 登録免許税などの費用、共有になると処分しにくい |
| 売却して現金で渡す | 住む予定がない、複数人で公平に分けたい | 売却時の譲渡所得税、現金の贈与税の確認 |
不動産を売って現金で分ける場合、不動産会社に直接買い取ってもらう方法もあります。買取では訪問査定の提示額がそのまま買取価格となり、手取り額になります。仲介手数料はかからず、現況のまま引き渡せるのが一般的です。売却益には譲渡所得の税金がかかる場合があるため、あわせて確認しておきましょう。
生前贈与の非課税に関するよくある質問
生前贈与を検討している方からよく寄せられる質問にお答えします。個別の税額は状況で変わるため、迷うときは税務署や税理士にご相談ください。
年110万円以下の贈与なら申告は不要ですか
暦年課税で、1年間にもらった財産の合計が110万円以下であれば、贈与税はかからず申告も不要です。ただし、住宅取得等資金の非課税や配偶者控除などの特例を使う場合は、税額がゼロでも申告が必要になります。
毎年110万円ずつ贈与すれば問題ありませんか
基礎控除の範囲内なら贈与税はかかりませんが、相続開始前の一定期間内の贈与は相続財産に加算されます。契約書や振込の記録も残しておきましょう。
相続時精算課税を選んだあとに暦年課税へ戻せますか
戻すことはできません。一度選ぶと、その贈与者からの贈与には継続して適用されます。将来の相続まで見通して判断しましょう。
親の家を子に渡すなら、贈与と売却のどちらがよいですか
子が住むなら贈与、住む予定がなく複数人で分けたいなら売却して現金で分ける方法が考えやすいでしょう。税金や登記費用も含めて判断するのがおすすめです。
マーキュリーが選ばれる4つの理由|あらゆる不動産を価値ある未来へ
生前贈与や相続を見据えた不動産の整理では、権利関係や物件の状態まで含めた判断が求められます。マーキュリーが多くの方に選ばれている理由をご紹介します。
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相続税の納税資金の確保、遺産分割、共有名義の整理など、単なる売却にとどまらないサポートが可能です。税理士や司法書士との連携により、税務・登記・売却を一括で進められます。
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自社で直接買い取るため、仲介手数料がかかりません。査定額がそのまま買取金額として確定するため、資金計画が立てやすくなります。契約不適合責任も原則免責のため、引渡し後の心配がありません。
まとめ|マーキュリーへご相談ください
生前贈与を非課税で行うには、制度ごとの枠と要件を正しく押さえ、必要な申告を期限内に済ませることが大切です。不動産を渡す場合は、贈与税だけでなく登記の費用や、受け取った後の管理まで考えておきましょう。
- ●暦年課税の基礎控除は年110万円。110万円以下なら申告も不要
- ●相続時精算課税は特別控除2,500万円。一度選ぶと暦年課税に戻せない
- ●住宅取得等資金の非課税、夫婦間の配偶者控除は、税額がゼロでも申告が必要
- ●暦年課税の贈与の加算期間は、相続開始前3年から7年へ段階的に延びる
- ●不動産の贈与による登記は登録免許税が1,000分の20で、軽減税率はない
- ●住む予定のない不動産は、売却して現金で分ける方法も検討する
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