「所有しているアパートを手放したいが、入居者がいる状態でも売れるのだろうか」。オーナー業を続けるなかで、修繕費の増加や空室の長期化に直面し、出口を考え始める方は少なくありません。
結論から申し上げると、アパートは入居者が住んだままの状態でも売却できます。ただし、自宅の売却とは価格の決まり方がまったく異なり、建物と土地の価値だけでなく「その物件がどれだけ家賃を生むか」で評価が動きます。
この記事では、アパートの売却が難しいといわれる理由から、手放す方法の選択肢、価格の決まり方と相場の調べ方、売り時の見極め方、かかる税金と費用、入居者がいるまま売る場合の注意点までを順に整理します。
アパートは保有し続けるあいだも修繕費と管理の手間がかかり続ける資産です。判断を先送りするほど選択肢が狭まる場面もあります。まずは仕組みを正しく理解し、納得のいく形で出口を選べるよう準備を進めましょう。
アパートの売却が難しいといわれる理由
一棟アパートの売却は、戸建てやマンション一室の売却と比べて時間がかかりやすいといわれます。それには、収益物件ならではのはっきりした理由があります。
まず、買い手が限られることです。自宅として買う人はおらず、購入するのは基本的に不動産投資を行う個人か法人です。数千万円から億単位の資金を用意でき、なおかつ融資の審査を通過できる相手でなければ成約に至りません。買主の母数がそもそも小さいのです。
次に、融資の条件が絡む点があります。買主は金融機関から借り入れて購入するのが一般的ですが、金融機関は建物の法定耐用年数を融資期間の目安とします。木造アパートの法定耐用年数は22年とされており、これを超えた物件は融資期間が短くなったり、そもそも融資が下りなかったりします。買主が現れても、審査で止まってしまうことがあるのはこのためです。
さらに、入居者の存在が調査を複雑にします。賃貸借契約の内容、家賃の滞納状況、敷金の預かり額、修繕の履歴といった資料をそろえる必要があり、買主はそれらを精査したうえで判断します。書類が不十分だと、その時点で検討を打ち切られることもあります。
たとえば、築30年を超える木造アパートを仲介に出したものの、内見の申し込みは入るのに融資審査で次々と見送りになり、1年以上売り出したままという例があります。物件そのものではなく、買主側の資金調達がボトルネックになる構造です。
アパートを手放す方法の選択肢
手放す方法は一つではありません。物件の状態、入居状況、そして急ぎ具合によって、適した方法が変わります。まずは全体像を押さえましょう。
| 手放す方法 | スピード | 手取りの考え方 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 入居者ごと仲介(オーナーチェンジ) | 数か月〜1年以上 | 売却価格から仲介手数料を差し引く | 稼働率が高く、時間に余裕がある |
| 空室にしてから仲介 | 立ち退き交渉を含め年単位 | 立ち退き費用と手数料を差し引く | 建替え前提の買主を狙える立地 |
| 解体して土地として売却 | 解体後さらに数か月 | 解体費と手数料を差し引く | 建物の傷みが激しく土地需要が強い |
| 直接買取 | 数日〜数週間 | 訪問査定の提示額がそのまま手取り | 早く確実に手放したい・空室や滞納がある |
仲介でオーナーチェンジとして売り出す場合、入居者に知られることなく手続きを進められる点は利点です。一方で、買主の融資が通るまで決済に至らず、契約後に白紙解除となる可能性も残ります。
空室にしてから売る方法は、更地に近い自由度を買主に与えられます。ただし、入居者には借地借家法による強い保護があり、正当な事由がなければ退去を求められません。立ち退き料の負担と交渉期間を見込む必要があります。
解体して土地として売る方法は、建物の価値がほとんど残っていない場合の選択肢です。解体費が先に出ていくうえ、更地にすると住宅用地の特例が外れて固定資産税が上がる点には注意してください。
直接買取であれば、入居者が住んだまま、滞納や空室を抱えたままの状態で引き取れます。融資審査を待つ必要がないため、決済までの期間が読みやすく、訪問査定で提示された金額がそのまま手取りになります。
アパートの価格の決まり方と相場の調べ方
アパートの価格は、自宅の売却とは考え方が違います。押さえておきたいのは、評価の軸が二つあるという点です。
一つは収益還元法です。その物件が1年間に生み出す純収益を、期待される利回りで割り戻して価格を求めます。家賃収入から管理費・修繕費・固定資産税などの経費を引いた金額が計算の元になるため、空室が多い、あるいは家賃を下げている物件ほど評価は下がります。
もう一つは積算法です。土地の評価額と、建物の再調達価格から経過年数分を差し引いた金額を足し合わせて求めます。木造アパートの場合、築22年を超えると建物の評価はほとんど残らず、実質的に土地の価値が価格の中心になります。
相場の見当をつけるには、公的なデータが役に立ちます。全国的な傾向としては、国土交通省の不動産価格指数で住宅総合が145.4という水準にあります(2010年平均を100とした値)。また令和7年地価公示では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続の上昇が確認されています。
個別の土地については、国税庁の路線価図でその道路に面した土地の1㎡あたりの評価額を調べられます。あわせて、不動産情報ライブラリでは実際の成約価格や地価を地図上から確認できます。
たとえば、路線価が1㎡あたり15万円の道路に面した60坪(約198㎡)の土地に建つ木造アパートであれば、土地だけで単純計算約2,970万円が一つの目安になります。ここに稼働状況に応じた収益の評価が加わり、実際の金額が決まっていきます。
出典:国土交通省|不動産価格指数
国土交通省|令和7年地価公示
国税庁|路線価図・評価倍率表
国土交通省|不動産情報ライブラリ
アパートの売り時をどう見極めるか
「もう少し様子を見てから」と考えているうちに、条件が悪くなっていた。アパートの売却では、そうした話をよく耳にします。売り時を左右する要素を整理しておきましょう。
第一に、大規模修繕の前後です。外壁塗装や屋根の葺き替え、給排水管の更新には、まとまった費用がかかります。修繕を実施してから売れば買主の評価は上がりますが、投じた費用がそのまま価格に上乗せされるとは限りません。修繕の見積もりが出た段階が、判断のひとつの区切りになります。
第二に、築年数の節目です。前述のとおり木造アパートの法定耐用年数は22年で、これを超えると買主が組める融資の期間が短くなります。買主の母数が減れば、売却にかかる期間は長くなります。
第三に、金利の動向です。買主のほとんどが融資を使う以上、借入コストの変化は購入判断に直結します。日本銀行は金融システムレポートで金融環境の動向を継続的に公表しており、市場の空気を把握する材料になります。成約の傾向については、REINSが公表する市場動向の統計も参考になります。
たとえば、築20年の時点で売却を検討しながら「あと数年は家賃が入る」と先送りし、築25年を過ぎてから改めて売り出したところ、買主の融資期間が短くなって想定より低い金額しか集まらなかった、という例があります。家賃収入と資産価値の目減りは、天秤にかけて考える必要があります。
出典:日本銀行|金融システムレポート
東日本不動産流通機構(REINS)|不動産市場動向(統計)
アパート売却でかかる税金と費用
売却では手取り額が重要です。価格そのものだけでなく、そこから差し引かれるものを把握しておきましょう。
| 項目 | 内容 | 負担のタイミング |
|---|---|---|
| 譲渡所得税・住民税 | 売却益が出た場合に課税。他の所得と分けて計算する | 売却した翌年の確定申告時 |
| 印紙税 | 売買契約書に貼付する | 契約時 |
| 仲介手数料 | 仲介会社に支払う。直接買取では発生しない | 契約・決済時 |
| 抵当権抹消費用 | ローン残債がある場合の登記手続き | 決済時 |
| 敷金の引き継ぎ | 入居者から預かっている敷金を買主へ承継 | 決済時に精算 |
譲渡所得は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。ここで注意したいのが、アパートの建物部分は毎年の減価償却によって取得費が目減りしている点です。購入時の金額をそのまま取得費として使えるわけではないため、想定より売却益が大きく出ることがあります。
税額は所有期間によっても変わります。所有期間が5年を超えるかどうかで長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれ、適用される税率が異なります。年をまたぐ判断が手取りに影響する場面もあるため、契約前に確認しておくと安心です。
なお、自宅を売ったときの3,000万円の特別控除は、居住用財産が対象です。賃貸に出しているアパートには原則として適用されません。相続したアパートを売る場合には、相続税を納めていれば取得費加算の特例を使える可能性があります。
出典:国税庁|土地や建物を売ったとき(譲渡所得)
国税庁|譲渡所得の計算のしかた(分離課税)
国税庁|相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(取得費加算)
入居者がいるまま売るときの流れと注意点
入居者が住んでいる状態での売却は、特別なことではありません。むしろ収益物件の取引では一般的です。ただし、押さえておくべき手順と注意点があります。
売却の流れは次のとおりです。まず、賃貸借契約書、家賃の入金履歴、修繕履歴、確定申告書などの資料をそろえます。次に、現地の状況を確認したうえで査定を受けます。金額と条件に納得できれば売買契約を結び、決済と同時に所有権を移転します。最後に、入居者へ賃貸人が変わった旨を通知し、家賃の振込先を変更してもらいます。
このとき、賃貸借契約は買主にそのまま引き継がれます。入居者の合意を取り直す必要はなく、退去を求めることもできません。同時に、預かっている敷金の返還義務も買主へ移るため、決済時に相当額を精算するのが通例です。
注意したいのは資料の正確さです。空室を埋めるために一時的に家賃を下げていたり、滞納が続いている部屋があったりする場合、それを伏せたまま進めると引き渡し後に問題となります。実態をそのまま伝えたうえで評価してもらうほうが、結果として手戻りがありません。
また、相場からかけ離れた高い金額を提示する会社には注意が必要です。国民生活センターは、高額な金額を示したあとで値下げを迫る手口について繰り返し注意を呼びかけています。契約を結ぶ前に、宅地建物取引業の免許を受けている事業者かどうかを国土交通省の検索システムで確認しておくと確実です。
不動産の売買契約にクーリング・オフは原則として適用されません。その場での即決を求められても、いったん持ち帰って検討する時間を確保してください。
出典:国民生活センター|不動産売却トラブル注意喚起
国土交通省|建設業・宅建業者等企業情報検索
相続・残債・空室などケース別の考え方
ひとくちにアパートの売却といっても、抱えている事情はさまざまです。代表的なパターンごとに考え方を整理します。
相続したアパートを売りたい場合
まず、登記名義を相続人へ移す必要があります。名義が亡くなった方のままでは、売買契約や決済に進めません。相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務化されており、相続を知った日から3年以内の申請が求められます。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となります。戸籍の収集と遺産分割協議には時間がかかるため、登記の準備と査定は並行して進めるのが現実的です。
空室が目立ち収支が悪化している場合
空室が多いと収益還元法での評価は下がります。ただし、埋めてから売ろうとすると、募集の広告費や原状回復費が先に出ていきます。土地の価値が中心になる築古物件であれば、空室のまま手放したほうが手元に残る金額は変わらないこともあります。まずは現状のまま査定を受け、埋める費用と評価の差を比べて判断してください。
ローンの残債が残っている場合
売却代金で残債を完済できれば、抵当権を抹消して引き渡せます。売却代金が残債に届かない場合は、不足分を自己資金で補うか、金融機関と協議して任意売却を検討することになります。返済が滞る前に相談を始めるほど、選べる手立ては多く残ります。
旧耐震・再建築不可などの条件がある場合
1981年(昭和56年)6月以前の耐震基準で建てられた建物や、接道の条件を満たさず建て替えができない土地は、融資が付きにくく一般の買主が敬遠しがちです。こうした物件こそ、再生や権利調整を前提とする買主に直接引き取ってもらうほうが話が早く進みます。
マーキュリーが選ばれる4つの理由|あらゆる不動産を価値ある未来へ
一棟アパートは、権利関係と収益性が絡み合う不動産です。だからこそ、扱いに慣れた相手を選ぶことが手取りと期間の両方を左右します。
① 権利調整に対応
共有名義、借地権付き、隣地との境界が未確定といった案件でも対応いたします。入居者との賃貸借契約や滞納の整理を含め、権利関係を解きほぐしたうえで買い取ります。
② 再建築不可・訳あり物件の再生
旧耐震の建物、再建築不可の土地、事故のあった部屋を含む物件も対象です。一般の市場で敬遠される条件でも、再生を前提に評価いたします。
③ 相続対策をワンストップで
相続登記が済んでいない、相続人が複数いて話がまとまらないといった状態からご相談いただけます。司法書士や税理士と連携し、登記から売却までを一括して進められます。
④ 直接買取で仲介手数料ゼロ・査定額がそのまま手取り
買主を探すのではなく、当社が直接買い取ります。仲介手数料はかからず、融資審査を待つ必要もありません。訪問査定で提示した金額が、そのまま手取り額になります。
アパート売却に関するよくある質問
アパートの売却について、オーナーの方からよくいただくご質問をまとめました。
入居者に知られずに売却できますか
できます。所有権が移転したあとに、賃貸人が変わった旨と家賃の振込先を通知する流れが一般的です。売却の検討段階で入居者へ知らせる義務はありません。
空室だらけのアパートでも買い取ってもらえますか
対象になります。空室のまま、原状回復をしない状態でご相談いただけます。募集や修繕を済ませてから持ち込む必要はありません。
家賃を滞納している入居者がいますが売れますか
売却は可能です。滞納の状況を含めて評価しますので、そのままお伝えください。滞納分の扱いについても契約時に整理いたします。
築30年を超える木造アパートでも値段が付きますか
土地の価値が価格の中心になります。建物の評価がほとんど残っていない場合でも、立地によっては十分な金額をご提示できます。
相続した物件で登記が済んでいませんが相談できますか
その段階からご相談いただけます。司法書士と連携して登記の手続きを進めながら、並行して売却の準備を整えられます。
まとめ|マーキュリーへご相談ください
アパートの売却は、買い手が投資家に限られ、融資の条件に左右されるという点で、自宅の売却とは進み方が異なります。仕組みを理解したうえで方法を選ぶことが、手取りと期間の両方を守ることにつながります。
- ●買主は融資を使うため、法定耐用年数22年を超えると売却期間が長くなりやすい
- ●価格は収益還元法と積算法の二つの軸で決まり、空室と築年数が評価を左右する
- ●大規模修繕の見積もりが出た時点、築年数の節目が売り時の判断材料になる
- ●建物の減価償却で取得費が目減りしており、想定より売却益が大きく出ることがある
- ●賃貸借契約と敷金の返還義務は買主へ引き継がれる。入居者の合意は不要
入居者が住んだままのアパート、空室や滞納を抱えた物件、相続したばかりで登記が済んでいない一棟物件も、マーキュリーは直接買取で承ります。「まず今いくらになるのか知りたい」という段階でも構いません。査定は無料で、ご相談だけでも歓迎いたします。





