新NISAの開始もあって、株式や投資信託で資産づくりを始める人が増えました。では、不動産投資にはどんなイメージをお持ちでしょうか。
「何千万円もかかりそう」「元手がないから無理」「失敗したら借金だけが残りそう」。そう感じて、ほかの投資より敬遠している方も多いと思います。
この記事では、不動産投資をこれから考える初心者の方に向けて、仕組みや種類、利回りの見方、メリットとリスク、必要な資金、始めるまでの流れを順にお伝えします。不動産の買取や管理に携わる立場から、実際によくある失敗や注意点もあわせて紹介します。

投資とは
投資とは、利益を見込んでお金を投じることです。うまくいけば利益が出ますが、投じたお金より減ってしまう(元本割れ)こともあります。
投資で得られる利益は、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2種類に分けられます。不動産投資も、基本的にこのどちらか、または両方をねらうものです。
投資による収益
●インカムゲイン(Income Gain)
インカムゲインは、資産を持っていることで継続して得られる利益です。株式でいえば配当、不動産投資でいえば家賃収入がこれにあたります。
家賃は株価のように日々上下するものではないため、収入が安定しやすいのが特徴です。一方で、年間の利回りは数%程度のことが多く、一度に大きく儲かるものではありません。毎月コツコツと積み上げていく投資です。
●キャピタルゲイン(Capital Gain)
キャピタルゲインは、資産を売ったときに得られる利益です。簡単にいえば「安く買って高く売る」ことで生まれる利益です。
たとえば2,000万円で買った区分マンションを2,500万円で売れば、500万円がキャピタルゲインになります(税金や手数料は考えない場合)。大きな利益が期待できる一方、値下がりすれば損失も大きくなります。
数年間持って家賃収入を得たあと、タイミングを見て売却益もねらう、というように両方を組み合わせることもできます。ただ、最近は値上がり益をねらうよりも、家賃収入を中心に考える投資が主流です。
利回りの見方(表面利回りと実質利回り)
不動産投資の物件を比べるときに必ず出てくるのが「利回り」です。利回りには、主に次の2種類があります。
- ●表面利回り(グロス利回り)=年間の家賃収入÷物件価格×100
- ●実質利回り(ネット利回り)=(年間の家賃収入-年間の経費)÷(物件価格+購入時の諸費用)×100
たとえば、1,500万円の区分マンションを月7万円で貸す場合、表面利回りは84万円÷1,500万円=5.6%です。ところが、管理費・修繕積立金・固定資産税などで年間24万円かかり、購入時の諸費用が100万円かかったとすると、実質利回りは(84万円-24万円)÷1,600万円=約3.75%まで下がります。
物件広告に載っているのは、たいてい表面利回りです。実際の手残りを考えるには、実質利回りで判断することが大切です。
不動産投資の種類は主に6つ
ひと口に不動産投資といっても、さまざまな種類があります。戸建て、マンション、アパートといった建物の違いに加え、新築か中古か、一棟か一部屋か、土地だけかなど、選択肢は多岐にわたります。
種類によって必要な資金やメリット・デメリットが違うため、自分に合ったものを選ぶことが大切です。ここでは、主な6つの種類を紹介します。
- 一棟マンション、一棟アパート投資
- 区分マンション投資
- 戸建て投資
- 底地投資
- 月極駐車場・コインパーキング
- 不動産投資信託J-REIT(リート)
一棟マンション、一棟アパート投資
マンションやアパートを建物ごと所有し、各部屋の家賃収入を得る方法です。
3〜4部屋の小さなアパートから、何十部屋もある大きなマンションまで規模はさまざまです。土地から新築する方法と、すでに入居者がいる中古物件を買う方法があり、いずれにしても購入費用は高額になるため、初心者がいきなり始めるにはハードルが高い投資です。
基本的には長く持って運用します。部屋数が多いので、1部屋が空いてもほかの部屋の家賃収入があり、収入がゼロになりにくいのが強みです。
一棟マンション、一棟アパート投資のメリット
- 空室リスクが分散される(家賃収入がゼロになることはほとんどない)
- 家賃収入の総額が大きく、高いリターンが期待できる
- 土地も所有するため、資産価値が残りやすい
一棟マンション、一棟アパート投資のデメリット
- 購入費用が高い
- 建物全体の修繕費や管理費が大きく、手間もかかる
- 価格が高額なため、売りたいときに買い手が見つかりにくいことがある
区分マンション投資
マンションの1部屋だけを所有して貸す投資です。ワンルームマンション投資とも呼ばれますが、ファミリー向けの部屋で行うこともあります。
一棟に比べて購入費用が安く、管理も1部屋分だけなので手軽です。その分、家賃収入は大きくなく、利回りも低めのことが多いため、大きく儲かる投資ではありません。
一棟の建物や戸建てに比べると売りやすく、手放したいときに買い手が見つからないリスクを抑えられます。
区分マンション投資のメリット
- 少ない自己資金でも始めやすい
- 選べる物件が多い
- 売却しやすい
- 建物全体の管理は管理組合が行うため、手間が少ない
区分マンション投資のデメリット
- 空室になると家賃収入がゼロになる
- 利回りや収入が低く、ローン返済や経費で赤字になることもある
- 管理費や修繕積立金が毎月かかり、値上がりすることもある
戸建て投資
一戸建てを貸して家賃収入を得る方法です。
一棟アパートと同じように購入費用がかかるわりに、貸せるのは1世帯だけです。わざわざ土地を買って新築するのは、効率がよいとはいえません。
アパートが建てられない土地を持っている人や、安い中古戸建てを買える人、転勤などで自宅を貸したい人に向いている方法です。
安い中古戸建ての場合は、老朽化による修繕費がかさむリスクがあります。また、借地権付きの戸建てを貸す場合、契約内容によっては地主の承諾が必要になることがあるため、契約書を確認しておきましょう。
戸建て投資のメリット
- ファミリー層が中心で、長く住んでもらいやすい
- アパートが建てられない土地を活用できる
- 一棟アパートやマンションより売却しやすい
戸建て投資のデメリット
- アパートや区分マンションに比べて借り手が少なく、空室期間が長くなりやすい
- 1世帯しか入らないため、空室になると収入がゼロになる
- 区分マンションより修繕などの管理費用がかかる
底地投資
「底地」とは、借地権が設定されている土地のことです。土地を人に貸して、その上に借地人が建物を建てて使います。
地主は地代を受け取れますが、土地を自由に使うことはできません。そのため一般の需要は少なく、底地は更地よりかなり安い価格で取引されるのが一般的です。
収入は毎月の地代のほか、更新料や各種の承諾料といった一時金が入ることもあります。底地の基本は、底地とは?借地権の関係や基礎知識で詳しく紹介しています。
底地投資のメリット
- すでに土地を持っていれば、新たな費用をかけずに始められる
- 建物は借地人のものなので、修繕費などがかからない
- 借地人が住宅を建てていれば、住宅用地の特例で土地の固定資産税が安くなる
底地投資のデメリット
- 地代が低く、利回りが低くなりやすい
- 売却しにくい
- 土地を自分で使えず、簡単には返ってこない
月極駐車場・コインパーキング
土地を駐車場として貸すのも、不動産投資の一つです。
月極駐車場は、利用者と契約して月単位で区画を貸す方法です。利用者が定着すれば収入は安定しますが、空いている区画からは収入が得られません。
コインパーキングは時間単位で貸す方法で、精算機や看板、不正利用を防ぐ設備などが必要です。駅前など利用者が多い場所なら高い収益も期待できますが、毎月の収入は読みにくくなります。運営会社に土地を貸して毎月決まった賃料を受け取る「一括借り上げ」なら、設備費用は運営会社が負担してくれます。
なお、駐車場として土地を貸す契約には借地借家法が適用されないため、借主に強い権利が生じず、比較的返してもらいやすいのも特徴です。
駐車場経営のメリット
- 建物を建てる場合に比べて初期費用が安い
- 管理の手間や費用がほとんどかからない
- 建築を待たずにすぐ始められる
- 建物の老朽化の心配がない
- ほかの活用に切り替えたいときに、土地を戻しやすい
駐車場経営のデメリット
- 収入が比較的少ない
- 立地によって需要が大きく変わり、見極めが難しい
- 住宅用地の特例が使えず、固定資産税・都市計画税が更地並みにかかる
不動産投資信託J-REIT(リート)
J-REITは、多くの投資家から集めたお金で、運用会社がマンションやオフィスビル、商業施設などを買い、その家賃収入や売却益を投資家に分配する仕組みです。証券取引所に上場していて、株式と同じように売買できます。
REITは「Real Estate Investment Trust」の略で、アメリカで生まれた仕組みです。日本の取引所に上場しているものを、頭にJapanのJをつけてJ-REITと呼んでいます。
現物の不動産投資との違い
現物の不動産を買うには、少なくとも数十万〜数百万円の自己資金が必要です。一方、J-REITは1口数万円から買え、J-REITに投資する投資信託なら1万円以下から始められるものもあります。
建物の管理や入居者への対応は運用会社が行うため、自分で手間をかける必要はありません。海外の不動産に投資したい場合は、海外のREITに投資する投資信託を選ぶ方法もあります。
不動産投資信託のメリット
- 少額から始められる
- 管理や修繕、入居者対応は運用会社に任せられる
- 複数の物件に分散して投資できる
- 上場しているので、売りたいときにすぐ現金化しやすい
- 不動産取得税や登記費用がかからない(NISAの対象になるものもある)
不動産投資信託のデメリット
- 株式市場の影響を受けて、価格が大きく上下することがある
- 借入れをしてレバレッジをかけることができず、大きな利益はねらいにくい
- 運用は運用会社任せで、自分で空室対策などはできない
- 投資法人が破綻するリスクがゼロではない
- 不動産そのものが手元に残るわけではない
なお、最近はインターネットで1万円程度から出資でき、運用会社が不動産を運営して分配金を受け取る「不動産クラウドファンディング」という方法もあります。上場していないため途中で換金しにくい、運営会社の倒産リスクがあるといった点には注意が必要です。
オーナーチェンジとは
投資物件を探していると、「オーナーチェンジ物件」という言葉をよく目にします。オーナーチェンジとは、入居者が住んだまま、貸主(オーナー)だけが変わる売買のことです。
入居者の権利は借地借家法で強く守られていて、売るために退去してもらうのは簡単ではありません。そのため、投資用の物件は、入居者がいる状態のまま売られることが多いのです。
すでに入居者がいるので、買ってすぐに家賃収入が入り、利回りや収支の見通しも立てやすいのが特徴です。ただし、オーナーチェンジならではの注意点もあります。
なぜオーナーチェンジ物件が出回るの?
オーナーチェンジ物件で損をしないためには、まず「なぜ売りに出されたのか」を考えることが大切です。
売主に売却の理由を聞ける機会があるかもしれませんが、都合の悪い理由は正直に話してもらえない可能性もあります。よくある売却理由を知っておくと、物件を見極めやすくなります。主な理由は次の6つです。
①オーナー自身の事情で投資をやめたくなった
転勤で遠方に引っ越すことになった、本業が忙しくなり管理が負担になった、といったオーナー側の事情です。物件そのものに問題があるわけではないので、心配はいりません。
②入居者や管理会社とのトラブルがあった
入居者がクレームを繰り返す、管理会社がきちんと対応してくれない、といったトラブルが理由のこともあります。この場合、買ったあとに同じ悩みを抱えることになるため、できれば避けたい物件です。
③値上がりしたので売却益をねらっている
周辺の地価が上がり、買ったときより値上がりしたタイミングで売ろうというケースです。今後も値上がりが続けばよいのですが、ピークで買ってしまうと、その後は値下がりする一方になりかねません。地価の動きや相場を確認して、高値づかみを避けましょう。
④ほかの物件を買うため
区分マンションから一棟アパートに買い替えたいなど、事業を広げるための売却です。これもオーナー側の事情なので、特に問題はありません。
⑤まとまった資金が必要になった
家賃収入だけでまとまったお金をつくるのは難しいため、マイホームの購入資金などが必要になって売るケースもあります。
⑥経営がうまくいっていない
手元に残るお金が少ない、赤字が続いているなど、経営が苦しくて手放すケースです。株式の損切りのように、早く手放したいと考えています。
原因が「高く買いすぎた」「金利の高いローンを組んでいた」といった売主側の事情なら、買い手への影響は小さいでしょう。ただし、家賃が下がり続けている、空室が埋まらないといった物件側の問題なら注意が必要です。
オーナーチェンジのメリット
気をつけるべき点はありますが、よい物件を選べばメリットは大きいです。
①すぐに家賃収入が得られる
すでに入居者がいるため、買ってすぐに家賃が入るのが最大のメリットです。入居者が見つかるまで管理費や修繕積立金だけを払い続ける、という心配がありません。
②入居者募集の手間が省ける
入居者を募集するには、不動産会社への依頼、広告、入居審査、契約と、意外とやることが多くあります。オーナーチェンジなら、これらをすべて省けます。
③家賃が急に下がりにくい
新築のときは高い家賃で貸せても、築年数がたつにつれて家賃を下げざるを得ないのはよくある話です。一方、すでに築年数がたった物件は、築20年が築25年になったからといって家賃が大きく下がることはあまりありません。中古のほうが家賃の見通しを立てやすいのです。
④相場より安く買えることがある
ファミリー向けの区分マンションは、自分で住むために探している人に比べて、投資用に探している人のほうがずっと少数です。そのため、同じ物件でも、入居者がいる状態だと空室の場合より安い価格で売りに出されることがあります。
入居者が数年で退去すれば、空室になってから自分で住むための物件として売ることで、家賃収入に加えて売却益もねらえる可能性があります。
オーナーチェンジのデメリット
オーナーチェンジならではのデメリットも知っておきましょう。
①入居者を選べない
家賃を滞納しがちな人や、近所とトラブルを起こす人がいる可能性もあります。本来なら入居審査で避けられることも、オーナーチェンジでは前のオーナーが選んだ入居者をそのまま引き継ぐしかありません。よほどの契約違反がない限り、退去してもらうこともできません。
②契約内容を変えられない
前のオーナーと入居者が結んだ賃貸借契約は、そのまま引き継がれます。家賃が相場より安い、ペットを自由に飼ってよいといった条件があっても、一方的に変えることはできません。特約が入っていることもあるので、契約書は事前に必ず確認しましょう。
③室内の状態を確認できない
入居者が住んでいるため、室内を見られないことがほとんどです。図面や外観、売主からの聞き取りで判断するしかなく、買ったあとに思わぬ修繕が必要になることもあります。
オーナーチェンジを選ぶときは
オーナーチェンジ物件を選ぶときは、できるだけ多くの情報を集めることが大切です。
家賃の一覧(レントロール)や図面だけでなく、入居者との賃貸借契約書、家賃の入金状況や滞納の有無、修繕の履歴、売主への聞き取り、周辺の賃貸需要や地価の調査など、確認できることはすべて確認しておくと、失敗のリスクを減らせます。
不動産投資のメリット
種類ごとのメリットはここまで紹介してきました。ここでは、不動産投資全体に共通するメリットを見ていきます。
安定した収入が見込める
入居者は一度住み始めると、短期間で引っ越すことはそれほど多くありません。家賃も頻繁に変わるものではないため、収入が急に大きく減ることは起こりにくく、将来の収支を予想しやすいのが特徴です。
管理会社に任せれば、本業を続けながら毎月の家賃収入を得られます。年金を補う収入として考える人もいます。
ローンを使って投資できる
ほかの投資を始めるには、まず自分でお金を貯める必要があります。株式を買うために銀行がお金を貸してくれることは、まずありません。
不動産投資なら、買う物件を担保に金融機関から借入れができます。自己資金が少なくても大きな物件に投資でき、ローンの返済は家賃収入でまかなえます。少ない元手で大きな投資を行うことを「レバレッジ」といいます。
ただし、借りられる額は年収や勤務先、資産などの「属性」と物件の評価によって決まり、借りすぎは失敗のもとになります。
生命保険の代わりになることも
投資用のローンを組むときは、多くの金融機関で団体信用生命保険(団信)への加入が求められます。団信は、ローンの返済中に借りた人が亡くなったり、高度障害の状態になったりしたときに、ローンの残りがゼロになる保険です。
ローンがなくなっても不動産は残るので、家族は家賃収入を受け取り続けることも、売ってまとまったお金にすることもできます。がんと診断されたら残高がゼロになるなど、保障の手厚い団信もあるため、金利だけでなく保障内容も比べて選ぶとよいでしょう。
税金の負担を軽くできることがある
「会社員の方、節税のために不動産投資をしませんか」という営業を受けたことがある方もいるかもしれません。不動産投資で税金が軽くなる理由は、主に次の2つです。
①不動産所得の赤字を給与所得と相殺できる
家賃収入から経費を引いた不動産所得が赤字になった場合、その赤字を給与所得などと差し引きできます(損益通算)。購入した年は、登記費用や不動産取得税などの費用がまとめてかかるため、赤字になりやすく、結果として所得税や住民税が減ることがあります。
ただし、土地を買うための借入れの利息にあたる部分は損益通算できないなど、細かいルールがあります。
②減価償却費を経費にできる
建物は年月とともに価値が下がるため、買った金額を一定の年数(耐用年数)に分けて、毎年少しずつ経費にします。これを減価償却といいます。実際にお金は出ていかないのに経費にできるため、税金を抑える効果があります。なお、土地は減価償却できず、対象になるのは建物部分だけです。
耐用年数は、木造なら22年、鉄筋コンクリート造なら47年などと決まっていて、築年数の古い中古物件ほど短い年数で償却できます。
ただし、「節税になるから」という理由だけで買うのは危険です。節税になるのは、裏を返せば赤字が出ているからです。物件そのものの収益性をきちんと見て判断しましょう。
相続税対策になる
現金で相続すると、その金額がそのまま相続財産の評価額になります。一方、不動産は路線価や固定資産税評価額をもとに評価するため、一般に実際の売買価格より低く評価されます。さらに、人に貸している土地や建物は、自分で使っている場合より評価額が下がります。
たとえば、1億円の現金を相続すると評価額は1億円ですが、1億円で買った賃貸不動産なら、評価額がそれより大きく下がることがあります(評価額の下がり方は物件によって異なります)。
ただし、相続の直前に借入れをして不動産を買うなど、行き過ぎた節税は、税務署から通常の評価方法を否認されることがあります(2022年4月の最高裁判決)。相続対策として考えるなら、税理士に相談しながら進めましょう。不動産で生前にできる相続税対策7選もあわせてご覧ください。
不動産投資のメリット・デメリットをもっと手短に知りたい方は、不動産投資のメリデメとは!初心者向けに簡単に解説もご覧ください。
不動産投資のデメリット(リスク)
メリットがある一方で、不動産投資にはリスクもあります。始める前に、主な5つのリスクを理解しておきましょう。
空室リスク
真っ先に思い浮かぶのが空室のリスクです。満室になっても全員がずっと住み続けてくれるわけではなく、退去と募集、入居を繰り返していくことになります。
入居者の都合による退去のほか、近くに新しい物件が建った、浸水などの災害が起きたといった外的な要因で退去が出ることもあります。
駅に近い物件や需要の多いエリアを選ぶ、ハザードマップで災害リスクを確認する、近隣の建築計画を調べるといった対策が有効です。リフォームや設備の更新で、物件の魅力を高めるのも効果があります。空室対策は、不動産投資で入居者を集める方法で詳しく紹介しています。
管理・修繕・維持の費用と手間
不動産投資は「不労所得」といわれますが、実際には管理や修繕が欠かせません。
エアコンや給湯器、コンロ、インターホンなどの設備は、ふつうに使っていてもいずれ壊れます。こうした設備の修理や交換は、入居者ではなくオーナーが負担します。一棟の物件なら、共用部分の清掃や建物全体のメンテナンスも必要です。
さらに毎年、固定資産税などの税金もかかります。こうした出費をあらかじめ見込んで収支計画を立てておきましょう。部屋数が多いほど、築年数が古いほど、費用はかさみやすくなります。
入居者トラブル(家賃滞納など)
見落としがちなのが、入居者とのトラブルです。ほとんどの人は期日どおりに家賃を払いますが、中には支払いが遅れがちな人や、生活が苦しくなって滞納してしまう人もいます。騒音で近所とトラブルになる、部屋をゴミ屋敷にしてしまうといったケースもあります。
入居審査をしっかり行う、家賃保証会社の利用を必須にするといった方法で、リスクを抑えられます。こうした対応は自分でもできますが手間がかかるため、管理会社に任せるのがおすすめです。
価格の変動
株式や債券と違い、建物は年月とともに古くなります。都市部の一部では新築時より値上がりすることもありますが、一般的には古くなるほど価格は下がります。
建物が古くなったり、周辺の地価が下がったりすると、家賃を下げてほしいと交渉される理由にもなります。需要の多い立地を選ぶこと、きちんと修繕して建物の状態を保つことで、価値の下落をある程度抑えられます。
金利の変動
長く続いた低金利の時代から、日本銀行の利上げをきっかけに、金利は上がり始めています。変動金利でローンを組んでいる場合、金利が上がると毎月の返済額が増え、収支が悪化するおそれがあります。
対策としては、繰り上げ返済で元金を減らしておく、金利が上がりそうなら固定金利に切り替えたり借り換えたりする、といった方法があります。ただし、固定金利はもともと変動金利より高めに設定されているため、慎重な判断が必要です。
なお、金利が上がる局面では、物価も上がっていることが多いものです。インフレのときは不動産の価値や家賃も上がる可能性があるため、金利の上昇が一概に悪いとはいえません。
不動産投資にかかる税金
不動産投資では、買うとき、持っている間、売るときのそれぞれで税金がかかります。収支を計算するときは、税金も忘れずに見込んでおきましょう。
- ●買うとき:不動産取得税、登録免許税(登記の費用)、印紙税(売買契約書)
- ●持っている間:固定資産税・都市計画税、家賃収入にかかる所得税・住民税
- ●売るとき:売却益にかかる所得税・住民税(譲渡所得税)、印紙税
家賃収入がある場合は、毎年確定申告が必要です。青色申告をすると10万円の控除が受けられ、さらに「5棟10室」程度以上の事業的規模で貸していれば最大65万円の控除を受けられるなど、有利な点もあります。早めに税理士に相談しておくと安心です。
売却時の税金は、持っていた期間によって大きく変わります。売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得として約20%、5年以下なら短期譲渡所得として約39%の税率がかかります。詳しくは譲渡所得税とは?不動産を売ったときの計算手順をご覧ください。
不動産投資に必要な資金
いざ不動産投資を始めるとなると、元手はいくらぐらい必要なのでしょうか。何千万円も現金が必要だと思っている方も多いかもしれません。
実際には、物件の種類や本人の属性によって大きく変わります。ここでは、一般的な目安を紹介します。
不動産投資を始める際に必要な元手の目安
必要な自己資金の目安は、一般に物件価格の2〜3割程度といわれます。これは、ローンの頭金と購入時の諸費用を合わせた金額です。年収や勤務先などの属性によっては、頭金が少なくても借りられることがあります。
たとえば5,000万円の物件なら1,000万〜1,500万円が目安ですが、初心者がいきなり5,000万円の物件を買うのは現実的ではないでしょう。800万円の物件なら、160万〜240万円ほどで始められます。自分の資金に合った物件を選ぶことが大切です。
必要な初期費用一覧
物件の価格のほかに、次のような費用がかかります。一般に、物件価格の7〜10%程度を見込んでおくと安心です。
- 仲介手数料(不動産会社の仲介で買う場合)
- 登記費用(登録免許税+司法書士の報酬)
- 不動産取得税(購入の数か月後に請求される)
- 固定資産税・都市計画税の精算金
- 管理費・修繕積立金の精算金(区分マンションの場合)
- 印紙税
- 火災保険料・地震保険料
- ローンの事務手数料・保証料
フルローンは可能?フルローンのメリット・デメリット
フルローンとは、頭金を入れずに物件価格の全額をローンで借りることです。物件価格に加えて諸費用まで借りることは、オーバーローンと呼ばれます。
属性や物件の評価によっては、フルローンを組める場合もあります。ただし、近年は金融機関の審査が厳しくなっており、ある程度の頭金を求められるのが一般的です。
フルローンの主なメリットは、次の2つです。
手元に現金を残せる
不動産投資では、設備の故障など急な出費に備えて、手元に現金を残しておくことが大切です。自己資金に余裕がない場合でも、フルローンを使えば現金を手元に残せます。
自己資金より大きな投資ができる
少ない自己資金でも、より価格の高い物件に投資できるようになります。
一方で、借入額が増える分、金利が高めになったり、返済額が増えて実質的な利回りが下がったりするデメリットがあります。金利と利回りのバランスを見ながら、全額を借りるか、1割でも頭金を入れるかを考えましょう。
なお、フルローンを組めば預金がゼロでも始められる、というわけではありません。売買契約のときには手付金を現金で払う必要があり、諸費用の支払いもいったんは自分で立て替えるのが一般的です。
買取会社の現場から見た「売るときに価格を左右するポイント」
不動産投資の解説は「どう買うか」に偏りがちですが、投資の成否は売るとき(出口)まで含めて決まります。家賃収入で利益が出ていても、最後に安くしか売れなければ、トータルでは損をすることもあるからです。
マーキュリーは、借地権・底地・共有持分などの権利調整で426件、ビルやマンション・戸建ての開発で38件、中古住宅の再生で40件の実績があり、賃借人がいるビルや収益物件の買取も数多く手がけてきました(実績の件数は当社サイト掲載時点のもの)。こうした買取の現場で、実際に価格を左右してきたポイントを紹介します。買う段階からこれらを意識しておくと、出口で困りにくくなります。
①入居者・テナントの数と、契約の中身
入居者がいること自体は、必ずしもマイナスではありません。当社でも、住み替えを機に売却された賃貸併用住宅を、2戸の入居者にそのまま住み続けていただく形で買い取った事例があります(江戸川区平井の事例)。
一方、老朽化したビルを建て替え前提で評価する場合は、テナントに退去してもらうまでの期間と費用が価格に直結します。当社の事例では、15件のテナントとの明け渡しに約6か月(渋谷区神宮前の事例)、21件の店舗との明け渡しに約3年(横浜市中区不老町の事例)かかったケースもあります。建物の一部が別の事業者に転貸されていると、関係者が増えて交渉はさらに複雑になります(横浜市港北区新横浜の事例)。
買うときは、レントロールだけでなく、賃貸借契約書や転貸の有無まで確認しておきましょう。
②土地の権利がすっきりしているか
借地権付きの建物や、底地と借地権が別々の人のものになっている物件は、買い手が限られ、価格が下がりやすくなります。当社では、借地権付きのビルを取得したうえで地主と交渉して底地も取得し、完全な所有権にしてから売却した事例があります(台東区寿の事例)。こうした権利の整理には専門的な交渉と時間が必要で、その手間は買取価格にも反映されます。初心者が投資物件を選ぶなら、まずは土地も建物も所有権の物件から始めるのが無難です。
③接道と私道の承諾
建物の建替えや解体には、前面道路の条件が大きく関わります。前面が私道の場合は、工事のために私道の所有者から通行・掘削の承諾を得る必要があり、当社の事例でも承諾を取得したうえで建替えを進めています(目黒区中目黒の事例)。承諾が得られない物件は建替えが難しくなり、売るときの価格に響きます。私道については、私道に接する土地は売却できる?で詳しく紹介しています。
④敷地の広さと形、建物の構造
敷地が小さすぎると、建て替えても活用の幅が限られ、単独では評価が伸びにくくなります。当社では、単独では規模が足りない土地を、隣地の所有者からも同時に買い取って一体化し、店舗と住居の複合ビルとして活用した事例があります(墨田区錦糸の事例)。
また、長屋のように隣の住戸と建物がつながっている物件は、一部だけを解体するのが難しく、工事のリスクや費用が評価に影響します(港区南麻布の事例)。
⑤次の買い手がローンを組めるか
売るときの価格は、「次に買う人が、その物件でいくら借りられるか」にも左右されます。当社でも、当初は賃貸併用住宅として計画した物件を、住宅ローンの評価条件など市場の反応を見て、全室賃貸型のアパートへと方針を切り替えた事例があります(江戸川区東葛西の事例)。築年数が古すぎる、再建築不可、借地権付きといった物件は、次の買い手がローンを使いにくく、価格が下がりやすい点を覚えておきましょう。
こうした点は、買うときには見落とされがちですが、売るときになって効いてきます。保有している物件の出口に不安がある方は、収益物件の買取|相場・流れ・売却の注意点もあわせてご覧ください。
不動産投資を始めるには
ここまで読んで、不動産投資にはいろいろな種類があり、メリットとリスクの両方があることがわかったと思います。ここからは、何から始めればよいのか、失敗しないためには何に気をつければよいのかを解説します。
不動産投資を始めるまでの流れ
一般的な流れは次の通りです。人によって順番が前後することもあります。
①勉強・情報収集
不動産投資に限らず、よくわかっていないものにお金を出すのは失敗のもとです。まずは本やセミナー、信頼できるWebサイトなどで、不動産投資について学びましょう。
②目標と大まかな戦略を立てる
まずは、何のために不動産投資をするのかをはっきりさせます。毎月の副収入がほしいのか、老後の年金代わりにしたいのか、相続対策なのか。目的によって選ぶ物件は変わります。
そのうえで、区分マンションにするのか一棟アパートにするのか、新築か中古かなど、資金とリターンを考えながら大まかな方針を決めます。この段階では大まかで構いません。「駅徒歩5分以内、築浅、利回り10%以上」といった理想を掲げても、そんな物件がなければ意味がないからです。
③物件を探す・不動産会社を見つける
方針に沿って物件を探します。駅に近い築浅の区分マンションなどは人気が高く、なかなか見つからないこともあります。最初は条件を広めにして探し、少しずつ絞り込んでいくのがおすすめです。
条件に合う物件を探してほしい、検討中の物件について意見がほしいといったご要望があれば、株式会社マーキュリーにもご相談ください。
④購入の申込みをする
気になる物件が見つかったら、現地を見て、問題がなければ購入の申込みをします。入居者がいるオーナーチェンジ物件は、室内を見られないこともあります。
申込みの段階では、まだ購入は確定していません。ほかの人が先に契約することもあります。
⑤ローンの事前審査を受ける
ローンを使う場合、売買契約をしたあとに「融資が下りなかった」となると大変です。契約の前に事前審査を受け、借入れができる見込みを確認しておきます。本審査は、売買契約書が必要になるため、契約後に行います。
⑥売買契約
売買契約を結び、手付金を売主に払います。手付金は物件価格の5〜10%程度が一般的です。
契約のあと、相手が契約の履行に着手する前であれば、買主は手付金を放棄して契約を解除できます。反対に売主から解除する場合は、手付金を返したうえで、同じ額を上乗せして支払います(手付倍返し)。
ローンの本審査に通らなかった場合に、契約を白紙に戻せる「ローン特約」が入っているかも確認しておきましょう。
⑦ローン契約
本審査に通ったら、金融機関とローンの契約(金銭消費貸借契約)を結びます。団体信用生命保険への加入も、このタイミングで行います。
⑧管理会社を決める
賃貸の管理は自分でもできますが、設備の故障などで入居者から急に連絡が来たとき、本業がある人がすぐに対応するのは難しいものです。家賃の回収、建物の清掃、空室が出たときの募集なども含めると、初心者が一人でこなすのは大変です。
管理会社は、管理の内容と費用、担当者とこまめに連絡が取れるかどうかなどを見て、慎重に選びましょう。管理会社に任せられる業務については、不動産管理を任せるなら何をしてもらえる?で紹介しています。
⑨引渡し・残代金の決済
ローンが実行される日に、手付金を引いた残りの代金を払い、物件の引渡しを受けます。この日に、所有権が売主から買主に移ります。固定資産税や管理費・修繕積立金、すでに入っている家賃などは、この日を基準に日割りで精算します。
初心者が失敗しないためのポイント
最初から大きな利益をねらわず、少ない金額からコツコツ始めるのが安全です。実際に運用してみてわかることも多く、続けるうちに物件を見る目も養われます。区分マンションから始めて、慣れてきたら一棟アパートに進む、というのもよい方法です。
そのうえで、次のような点に注意しましょう。
- ●表面利回りだけで判断しない:経費や空室を考えた実質利回りと、ローン返済後に手元に残るお金で判断する
- ●家賃保証(サブリース)の契約内容を確認する:「30年家賃保証」などとうたっていても、家賃は途中で見直されることが多く、オーナーから解約しにくい契約もある
- ●不正な融資の誘いに乗らない:年収や預金の資料を書き換えて審査を通すような提案は、決して受けてはいけない
- ●家族の理解を得ておく:大きな借入れをするため、早めに家族に相談しておく
- ●印象ではなくデータで判断する:周辺の家賃相場や空室率、人口の推移などを自分でも確認する
リスクを抑えて手間なく運用し、物件の価値を守っていくには、信頼できる管理会社に任せることも大切です。
不動産投資についてよくある質問
不動産投資を始める前に、初心者の方からよくいただく質問をまとめました。
不動産投資は初心者でも始められますか
始められます。最初は比較的少ない資金で始められる中古の区分マンションや、少額から投資できるJ-REITなどを選び、少しずつ経験を積むのがおすすめです。物件の管理は管理会社に任せることもできます。
不動産投資を始めるには、いくら必要ですか
ローンを使う場合、自己資金の目安は物件価格の2〜3割程度といわれます。たとえば800万円の中古区分マンションなら、160万〜240万円ほどが目安です。J-REITや不動産クラウドファンディングなら、数万円から投資できるものもあります。
年収がいくらあれば不動産投資ローンを組めますか
金融機関や物件によって異なり、一律の基準はありません。年収だけでなく、勤務先や勤続年数、自己資金、ほかの借入れの有無、物件の評価などを総合的に見て審査されます。まずは金融機関や不動産会社に相談してみましょう。
表面利回りと実質利回りの違いは何ですか
表面利回りは、年間の家賃収入を物件価格で割ったものです。実質利回りは、家賃収入から管理費や税金などの経費を引き、購入時の諸費用も含めた金額で割ったものです。実際の手残りに近いのは実質利回りなので、物件を比べるときは実質利回りで判断しましょう。
「不動産投資はやめとけ」と言われるのはなぜですか
空室や家賃の下落、修繕費、金利上昇などで、思ったほど利益が出ないケースがあるためです。表面利回りだけを見て買ったり、借りすぎたりすると失敗しやすくなります。リスクを理解し、収支を慎重に計算したうえで始めれば、堅実な資産づくりの手段になります。
不動産投資で節税はできますか
不動産所得の赤字を給与所得と相殺したり、減価償却費を経費にしたりすることで、所得税や住民税が軽くなる場合があります。ただし、節税になるのは赤字が出ているからでもあります。節税だけを目的に物件を選ぶのは避けましょう。
家賃収入があると確定申告は必要ですか
原則として必要です。家賃収入から経費を引いた不動産所得がある場合は、毎年確定申告をして所得税を納めます。会社員の場合も、給与以外の所得が年間20万円を超えると確定申告が必要です。
株式会社マーキュリーでは、不動産管理・不動産収益の最大化をお手伝い
株式会社マーキュリーは、不動産の管理や買取に携わってきた経験とノウハウを活かし、オーナー様の不動産収益の最大化をお手伝いしています。
入居者募集や家賃管理、建物のメンテナンスといった日々の管理から、空室対策や収支の改善、将来の売却のご相談まで、オーナー様の大切な資産を守り、育てるパートナーとしてサポートします。
保有している投資用物件の売却を考えている方は、投資用マンションを売却する方法や収益物件の売却タイミングはいつ?もあわせてご覧ください。





