不動産を売却したときにかかる税金として、まず名前が挙がるのが「譲渡所得税」です。しかし、その正体を正確に説明できる方は多くありません。実務では所得税・住民税・復興特別所得税をまとめてこう呼んでいます。
多くの方が誤解されているのが、課税の対象です。売却価格に対して課税されるわけではありません。課税されるのは、売却価格から購入にかかった費用と売却の経費を差し引いた「譲渡所得」だけです。ここがマイナスであれば税金はかかりません。
計算の手順そのものは、順を追えば難しいものではありません。むしろ難しいのは、取得費に何を含められるか、所有期間をいつから数えるか、どの特例が使えるかという判断のほうです。
この記事では、譲渡所得税の仕組みから計算手順、取得費と譲渡費用の範囲、所有期間による区分、使える特例、申告と納付の流れまでを順に整理します。仕組みを知っていれば、売る時期を調整するといった打ち手も取れます。
譲渡所得税とは|不動産を売ったときにかかる税金の正体
譲渡所得税という名前の税金が単体で存在するわけではありません。不動産を売って利益が出たときに課される、複数の税をまとめた呼び方です。
内訳は、譲渡所得に対する所得税、同じく住民税、そして所得税に上乗せされる復興特別所得税の三つです。実務ではこれらを合わせて譲渡所得税と呼びます。
重要なのは、この所得が給与所得などと合算されない点です。給与や事業の所得とは切り離して税額を計算します。これを分離課税といいます。会社員の方が不動産を売って大きな利益を得ても、給与にかかる税率が引き上げられることはありません。
一方で、分離課税であるがゆえの制約もあります。不動産の譲渡で損失が出ても、原則として給与所得などと相殺できません。相殺できるのは、一定の要件を満たすマイホームの売却損などに限られます。
たとえば、投資用の土地を売って損失が出た場合、その損失を給与所得から差し引いて所得税を減らす、という使い方は原則としてできません。この点は誤解されやすいところです。
譲渡所得の計算手順
税額を求めるには、まず譲渡所得を計算します。手順は次の四段階に整理できます。
| 手順 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ① 収入金額を確認 | 売買契約で定めた売却価格 | 固定資産税の精算金も収入に含める |
| ② 取得費を求める | 購入代金や購入時の諸費用。建物は減価償却後の金額 | 契約書がなければ収入金額の5%(概算取得費) |
| ③ 譲渡費用を求める | 売るために直接かかった費用 | 引っ越し代などは含められない |
| ④ 特別控除を差し引く | 3,000万円の特別控除など | 確定申告をして初めて適用される |
譲渡所得は、収入金額から取得費と譲渡費用を差し引き、さらに使える特別控除を引いた金額です。この結果がゼロ以下であれば、譲渡所得税は生じません。
見落とされやすいのが①です。買主から受け取る固定資産税・都市計画税の精算金は、税金の返金ではなく売買代金の一部として扱われます。収入金額に含める必要があります。
②では建物の減価償却が効いてきます。土地の取得費は目減りしませんが、建物は経過年数に応じて取得費が減っていきます。購入時に払った金額をそのまま使えるわけではありません。
たとえば、収入金額4,000万円、取得費2,800万円、譲渡費用200万円であれば、譲渡所得は1,000万円です。ここにマイホームの3,000万円控除が使えるなら、課税される譲渡所得はゼロになります。
取得費・譲渡費用に含められるもの、含められないもの
計算のなかで最も判断に迷うのが、この範囲です。含められる費用を漏らすと、そのぶん譲渡所得が大きくなり、納税額が増えます。
| 区分 | 含められるもの | 含められないもの |
|---|---|---|
| 取得費 | 購入代金、購入時の仲介手数料、登記費用、不動産取得税、印紙税、資本的支出にあたる増改築費 | 修繕のうち維持管理にすぎないもの、火災保険料、購入後の固定資産税 |
| 譲渡費用 | 売却時の仲介手数料、売買契約書の印紙税、測量費、建物の解体費、借家人への立退料 | 引っ越し代、家具の購入費、売却後の生活にかかる費用 |
取得費の判断で鍵になるのが、資本的支出かどうかという線引きです。建物の価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする支出は取得費に加えられます。一方、原状回復にとどまる修繕は含められません。
譲渡費用は「その不動産を売るために直接かかった費用」という基準で判断します。仲介手数料や測量費は該当します。しかし、引っ越し代や新居の準備費用は、売却に直接必要な支出とはいえないため含められません。
購入時の契約書を紛失している場合は、収入金額の5%を概算取得費として使えます。ただし実際の取得費より低くなることがほとんどで、譲渡所得が大きく計算されます。まずは契約書や領収書を探すことが、最も効果の大きい節税策です。
たとえば、購入時の仲介手数料と登記費用を取得費に含め忘れていたケースでは、数十万円分の取得費が計算から抜け落ち、そのぶん納税額が増えていました。領収書の有無が金額を左右します。
長期譲渡所得と短期譲渡所得の区分
譲渡所得の金額が同じでも、その不動産をどれだけの期間持っていたかで税額は変わります。ここは売却時期の判断に直結します。
区分は所有期間で決まります。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得、5年以下であれば短期譲渡所得です。長期のほうが適用される税率は低く、短期は高く設定されています。
注意すべきは起算点です。判定は「売却した年の1月1日時点」で行います。購入から実際に5年が経過していても、その年の1月1日時点で5年を超えていなければ短期として扱われます。引き渡しを年明けまで待つだけで扱いが変わる場面があります。
相続や贈与で取得した不動産については、前の所有者の取得日を引き継いで計算します。親から相続した土地を相続直後に売っても、親が長く持っていたのであれば長期譲渡所得として扱われます。
さらに、マイホームで所有期間が10年を超える場合には軽減税率の特例が用意されています。長期譲渡よりさらに税率が下がり、3,000万円の特別控除と併用できます。
たとえば、2021年4月に購入した土地を2026年7月に売却する場合、購入から5年3か月が経過しています。しかし2026年1月1日時点では4年9か月であり、短期譲渡所得となります。翌年に引き渡していれば長期でした。
譲渡所得税を抑えるために使える特例
譲渡所得が出た場合でも、特例を使えば税負担を大きく減らせることがあります。自分のケースで使えるものを確認しておきましょう。
最も影響が大きいのが、マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除です。自分が住んでいた家やマンションであれば、譲渡所得から3,000万円を差し引けます。多くのケースでは、これだけで課税されない水準まで下がります。ただし賃貸に出していた投資用物件は対象外です。
所有期間が10年を超えるマイホームであれば、軽減税率の特例を重ねて使えます。3,000万円を控除してもなお譲渡所得が残る場合に効いてきます。
相続した不動産を売る場合には、取得費加算の特例があります。相続税を納めていることが前提で、相続開始から3年10か月以内の売却という期限が定められています。適用できれば納めた相続税の一部を取得費に加算でき、譲渡所得を圧縮できます。
売却損が出た場合には、譲渡損失の損益通算および繰越控除という仕組みがあります。一定要件を満たすマイホームであれば、他の所得と相殺し、控除しきれない分を翌年以降に繰り越せます。
いずれの特例も、確定申告をして初めて適用されます。控除の結果として納税額がゼロになる場合でも、申告そのものは必要です。申告を忘れると特例が使えず、本来不要だったはずの納税が生じます。
出典:国税庁|マイホームを売ったときの特例(3,000万円控除)
国税庁|相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(取得費加算)
申告と納付の流れ|所得税・住民税・復興特別所得税
譲渡所得税は、売却した年にその場で納めるものではありません。申告と納付の時期を押さえておきましょう。
申告するのは、売却した翌年の確定申告期間です。譲渡所得の内訳書を作成し、確定申告書とあわせて税務署へ提出します。所得税と復興特別所得税は、この申告にもとづいて同じ期間内に納付します。
住民税は時期が異なります。確定申告の内容が自治体へ通知され、売却した翌年度の住民税として課されます。給与から天引きされるか、納付書で分割して納めるかを選べるのが一般的です。所得税を納めたあとに住民税の請求が来るため、資金を残しておく必要があります。
必要になる主な書類は、購入時と売却時それぞれの売買契約書の写し、仲介手数料などの領収書、登記事項証明書、本人確認書類です。3,000万円控除を使う場合は、居住していたことを示す書類も求められます。
譲渡所得がマイナスで、特例も使わないのであれば申告は不要です。ただし繰越控除を使うのであれば申告が必要になります。
たとえば、所得税を納めたあとで住民税の通知が届き、想定していなかった支出になったという例は少なくありません。売却代金の一部は納税用に確保しておくのが安全です。
出典:国税庁|譲渡所得の計算のしかた(分離課税)
国税庁|土地や建物を売ったとき(譲渡所得)
相続・共有名義・投資用などケース別の考え方
状況によって、判断すべき点も使える特例も変わります。代表的なパターンを整理します。
相続した不動産を売る場合
まず登記名義を相続人へ移す必要があります。相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務化され、相続を知った日から3年以内の申請が求められます。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。所有期間は亡くなった方の取得日を引き継ぐため、相続直後でも長期譲渡になることがあります。
共有名義の不動産を売る場合
譲渡所得は持分に応じて各共有者に配分され、それぞれが自分の分を申告します。3,000万円の特別控除も、要件を満たす共有者ごとに適用されます。全員がまとめて一件として申告するわけではありません。
投資用不動産を売る場合
3,000万円の特別控除は使えません。加えて、賃貸期間中に計上してきた減価償却費の分だけ取得費が目減りしているため、譲渡所得が大きく出やすい構造です。売却前に納税額の見込みを立てておくことが欠かせません。
取得費がまったくわからない場合
概算取得費として収入金額の5%を使うことになります。ただし、購入した不動産会社や借入をした金融機関に契約書の写しが残っていることがあります。通帳の記録や住宅ローンの返済予定表が手がかりになる場合もあるため、あきらめる前に確認してみてください。
マーキュリーが選ばれる4つの理由|あらゆる不動産を価値ある未来へ
税額の見込みが立たないまま売却を進めると、あとから資金が足りなくなることがあります。事情ごと引き受けられる相手を選ぶことが、結果として手取りを守ります。
① 権利調整に対応
共有名義、相続人が複数いる、借地権が絡むといった状態でもご相談いただけます。権利関係を整理したうえで買い取ります。
② 再建築不可・訳あり物件の再生
旧耐震の建物、再建築不可の土地、事故のあった物件も対象です。一般の市場で敬遠される条件でも、再生を前提に評価いたします。
③ 相続対策をワンストップで
相続登記が済んでいない、相続人の間で話がまとまらないといった段階からご相談いただけます。司法書士や税理士と連携し、登記から売却までを一括して進められます。
④ 直接買取で仲介手数料ゼロ・査定額がそのまま手取り
買主を探すのではなく、当社が直接買い取ります。仲介手数料はかからず、訪問査定で提示した金額がそのまま手取り額になります。金額が確定するため、納税分を見込んだ資金計画が立てやすくなります。
譲渡所得税に関するよくある質問
譲渡所得税について、お客様からよくいただくご質問をまとめました。
売却価格に対して課税されるのですか
されません。課税されるのは、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた譲渡所得です。ここがマイナスであれば税金はかかりません。
売却損が出たら給与所得と相殺できますか
原則としてできません。相殺できるのは、一定の要件を満たすマイホームの売却損などに限られます。
所有期間はいつから数えますか
売却した年の1月1日時点で判定します。相続や贈与で取得した場合は、前の所有者の取得日を引き継いで計算します。
納税額がゼロになるなら申告しなくてよいですか
特例を使ってゼロになる場合は申告が必要です。申告をしなければ特例そのものが適用されません。
住民税はいつ支払うことになりますか
確定申告の内容にもとづき、売却した翌年度の住民税として課されます。所得税とは納付の時期が異なります。
まとめ|マーキュリーへご相談ください
譲渡所得税は、売却価格ではなく譲渡所得にかかります。計算の手順と使える特例を押さえておけば、手取り額の見通しは立てられます。
- ●譲渡所得税は所得税・住民税・復興特別所得税の総称。給与とは分けて計算する分離課税
- ●課税対象は収入金額から取得費と譲渡費用、特別控除を差し引いた金額
- ●取得費に含められる費用の漏れが、そのまま納税額の増加につながる
- ●所有期間は「売却した年の1月1日時点」で判定。相続なら前の所有者の取得日を引き継ぐ
- ●特例は確定申告をして初めて適用される。納税額がゼロでも申告は必要
税額の見込みも含めて手取りを把握したうえで売却を進めたい方、相続や共有名義で権利の整理が必要な方も、マーキュリーは直接買取で承ります。査定は無料で、ご相談だけでも歓迎いたします。





