
「親から相続した家が再建築不可だとわかり、不動産会社に売りに出してもらったけれど、半年たっても問い合わせがない」——再建築不可物件の売却では、こうしたご相談をよくいただきます。
再建築不可物件は買い手が限られるため、一般の買主を探す仲介では時間がかかりがちです。そこで選択肢になるのが、不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」です。
この記事では、再建築不可物件を買取会社に売るメリットと注意点、仲介との違い、売却の流れを整理します。再建築不可物件の買取・再生を手がけてきた当社の事例もあわせて紹介します。
再建築不可物件が仲介では売れにくい理由
再建築不可物件とは、建築基準法の接道義務(幅4m以上の道路に2m以上接すること)などを満たしていないため、今の建物を取り壊すと新しい建物を建てられない物件のことです。住み続けること自体はできますが、老朽化や火災・地震で建物を失ったときに建て直せないという大きなリスクを抱えています。どうして再建築不可になるのかは再建築不可物件のトラブルと対処法で詳しく解説しています。
一般の買主が見つかりにくい理由は、主に次のとおりです。
- 住宅ローンが使いにくい:担保としての評価が低く、多くの金融機関で融資を受けにくいため、現金で買える人に限られます。
- リフォーム費用がかさむ:築年数の古い建物が多く、住めるようにするには大きな改修が必要になりがちです。敷地が奥まっていて足場が組めない、資材を運び込めないといった理由で工事費が上がったり、施工会社に断られたりすることもあります。
- 2025年の法改正でリフォームのハードルが上がった:2025年4月の建築基準法改正により、木造2階建てなどでも大規模な修繕・模様替えに建築確認が必要になりました。再建築不可物件ではこの確認が取りにくく、できる工事の範囲が狭まっています(参考:再建築不可物件のリフォームはどこまでできる?)。
- 使い道が限られる:建て替えができないので、土地として買って新築したい人の候補から外れてしまいます。
こうした事情から、仲介で売りに出しても内覧すら入らず、長期間売れ残ってしまうケースが少なくありません。そこで検討したいのが、再建築不可物件の扱いに慣れた買取会社への売却です。
再建築不可物件は買取会社がいい理由|4つのメリット
買取会社に売ると、価格以外の面で得られるものが多くあります。主なメリットを4つ紹介します。
① 買主を探す必要がなく、早く現金化できる
仲介は買主が見つかるまで売れません。再建築不可物件の場合、それが半年、1年と延びることも珍しくありません。買取なら買取会社自身が買主なので、条件がまとまればすぐに契約できます。役所調査や権利関係の確認が済めば、数週間から1ヶ月程度で決済まで進むのが一般的です。
相続税の納税期限がある、住み替え先の資金が必要など、期限が決まっている方には大きなメリットです。
② 古い建物も荷物もそのままで売れる
仲介で売るなら、ある程度見栄えを整えたり、残っている家具を片付けたりする必要があります。買取会社は購入後に自社で改修や活用をする前提なので、建物が傷んでいても、家財が残っていても、そのままの状態で引き取ってもらえるのが一般的です。
リフォームや解体、遺品整理のために業者を探したり、費用を立て替えたりする手間がかかりません。
なお、売る前に建物を解体するのは避けてください。再建築不可の土地は一度更地にすると新しい建物が建てられず、住宅用地の特例が外れて固定資産税も上がってしまいます。
③ 空き家のまま放置するリスクを早く手放せる
売れないまま空き家の状態が続くと、次のような問題が出てきます。
- 人が住まない建物は傷みが早く、物件の価値がさらに下がる
- ゴミの不法投棄や雑草の繁茂、不審者の侵入など、近隣とのトラブルの原因になる
- 外壁の落下や倒壊で通行人や隣家に被害が出れば、所有者が損害賠償責任を負う
- 自治体から「管理不全空家」「特定空家」に指定され勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が外れ、土地の税額が最大で6倍程度になる
しかも再建築不可物件は、災害などで建物を失うと建て直せません。買取会社に売れば契約から引き渡しまでが短く、こうしたリスクを抱え続ける期間を最小限にできます。
④ 契約不適合責任を免除にできる
不動産を売った後に、契約書に書かれていない雨漏りやシロアリ被害、土中の埋設物などが見つかった場合、売主は「契約不適合責任」を問われることがあります。民法では、買主は売主に対して次のような請求ができると定められています(民法562条〜564条)。
- 修補などの「履行の追完」の請求
- 代金の減額請求
- 損害賠償の請求、契約の解除
種類や品質に関する不適合の場合、買主は不適合を知った時から1年以内に売主へ通知すれば、これらの権利を行使できます(民法566条)。築年数の古い再建築不可物件では、売主自身も気づいていない不具合が残っていることが多く、個人の買主に売ると引き渡し後に責任を問われるおそれがあります。
買取会社は建物の状態を織り込んだうえで価格を出すため、契約不適合責任を負わない「免責」の特約で契約するのが一般的です。売却後に修理代や減額を求められる心配がなくなります。ただし、売主が知っていながら伝えなかった不具合については、特約があっても責任を免れません(民法572条)。雨漏りや境界のもめごとなど、把握していることは隠さず伝えておきましょう。
そのほかのメリット
- 仲介手数料がかからない:買取会社と直接取引するため、仲介会社に払う手数料(売買価格の3%+6万円+消費税が上限)が不要です。
- 周囲に知られずに売れる:広告やチラシで売り出さないので、近所に売却を知られにくくなります。
買取会社に売るときの注意点
メリットの多い買取ですが、事前に知っておきたい点もあります。
価格は仲介で売れた場合より低くなりやすい
買取会社は購入後の改修費や権利調整の費用、販売までの期間のリスクを見込んで価格を出します。そのため、仲介でうまく買主が見つかった場合の価格よりは低くなるのが一般的です。
ただ、再建築不可物件は仲介でも買主が見つからないことが多く、売れないまま固定資産税や管理費を払い続けたり、値下げを繰り返したりすることもあります。売れるまでの期間と手間、売却後の責任まで含めて考えると、買取のほうが結果的に負担が少ないケースは多いです。価格の決まり方は再建築不可物件の買取|価格の決まり方で解説しています。
手元に残る金額は「買取価格−諸費用・税金」
仲介手数料はかかりませんが、売買契約書の印紙代、住宅ローンが残っていれば抵当権の抹消費用、利益が出れば譲渡所得税・住民税がかかります。相続した物件の場合は、相続登記が済んでいないと売却できません。手取り額は、こうした費用を差し引いて考えましょう(参考:不動産にかかる税金)。
再建築不可物件を扱った経験があるかを確認する
買取会社といっても、得意な物件はそれぞれ違います。再建築不可物件は、接道の状況や私道の権利、隣地との関係を調べたうえで、どう再生するかまで考えられないと適正な価格が出せません。相談の際は、同じような物件を買い取った実績があるか、価格の根拠をきちんと説明してくれるかを確認すると安心です。
仲介と買取の違い
| 仲介 | 買取 | |
|---|---|---|
| 買主 | 一般の個人など | 買取会社 |
| 売れるまでの期間 | 数ヶ月〜1年以上(売れないこともある) | 数週間〜1ヶ月程度が目安 |
| 価格 | 買主が見つかれば高くなりやすい | 仲介より低くなりやすい |
| 仲介手数料 | かかる | かからない |
| 建物・残置物 | 片付けや修繕を求められることが多い | 現況のままで可能なことが多い |
| 契約不適合責任 | 負うのが一般的 | 免責にできることが多い |
| 周囲への知られやすさ | 広告するので知られやすい | 知られにくい |
隣地の所有者に買ってもらう方法も含めた売り方の選び方は、再建築不可物件は売却できる?高く売る方法で紹介しています。
買取会社はなぜ再建築不可物件を買い取れるのか
一般の方には使いにくい再建築不可物件でも、買取会社が買い取れるのは、購入後に価値を高める方法を持っているからです。たとえば次のような方法があります。
- 隣地の一部を取得したり、隣地とまとめて買ったりして接道条件を満たす
- 建築基準法43条2項の認定・許可を得て、建て替えができるようにする
- 私道の所有者から通行・掘削の承諾を取り付ける
- 建て替えをせず、リフォームして賃貸住宅として活用する
こうした調整は、個人が一から進めるには時間も専門知識も必要です。再建築可能にする方法の詳細は再建築不可でも建て替えできる?、私道に関わる承諾は私道に接する土地は売却できる?をご覧ください。
マーキュリーの買取事例
当社は権利関係が複雑な不動産の買取と再生を専門にしており、権利調整の実績は400件を超えます。再建築不可や私道に関わる物件の事例を一部ご紹介します。
再建築不可だった奥側の区画を、建てられる土地に(世田谷区東玉川)
1筆の土地に4軒の借地が設定され、奥側の2区画は再建築不可でした。ご相談者は他社に依頼していたものの、地主との協議が1年以上進まなかったそうです。当社が確定測量を行って各借地人と調整し、分筆登記を実施。関係各所と協議を重ねて再建築できる状態に整えたうえで、借地権と底地をあわせて取得し、宅地として販売しました。
事例を見る:世田谷区東玉川
私道の通行・掘削承諾を取得して建て替え(目黒区中目黒)
私道に面した老朽戸建てを、資産整理のために建物ごと買い取った事例です。私道の所有者から通行・掘削の承諾を取得したうえで解体し、目黒川沿いの立地を活かした店舗ビルを新築しました。
事例を見る:目黒区中目黒
単独では建て替えが難しい長屋を、隣接部分ごと買取(港区南麻布)
長年空き家になっていた一棟長屋の一部を、老朽化と管理の負担から手放したいというご相談でした。長屋は隣の住戸と構造がつながっているため、単独で解体・新築するには切り離し工事が必要です。当社は隣接する部分も含めて一括で買い取り、全体を解体して新築戸建てに再生しました。
事例を見る:港区南麻布
ほかの会社で断られた物件や、話が進まなくなってしまった物件のご相談もお受けしています。当社に寄せられたご相談と解決までの流れは、マーキュリーに寄せられた相談事例でも紹介しています。
再建築不可物件を買取で売るときの流れ
- 相談・査定の依頼:所在地や現在の状況を伝えます。住所と建物の様子がわかれば十分です。
- 現地確認・役所調査:買取会社が接道状況、道路の種類、私道の権利関係、境界などを調べます。
- 買取価格の提示:調査結果をもとに価格と条件(引き渡し時期、残置物の扱い、契約不適合責任の免責など)が示されます。
- 売買契約:条件に納得できれば契約を結び、手付金を受け取ります。
- 決済・引き渡し:残代金を受け取り、所有権移転の登記をして完了です。
相談の段階で、登記事項証明書(登記簿)、公図や測量図、固定資産税の納税通知書、建物の図面、私道に関する取り決めの書類などが手元にあると、調査がスムーズに進みます。そろっていなくても相談は可能です。相続した物件の場合は再建築不可物件を相続したらどうする?もあわせてご覧ください。
リフォームや解体はせず、現況のまま相談するのが効率的
査定を頼む前に「少しでも見栄えを良くしておいたほうがいいのでは」と、リフォームを考える方もいます。掃除程度ならともかく、お金をかけた改修は控えたほうが賢明です。
たとえば200万円かけてリフォームしても、買取価格が200万円上がることはまずありません。買取会社は購入後の活用方法に合わせて自社で工事をするため、事前のリフォームは価格にほとんど反映されないからです。また先ほど触れたとおり、解体すると再建築ができない更地になり、かえって売りにくくなります。
物件を手放したいと思ったら、まずは今の状態のまま株式会社マーキュリーにご相談ください。「急いで現金化したい」「費用の持ち出しを抑えたい」など、ご希望があれば担当者にお伝えください。できる限り柔軟に対応いたします。
再建築不可物件の買取に関するよくある質問
Q. 再建築不可物件でも本当に買い取ってもらえますか?
買い取ってもらえます。買取会社は隣地との調整や43条2項の許可、リフォームしての賃貸活用など、購入後に価値を高める方法を持っているため、一般の買主が見つかりにくい物件でも買い取ることができます。
Q. 買取と仲介では、どちらが高く売れますか?
価格だけを見れば、買主が見つかった場合の仲介のほうが高くなりやすいです。ただ、再建築不可物件は仲介では買主が見つからないことも多く、売れるまでの固定資産税や管理の手間、売却後の契約不適合責任まで考えると、買取のほうが負担が少ないケースが多くあります。
Q. 買取の場合、どのくらいで現金化できますか?
役所調査や権利関係の確認が済めば、数週間から1ヶ月程度で決済まで進むのが一般的です。私道の承諾や相続登記などの手続きが必要な場合は、その分の期間がかかります。
Q. 家具や荷物が残ったままでも売れますか?
当社では、家具や荷物が残ったままの状態でも買い取りが可能です。片付けや遺品整理の手配をしなくても売却できます。
Q. 売る前に建物を解体したほうがいいですか?
解体はおすすめしません。再建築不可の土地は更地にすると新しい建物を建てられないうえ、住宅用地の特例が外れて固定資産税が上がります。建物を残したまま相談してください。
Q. 買取なら売却後に責任を問われることはありませんか?
買取会社との取引では、契約不適合責任を免除する特約で契約するのが一般的で、引き渡し後に修理代や減額を求められる心配はほとんどありません。ただし、売主が知っていながら伝えなかった不具合は免責されないため、把握していることは事前に伝えておきましょう。
Q. マーキュリーはどのエリアに対応していますか?
東京都内を中心に、首都圏で開発を行っています。
まとめ
再建築不可物件は、住宅ローンが使いにくくリフォームにも制約があるため、仲介では買主が見つかりにくい物件です。買取会社に売れば、早く現金化できる、現況のまま売れる、空き家のリスクを早く手放せる、契約不適合責任を免除にできる、といったメリットがあります。
価格は仲介より低くなりやすいものの、売れるまでの期間や手間、売却後の責任まで考えれば、買取が合理的な選択になるケースは少なくありません。リフォームや解体をする前に、まずは今の状態のままご相談ください。





