「定期借地権付きの物件を相続したけれど、普通の借地権と何が違うのか分からない」「契約の満了が近づいてきたが、売ることはできるのか」。定期借地権について、こうした疑問を持つ方は少なくありません。
定期借地権とは、契約の更新がなく、期間が満了すれば借地関係が終わる借地権のことです。借地借家法では、一般定期借地権・事業用定期借地権・建物譲渡特約付借地権の3つが定められており、それぞれ期間や契約の方式が異なります。
この記事では、借地借家法の条文をもとに、定期借地権の3つの種類、普通借地権や旧法借地権との違い、地主と借地人それぞれの注意点、そして定期借地権付き物件を売却するときの考え方を順に整理します。
残りの期間が短くなるほど、借地権の価値や売却の選択肢は変わっていきます。まずは仕組みを正しく押さえ、早めに方針を決めるための材料にしてください。
定期借地権とは|更新のない借地権の基本
定期借地権は、あらかじめ決めた期間が満了すると、更新されずに終了する借地権です。借地権とは、借地借家法第2条で「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と定義されています。
通常の借地権(普通借地権)は、期間が満了しても建物があれば借地人が更新を求めることができ、地主が更新を拒むには正当の事由が必要です。そのため、一度貸すと土地がなかなか戻ってこないという事情がありました。
定期借地権は、こうした更新の仕組みを特約などで外し、期間満了で確実に土地を返してもらえるようにした制度です。地主にとっては土地を貸しやすくなり、借地人にとっては土地を買うよりも少ない負担で建物を持てるという面があります。
たとえば、駅に近い土地を持つ地主が、50年後に土地を確実に返してもらう前提で住宅用に貸し出すケースがあります。借地人は土地代を払わずに家を建てられる一方、期間が終われば土地を返すことになります。
定期借地権の3つの種類|一般・事業用・建物譲渡特約付き
借地借家法が定める定期借地権は3種類です。期間・建物の用途・契約の方式がそれぞれ異なるため、手元の契約書がどれに当たるかをまず確認しましょう。
一般定期借地権(第22条)
存続期間を50年以上として設定する借地権です。契約の更新、建物の築造による期間の延長、建物買取請求をしない旨を特約で定めます。この特約は、公正証書による等書面(または電磁的記録)でしなければなりません。建物の用途に制限はなく、住宅にも使われます。
事業用定期借地権等(第23条)
専ら事業の用に供する建物(居住用を除く)の所有を目的とする借地権です。期間を30年以上50年未満とする場合は、更新などをしない旨を定めることができます。10年以上30年未満とする場合は、更新や建物買取請求に関する規定がそもそも適用されません。いずれも契約は公正証書によってしなければなりません。
建物譲渡特約付借地権(第24条)
借地権を消滅させるため、設定後30年以上を経過した日に、土地の上の建物を地主に相当の対価で譲渡する旨を定める借地権です。建物が地主に移ったあとも使用を続けている借地人や建物の賃借人が請求すれば、建物の賃貸借がされたものとみなされます。
| 種類 | 存続期間 | 建物の用途 | 契約の方式 | 期間満了時 |
|---|---|---|---|---|
| 一般定期借地権 | 50年以上 | 制限なし | 公正証書による等書面 | 更新なし・建物買取請求なし |
| 事業用定期借地権等 | 10年以上50年未満 | 事業用のみ(居住用は不可) | 公正証書 | 更新なし・建物買取請求なし |
| 建物譲渡特約付借地権 | 30年以上経過後に建物を譲渡 | 制限なし | 条文上の方式の定めなし | 建物を地主が相当の対価で取得 |
普通借地権との違い|更新・期間・建物買取請求
定期借地権と普通借地権のいちばん大きな違いは、更新があるかどうかです。普通借地権の存続期間は30年で、契約でこれより長い期間を定めたときはその期間になります(借地借家法第3条)。
更新後の期間は、最初の更新が20年、2回目以降が10年です(第4条)。期間が満了しても建物があれば、借地人の請求や土地の使用継続によって更新したものとみなされます(第5条)。地主が異議を述べるには、土地を使う必要性や立退料の申出などを考慮した正当の事由が必要です(第6条)。
さらに、更新がないときは、借地人は地主に建物を時価で買い取るよう請求できます(第13条)。定期借地権ではこれらの仕組みを特約で外す、または適用しないため、期間満了で借地関係が終わります。
| 比較項目 | 普通借地権 | 一般定期借地権 |
|---|---|---|
| 存続期間 | 30年(契約でより長く定めることも可) | 50年以上 |
| 更新 | あり(最初20年・以降10年) | なし |
| 地主の更新拒絶 | 正当の事由が必要 | 不要(期間満了で終了) |
| 建物買取請求 | できる | しない旨の特約 |
| 土地が戻る見通し | 立てにくい | 期間満了で戻る |
たとえば、普通借地権の土地は地主から見ると返還の時期が読めないため、底地としての評価が伸びにくい傾向があります。定期借地権は終わりが決まっている分、地主・借地人ともに将来の計画を立てやすいといえます。
旧法借地権との関係|契約時期で適用される法律が変わる
借地の契約には、いつ結ばれたかによって旧借地法の考え方が残るものがあります。借地借家法の附則では、この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新については「なお従前の例による」とされています(附則第6条)。
つまり、借地借家法の施行前から続いている借地は、更新の扱いについて旧借地法の考え方で判断されることになります。定期借地権は借地借家法で新たに設けられた制度のため、施行前に結ばれた借地契約が定期借地権になっていることはありません。
相続で引き継いだ借地では、契約書が古く、どの法律が前提なのか分からないこともあります。契約の締結日、更新の履歴、公正証書の有無を確認すると、手元の借地がどれに当たるかの見当がつきます。
たとえば、親の代から続く借地で「期間満了で返すもの」と思い込んでいたところ、実際は旧法の借地で更新が前提の契約だったというケースもあります。思い込みで判断せず、書類で確かめることが大切です。
地主と借地人それぞれのメリットと注意点
定期借地権は、地主と借地人のどちらにも利点がある一方で、注意したい点もあります。立場ごとに整理しておくと、契約の見直しや売却の判断がしやすくなります。
地主側のメリットと注意点
地主にとっての最大のメリットは、期間が満了すれば土地が確実に戻ってくることです。土地を手放さずに地代収入を得られ、将来の建て替えや売却の計画も立てやすくなります。一方で、契約の方式を守っていないと定期借地権として扱われないおそれがあります。公正証書などの書面がきちんと整っているかが重要です。
借地人側のメリットと注意点
借地人にとっては、土地を購入するよりも少ない初期負担で建物を持てる点が魅力です。ただし、期間が満了すれば土地を返さなければならず、建物買取請求もできません。残りの期間が短くなるほど、建物や借地権の価値は下がりやすくなります。
たとえば、残存期間が10年を切った定期借地権付きの住宅は、買い手が住宅ローンを組みにくく、一般の市場では売れにくくなることがあります。満了直前に慌てないよう、残存期間に余裕があるうちに方針を決めておきましょう。
定期借地権付き物件を売却するときの考え方
定期借地権付きの建物は、売却することができます。ただし、土地の権利は地主のものなので、売却にはいくつか押さえておきたい点があります。
地主の承諾が必要になる場合がある
借地権が土地の賃借権の場合、借地権を第三者に譲渡するには地主の承諾が必要です(民法第612条)。承諾なく譲渡して第三者に使わせたときは、地主は契約を解除できます。地主が承諾しない場合でも、地主に不利となるおそれがないときは、借地人の申立てにより裁判所が承諾に代わる許可を与えることができます(借地借家法第19条)。
残存期間が価格を左右する
定期借地権付き物件の価格は、残りの期間に大きく左右されます。期間満了後は土地を返す前提のため、残存期間が短いほど買い手が使える年数が減り、評価も下がります。売却を考えるなら、期間に余裕のある早い段階での判断が有利になりやすいといえます。
買取という選択肢
一般の買い手が見つかりにくい定期借地権付き物件でも、借地の扱いに慣れた買取会社であれば、地主との調整を含めて買い取れる場合があります。訪問査定で提示された金額がそのまま買取価格となり、手取り額になります。
出典:e-Gov法令検索|民法
e-Gov法令検索|借地借家法
期間満了が近づいたときの選択肢
定期借地権の期間満了が見えてきたら、借地人・地主ともに早めの準備が必要です。どのような選択肢があるかを知っておくと、話し合いを落ち着いて進められます。
借地人の選択肢としては、期間満了まで住み続けて契約どおりに土地を返す、残存期間があるうちに建物と借地権を売却する、地主に建物ごと買い取ってもらえないか相談する、といったものが考えられます。返還の条件(建物を取り壊すかどうかなど)は契約で決まっているため、契約書の確認が欠かせません。
地主の選択肢としては、土地の返還を受けて自ら活用する、借地人と合意して新たな契約を結ぶ、底地のまま売却する、などがあります。建物譲渡特約付借地権であれば、建物を相当の対価で取得したうえで賃貸に回すこともできます。
なお、借地上の建物を賃貸している場合、建物の賃借人が期間満了をその1年前までに知らなかったときは、裁判所が明渡しに相当の期限を与えることがあります(借地借家法第35条)。賃借人がいる物件では、早めに満了の時期を伝えておくと安心です。
定期借地権についてよくある質問
定期借地権について、よく寄せられる質問にお答えします。契約や売却を考える前に確認しておきましょう。
定期借地権の期間が満了したら、建物はどうなりますか
一般定期借地権と事業用定期借地権では、建物買取請求をしない前提のため、契約で定めた方法で土地を返すことになります。建物を取り壊して返す取り決めが多いため、契約書で返還の条件を確認しておきましょう。
定期借地権は更新できますか
定期借地権には更新がありません。ただし、地主と借地人が合意すれば、期間満了後に改めて新しい契約を結ぶことは考えられます。その場合は、条件を一から取り決めることになります。
定期借地権付きの家は売れますか
売却することは可能です。借地権が賃借権の場合は地主の承諾が必要で、承諾が得られないときは裁判所の許可を求める方法もあります。残存期間が短いと一般の買い手は付きにくいため、借地に強い買取会社への相談も選択肢になります。
自分の借地が定期借地権かどうかは、どう確認しますか
契約書と、公正証書などの書面を確認するのが基本です。一般定期借地権は公正証書による等書面、事業用定期借地権は公正証書での契約が求められています。書面がなければ、普通借地権として扱われる可能性もあります。
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まとめ|マーキュリーへご相談ください
定期借地権は、更新がなく期間満了で終わる借地権です。種類ごとに期間や契約の方式が異なり、普通借地権とは更新・建物買取請求の扱いが大きく違います。
- ●定期借地権は一般定期借地権・事業用定期借地権等・建物譲渡特約付借地権の3種類
- ●一般定期借地権は50年以上、事業用は10年以上50年未満で、事業用は公正証書が必要
- ●普通借地権は30年・更新あり・建物買取請求ありで、地主の更新拒絶には正当の事由が必要
- ●借地借家法の施行前に設定された借地の更新は、従前の例(旧借地法)による
- ●定期借地権付き物件の売却では、地主の承諾と残存期間が大きなポイントになる
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