相続した実家を兄弟で共有しているけれど、売るか残すかで意見が割れている。離婚した元配偶者と家が共有名義のまま。——共有不動産は、全員の足並みがそろわないと売ることも建て替えることもできません。
こうした状態を法的に解消する手段が「共有物分割請求」です。話し合いがまとまらなくても、最終的には裁判所が分け方を決めてくれます。ただし、時間や費用がかかるうえ、望まない結果(競売など)になることもあります。
この記事では、共有物分割請求の仕組み、手続きの流れと費用・期間、3つの分割方法、2023年の民法改正で変わった点、そして知っておくべきリスクを整理します。共有持分の買取を手がける当社の立場から、裁判以外の解決方法もあわせて紹介します。

共有物分割請求とは
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。
民法256条1項(e-Gov法令検索)
共有物分割請求とは、共有者の一人が、ほかの共有者に対して共有状態の解消を求めることです。土地や建物を物理的に分ける、誰か一人がまとめて取得してほかの人にお金を払う、売って代金を分ける、といった方法で共有をなくします。
この権利は共有者なら誰でも、いつでも行使できます(5年以内の不分割契約を結んでいる場合を除く)。持分が小さくても請求できますし、ほかの共有者が反対していても構いません。
まずは共有者同士の話し合い(協議)で分け方を決めます。協議の申し入れ自体には強制力がないため、無視されることもあります。それでも協議がまとまらない、または相手が応じず協議ができない場合は、裁判所に「共有物分割訴訟」を起こせます(民法258条1項)。訴訟になれば相手は無視できず、裁判所が分割方法を決め、その判決には強制力があります。
共有持分そのものの基本は共有持分とは?できること・できないことで解説しています。
相続した共有不動産は「遺産分割」が先
注意したいのが、相続で共有になった不動産です。遺産分割がまだ終わっていない状態(遺産共有)では、原則として共有物分割請求はできず、家庭裁判所での遺産分割調停・審判で分け方を決めることになります(民法258条の2第1項)。
ただし、2023年4月の民法改正で、相続開始から10年が過ぎた場合は、遺産共有の持分についても共有物分割訴訟で一括して解決できるようになりました(同条2項)。遺産分割がすでに終わり、相続人同士の共有として登記されている場合は、通常どおり共有物分割請求ができます。相続した共有持分の扱いは共有持分を相続することになったらをご覧ください。
共有物分割請求をする目的
共有不動産は、全体を売ったり、建て替えたり、大きく手を加えたりするのに共有者全員の同意が必要です。一人でも反対すれば動かせません。共有物分割請求の主な目的は、この「動かせない状態」を終わらせることにあります。
- 単独所有にして自由に使いたい:単独の名義になれば、売却や建て替え、担保にした借り入れを自分の判断でできるようになります。
- 現金化したい:使わない不動産を売って、自分の持分に見合うお金を受け取りたい場合です。
- 負担の不公平をなくしたい:ほかの共有者が住んでいて自分は使えないのに、固定資産税を負担している、といった状態を解消したい場合です。
なお、ほかの共有者が不動産を単独で使っている場合、使えていない共有者は、持分に応じた使用料(賃料相当額)を請求できることが2023年の改正で明文化されました(民法249条2項)。
共有物分割請求のメリット
相手が応じなくても、最終的に裁判所が決めてくれる
話し合いでは、相手が応じなければそれ以上進みません。共有物分割訴訟を起こせば、裁判所が中立の立場で分割方法を決め、判決には強制力があります。判決に従わない共有者がいても、登記や競売の手続きを強制的に進められるので、膠着した状態に必ず区切りをつけられるのが最大のメリットです。
ただし、判決の内容が全員の希望どおりになるとは限りません。あくまで「終わらせる」ための手段と考えておきましょう。
根拠のある価格で精算できる
共有者同士の話し合いで持分の買い取り額(代償金)を決めると、どうしても「言い値」の応酬になりがちです。訴訟では、当事者が出す査定書や、必要に応じて裁判所が選んだ不動産鑑定士の鑑定をもとに価格が判断されます。根拠のある評価で精算されるので、一方だけが極端に得をしたり損をしたりしにくくなります。なお、鑑定費用は鑑定を申し出た側が予納するのが原則です。
共有物分割請求の流れ
1.共有者同士で話し合う(協議)
まずはほかの共有者に、共有を解消したいことと希望する方法を伝えます。たとえばAがB・Cの持分を買い取って単独所有にしたい場合、BとCにそれぞれの持分に見合う金額を払う、という提案をします。金額に納得してもらえれば、それで解決です。合意があれば無償で持分を移すこともできます(その場合は贈与税の対象になります)。
話がまとまらないときに備え、申し入れは内容証明郵便などで記録に残しておくと、後に「協議が調わなかった」ことを示す材料になります。
2.民事調停を申し立てる(任意)
当事者だけでは冷静に話せない場合、簡易裁判所に民事調停を申し立て、調停委員を交えて話し合う方法があります。あくまで話し合いの場なので、合意できなければ不成立で終わります。共有物分割には「調停前置主義」(訴訟の前に必ず調停をしなければならないルール)がないため、調停を経ずに訴訟を起こすこともできます。
3.共有物分割訴訟を起こす
最終手段が、地方裁判所(訴額によっては簡易裁判所)への共有物分割訴訟です。請求する人以外の共有者全員を被告にする必要があり、一人でも漏れると訴えが認められません。
訴訟の途中で全員が合意すれば、和解で終わることもあります。実際には、裁判所の勧めで和解に至るケースも少なくありません。和解できなければ、裁判所が分割方法を決めて判決を出します。
4.判決に沿って登記・引き渡し・競売
判決が確定したら、その内容に従って分筆や所有権移転の登記、代償金の支払い、建物の明け渡しなどを行います。競売を命じる判決なら、共有者が地方裁判所に競売を申し立てて売却し、代金を持分に応じて分けます。
期間と費用の目安
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 訴訟の期間 | 半年〜1年程度。争いが大きい、鑑定をする場合などは2年以上かかることもある |
| 印紙代・郵券 | 訴額(固定資産評価額と原告の持分などから算定)に応じた収入印紙と、裁判所に予納する郵便切手 |
| 鑑定費用 | 不動産鑑定をする場合に必要。数十万円程度かかることがある |
| 弁護士費用 | 着手金・報酬金など。事務所や事案の内容により異なる |
| 競売の費用 | 競売になった場合、申立ての予納金などが別途必要 |
訴訟の進め方や費用は事案によって大きく変わります。訴訟を検討する段階になったら、弁護士に相談してください。
共有物分割の3つの方法
分け方には大きく3つあります。話し合いならどの方法でも自由に選べますが、訴訟では2023年の改正後の民法258条で、裁判所が選ぶ順番が整理されました。まず「現物分割」か「賠償分割(代償分割)」を検討し、どちらもできない、または分けると価値が大きく下がるおそれがある場合に「競売(代金分割)」を命じます。
土地を切り分ける「現物分割」
土地を物理的に分けて、それぞれが単独で所有する方法です。たとえば300㎡の土地をA・B・Cの3人で持分3分の1ずつ共有しているなら、100㎡ずつに分けます。

登記上の土地は「筆」という単位で数え、1つの土地を複数に分けることを「分筆」といいます。分筆には次のような作業が必要です。
- 分け方(分筆案)の作成
- 隣接地の所有者との境界立会い
- 境界標(杭・鋲)の設置
- 測量と境界の確定
- 法務局への分筆登記の申請
ただし、建物が建っている、分けると各区画が狭すぎて家が建てられない、分けた区画が道路に接しなくなる(再建築不可になる)といった場合は、現物分割が難しくなります。面積を均等に分けても、道路に面しているかどうかなどで価値が変わる点にも注意が必要です。
売って代金を分ける「代金分割(換価分割)」
不動産を売却し、代金を持分に応じて分ける方法です。誰も使う予定がない場合は、もっとも公平でわかりやすい方法です。

話し合いで全員が合意すれば、通常の売却と同じように市場で売れます。売り出し価格で意見が割れやすいので、事前に査定額を共有して目線をそろえておくとスムーズです。
一方、訴訟で代金分割になる場合は「競売」を命じる判決になります。競売は市場で普通に売るより安くなりやすく、手続きにも時間がかかります。
持分を買い取ってお金で精算する「代償分割(価格賠償)」
共有者の一人がほかの共有者の持分を取得し、その対価(代償金)を払う方法です。次の2つがあります。
- 全面的価格賠償:Aが不動産全体を取得し、B・Cに持分相当の代償金を払う方法。2023年の改正で、裁判所が命じられる分割方法として条文に明記されました。
- 一部価格賠償:現物分割をしたうえで、価値の差を金銭で調整する方法

一部価格賠償は、たとえば土地を分筆したとき、道路側の区画のほうが奥の区画より価値が高い場合に使います。持分以上の価値の区画を取得した共有者が、超える部分の対価をほかの共有者に払って調整します。

訴訟で全面的価格賠償が認められるには、不動産を取得する人に代償金を払う資力があること、その人に取得させるのが相当であること(たとえば現に住んでいるなど)、価格が適正に評価されていることなどが考慮されます。お金を用意できなければ認められません。
分割方法ごとの税金
- 現物分割:持分に応じて分けるだけなら、譲渡にはあたらず譲渡所得税はかかりません。
- 代金分割:売却益が出れば、各共有者が持分に応じて譲渡所得税・住民税を負担します。
- 代償分割:持分を手放して代償金を受け取った側は、持分を売ったのと同じ扱いで譲渡所得税の対象になります。取得した側には、持分を超えて取得した部分に不動産取得税や登録免許税がかかります。
詳しくは不動産にかかる税金もあわせてご確認ください。
共有物分割請求で知っておくべき注意点とリスク
解決までに時間がかかる
話し合いでまとまれば早いですが、訴訟になると時間がかかります。訴訟では1〜2ヶ月おきに期日が開かれ、原告と被告が書面で主張と反論を重ねていきます。鑑定をすればさらに数ヶ月延びますし、判決後に競売となれば、その手続きにも時間がかかります。半年〜1年、争いが大きければ2年以上を見込んでおく必要があります。
共有者との関係が悪くなりやすい
共有者それぞれの希望が違えば、対立は避けられません。たとえば、A・B・Cの3人で次のように意見が分かれているケースです。
- A:土地を3つに分けて、それぞれ単独で使えるようにしたい
- B:自分が全部取得して家を建てたい
- C:売ってお金にしたい
相続した不動産の共有者は、兄弟姉妹や親戚であることがほとんどです。訴訟で争えば、その後の親族関係に深い溝が残ることもあります。共有持分のトラブル事例は共有持分の売却トラブル3事例で紹介しています。
希望どおりの分け方になるとは限らない
裁判所は当事者の希望を考慮しますが、最終的には不動産の形状や利用状況、各共有者の事情、支払い能力などを総合して分割方法を決めます。「自分が単独で取得したい」と主張しても、代償金を払えなければ認められず、競売を命じられることもあります。
競売になると相場より安く手放すことになる
現物分割も代償分割もできない場合、裁判所は競売を命じます。競売の基準となる価格は、一般の市場での取引価格より低めに設定されるのが通例で、落札額も相場を下回りやすくなります。そこから弁護士費用や競売の手続き費用を差し引くと、手元に残る金額は思ったより少なくなりがちです。
競売で手放すくらいなら、その前に自分の持分を売却して共有から抜ける方法も検討する価値があります。
住んでいる共有者をすぐに退去させることはできない
共有者は、持分に応じて不動産全体を使う権利があります。そのため、ほかの共有者が住んでいても、持分が多いというだけで追い出すことはできません。全面的価格賠償で自分が取得する判決が出れば明け渡しを求められますが、住んでいる側が取得を希望し、代償金を払えるなら、そちらが優先されることも多いのが実情です。
共有物分割請求が向いている人・向いていない人
向いている人
- ほかの共有者が話し合いに応じない、連絡しても返事がない
- 分け方や価格の意見がどうしても折り合わない
- 自分が不動産全体を取得したく、代償金を払える資金がある
- 時間と費用をかけてでも、不動産全体として解決したい
ほかの方法を考えたほうがいい人
- とにかく早く共有から抜けて、現金化したい
- 親族と裁判で争うことは避けたい
- 弁護士費用や鑑定費用をかけたくない
- 共有者の所在がわからない(この場合は、2023年に新設された「所在等不明共有者の持分取得・譲渡」の制度が使えることがあります)
裁判をしない選択肢|自分の持分だけを売る
不動産全体を売るには全員の同意が必要ですが、自分の持分だけを売ることには、ほかの共有者の同意はいりません。持分を買取会社に売れば、訴訟をしなくても共有から抜けられます。
| 共有物分割請求(訴訟) | 持分の売却(買取) | |
|---|---|---|
| ほかの共有者の同意 | 不要(裁判所が判断) | 不要 |
| 解決までの期間 | 半年〜2年以上 | 条件が合えば短期間 |
| 費用 | 弁護士費用・印紙代・鑑定費用など | 仲介手数料不要(買取会社と直接取引) |
| 共有者との関係 | 対立が深まりやすい | 直接やりとりせずに済む |
| 受け取れる金額 | 持分に応じた全体価格(競売なら相場より低め) | 持分単独の価格のため、全体を売る場合の持分相当額より低くなる |
持分だけの価格は、全体を売ったときの持分相当額より低くなるのが一般的です。その代わり、時間や費用、親族との対立といった負担を背負わずに済みます。どちらが自分に合うかは、何を優先したいかで判断しましょう。持分の売り方や相場は共有持分は売却できる?、買取の仕組みは共有持分の買取とは?で詳しく解説しています。
マーキュリーの共有持分の買取
当社は、相続や離婚で共有になった不動産の持分を直接買い取る「共有持分事業」を行っています。土地・戸建て・マンション・収益物件のほか、借地権の共有持分もご相談いただけます。
- ほかの共有者に知られずに相談できる:ご相談や査定の段階で、当社からほかの共有者に連絡することはありません。
- 取得後の話し合いは当社が行う:持分を買い取った後は、当社が新しい共有者として、ほかの共有者の方と話し合いながら権利関係を整理します。売主様が親族と直接やりとりする必要はありません。
- 権利調整が本業:権利調整の実績は400件を超え、借地権・底地など複数の権利が重なった不動産も扱ってきました。
分筆や測量が絡む整理も手がけています。たとえば世田谷区東玉川では、1筆の土地に4軒の借地が設定され、契約上の面積と実際の使用範囲が食い違っていました。当社が確定測量を行い、各借地人と調整したうえで分筆登記を実施し、宅地として再生しています(事例を見る:世田谷区東玉川)。
なお、共有物分割訴訟の代理や、共有者との交渉の代行は弁護士の業務です。訴訟を進めたい場合は弁護士へご相談ください。当社がお手伝いできるのは、持分の買取と、買い取った後の権利整理です。
共有物分割請求に関するよくある質問
Q. 共有物分割請求は持分が少なくてもできますか?
できます。共有者であれば持分の大小にかかわらず、いつでも分割を請求できます。ただし、5年以内の期間で「分割しない」という契約を共有者間で結んでいる場合は、その期間中は請求できません。
Q. 共有物分割請求を無視されたらどうなりますか?
話し合いの申し入れを無視されても、それだけでは何も強制できません。ただ、協議に応じてもらえない場合は「協議をすることができないとき」にあたり、共有物分割訴訟を起こせます。訴訟を無視すると、原告の主張どおりの判決が出るおそれがあるため、訴えられた側は対応が必要です。
Q. 相続した不動産でも共有物分割請求はできますか?
遺産分割が終わる前の共有状態では、原則として家庭裁判所の遺産分割調停・審判で分けることになり、共有物分割請求はできません。ただし相続開始から10年を過ぎた場合は、共有物分割訴訟で解決できるようになりました。遺産分割が済んで共有名義で登記されている場合は、通常どおり請求できます。
Q. 共有物分割訴訟にはどれくらいの期間と費用がかかりますか?
期間は半年〜1年程度が目安で、争いが大きい場合や鑑定をする場合は2年以上かかることもあります。費用は、訴額に応じた印紙代と郵便切手のほか、鑑定をすれば鑑定費用、弁護士に依頼すれば弁護士費用がかかります。競売になれば別途予納金も必要です。
Q. 共有物分割請求で競売になることはありますか?
あります。現物分割も代償分割もできない場合や、分割すると価値が大きく下がるおそれがある場合、裁判所は競売を命じます。競売は一般の市場で売るより安くなりやすいため、避けたい場合は和解や持分の売却も検討しましょう。
Q. 裁判をせずに共有状態から抜ける方法はありますか?
自分の持分だけを売却する方法があります。持分の売却には、ほかの共有者の同意は必要ありません。持分を買取会社に売れば、訴訟をせずに共有から抜けられ、その後の共有者との話し合いも買取会社が行います。
Q. マーキュリーはどのエリアに対応していますか?
東京都内を中心に、首都圏で開発を行っています。
まとめ
共有物分割請求は、話し合いがまとまらない共有状態を、最終的には裁判所の判断で解消できる強力な手段です。一方で、時間と費用がかかり、親族との関係が悪化したり、競売で安く手放すことになったりするリスクもあります。
まずは共有者同士で話し合い、それでも難しければ、訴訟で全体を解決するのか、自分の持分だけを売って共有から抜けるのかを、優先したいことに照らして選びましょう。
持分の売却をお考えなら、株式会社マーキュリーにご相談ください。ほかの共有者に知られずにご相談いただけます。





