「親が住んでいたマンションを相続したが、誰も住む予定がない」。相続をきっかけに、区分所有のマンションを抱えることになる方は少なくありません。戸建てと違って建物の維持を自分で判断できず、住んでいなくても毎月の支出が続くのが特徴です。
相続したマンションは売却できます。ただし、名義を相続人へ移してからでなければ売買契約に進めません。ここを飛ばして買主を探しても、決済の段階で止まります。
さらに、相続人が複数いる場合には、誰がどう受け取るかという遺産分割の合意が必要です。マンションは物理的に分けられないため、現金化してから分けるという選択が取られることも多くあります。
この記事では、相続したマンションを売却するまでの全体像から、相続登記、遺産分割の方法、管理費・修繕積立金の扱い、価格の決まり方、税金と特例、保有し続けた場合の負担までを順に整理します。
相続したマンションを売却するまでの全体像
まず、全体の道筋を押さえておきましょう。手順を飛ばすと、あとから戻ることになります。
| 手順 | 内容 | 目安の期間 |
|---|---|---|
| ① 相続財産と相続人の確定 | 戸籍を集め、法定相続人を確定する | 1〜2か月 |
| ② 遺産分割協議 | 誰がどう受け取るかを話し合い、協議書を作成する | 状況により数か月〜 |
| ③ 相続登記 | 法務局で名義を相続人へ移す | 1〜2か月 |
| ④ 査定・売却 | 査定を受け、売買契約から決済へ | 買取なら数日〜数週間 |
| ⑤ 確定申告 | 売却益が出た場合や特例を使う場合に申告する | 売却した翌年 |
このうち、時間が読みにくいのは①と②です。相続人が遠方に散っている、連絡の取れない相続人がいる、話し合いがまとまらないといった事情があると、数か月では収まりません。
一方で、査定は登記が終わる前でも受けられます。名義変更の準備と並行して価格の見当をつけておけば、遺産分割の話し合いも進めやすくなります。「いくらになるか分からないまま分け方を決める」のは、もめる原因になりやすいためです。
たとえば、遺産分割の話し合いが長引くあいだも管理費と修繕積立金は毎月引き落とされ続け、決着したときには相応の金額が出ていた、という例があります。手順の順序は守りつつ、並行して進められるところは進めるのが現実的です。
相続登記を済ませないと売却できない
相続したマンションを売るうえで、避けて通れないのが相続登記です。ここが最初の関門になります。
登記名義が亡くなった方のままでは、売買契約を結ぶことも、決済で所有権を移すこともできません。買主にとって、売る権限のない相手と契約することになるためです。
相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務化されました。相続を知った日から3年以内の申請が求められ、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となります。この義務は施行前に発生していた相続にもさかのぼって適用されます。
必要になるのは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本と住民票、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書、対象マンションの登記事項証明書などです。戸籍の収集は本籍地をたどる作業になるため、想像より時間がかかります。
何代にもわたって登記が放置されている場合は、相続人が枝分かれして人数が増えているのが通例です。その場合でも手続きは可能ですが、全員の協力を得るところから始まります。
遺産分割の方法|マンションは物理的に分けられない
相続人が複数いる場合、マンションをどう分けるかを決める必要があります。土地と違って切り分けができないため、方法は限られます。
| 分割の方法 | 内容 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 換価分割 | 売却して現金にしてから分ける | 誰も住む予定がなく、公平に分けたい |
| 代償分割 | 一人が取得し、他の相続人へ現金を支払う | 相続人の一人が住み続けたい |
| 共有分割 | 持分を分け合って共有名義にする | 結論を先送りせざるを得ない場合 |
実務で選ばれることが多いのは換価分割です。売却して現金にすれば1円単位で分けられ、公平性をめぐる争いが起きにくくなります。
代償分割は、住み続けたい相続人がいる場合の選択肢です。ただし、取得する人にまとまった現金が必要になります。マンションの評価額をいくらとみなすかで折り合わないことも多く、査定額という客観的な材料があると話が進みやすくなります。
避けたいのが共有分割です。その場では話がまとまったように見えても、あとで売却するときに共有者全員の合意が必要になります。共有者の誰かが亡くなればさらに相続人が増え、年月が経つほど収拾がつかなくなります。
たとえば、兄弟3人で共有名義にしたまま10年が過ぎ、そのうち1人が亡くなってその子どもたちが権利を引き継いだ結果、売却の合意を取るだけで1年以上を要したという例があります。共有は問題の先送りになりやすい選択です。
相続したマンション特有の注意点|管理費・修繕積立金
区分所有マンションには、戸建てにはない固有の論点があります。売却の前に必ず確認しておきたい点です。
第一に、管理費と修繕積立金は空室でも毎月かかります。誰も住んでいなくても支払い義務は続き、遺産分割が長引くほど負担は積み上がります。
第二に、滞納があった場合の扱いです。亡くなった方が管理費や修繕積立金を滞納していた場合、その債務は買主に引き継がれます。区分所有法により、滞納分は次の所有者へ請求できる仕組みになっているためです。したがって、滞納があると査定額はその分だけ下がります。隠したまま進めても、管理組合への照会で必ず判明します。
第三に、大規模修繕の予定です。近く大規模修繕が控えている場合、一時金の徴収や積立金の値上げが予定されていることがあります。これも買主の判断材料になるため、管理組合の総会議事録や長期修繕計画を確認しておきましょう。
第四に、賃貸中のマンションを相続した場合です。入居者がいる状態でも売却できますが、賃貸借契約と敷金の返還義務はそのまま買主へ引き継がれます。入居者に退去を求めることはできません。
たとえば、遠方に住む相続人が管理費の引き落とし口座を把握しておらず、名義人の死亡で口座が凍結されたまま数か月分の滞納が生じていた、という例があります。相続が発生したら、まず管理組合への連絡を済ませておくのが得策です。
相続したマンションの価格の決まり方と相場の調べ方
分け方を決めるにも、売るかどうかを判断するにも、まず金額の見当が必要です。調べる手立てはいくつもあります。
マンションの価格は、立地、専有面積、間取り、階数と向き、築年数、管理状態で決まります。とくに管理の良し悪しは価格に反映されます。共用部の清掃が行き届いているか、修繕積立金が十分に積み立てられているかは、買主が必ず見る点です。
全国的な傾向としては、国土交通省の不動産価格指数が参考になります。直近ではマンション(区分所有)が222.2という水準です(2010年平均を100とした値)。また令和7年地価公示では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続の上昇が確認されています。
個別の相場は、不動産情報ライブラリで実際の成約価格や地価を地図から調べられます。相続税の申告で用いる評価額とは考え方が異なるため、売却価格の目安としては成約事例のほうが実態に近くなります。成約の動向については、REINSが公表する市場動向の統計も材料になります。
なお、相続税の評価額と実際に売れる価格は一致しません。評価額が低くても市場で高く売れることもあり、その逆もあります。遺産分割の話し合いでは、どちらの金額を基準にするのかを最初に揃えておくと、話がこじれにくくなります。
出典:国土交通省|不動産価格指数
国土交通省|令和7年地価公示
国土交通省|不動産情報ライブラリ
東日本不動産流通機構(REINS)|不動産市場動向(統計)
相続したマンションの売却でかかる税金と使える特例
売却して利益が出れば、譲渡所得に対して課税されます。ただし、相続ならではの有利な取り扱いもあります。
まず所有期間です。相続した不動産の所有期間は、亡くなった方が取得した日を引き継いで計算します。相続してすぐに売っても、親が長く所有していたのであれば長期譲渡所得として扱われます。短期の高い税率が適用される心配は、多くの場合ありません。
次に取得費です。ここも亡くなった方の取得費を引き継ぎます。購入時の売買契約書が残っていれば、その金額を使えます。見つからない場合は売却価格の5%を概算取得費として使うことになりますが、実際の取得費より低くなることがほとんどで、譲渡所得が大きく計算されます。
有利な仕組みとして、取得費加算の特例があります。相続税を納めていることが前提で、相続開始から3年10か月以内に売却した場合、納めた相続税の一部を取得費に加算できます。譲渡所得を圧縮できるため、売却の時期を判断する材料になります。
なお、自分が住んでいたわけではないマンションには、マイホームの3,000万円特別控除は原則として適用されません。相続後にご自身が居住した場合など、要件を満たすかどうかは個別の判断になります。
これらの特例は自動的には適用されません。確定申告をして初めて使えます。納税額がゼロになる場合でも、申告そのものは必要です。
出典:国税庁|相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(取得費加算)
国税庁|土地や建物を売ったとき(譲渡所得)
国税庁|長期譲渡所得の税額計算
空室のまま保有し続けるコストとリスク
「結論が出るまで置いておこう」と考えて、そのままにしている方もいらっしゃいます。しかしマンションは、持ち続けること自体に費用がかかります。
毎月の管理費と修繕積立金は、住んでいなくても発生します。加えて、固定資産税と都市計画税が毎年課されます。誰も使っていない住戸に、年間を通じて相応の金額が出ていく計算です。
さらに、換気されない住戸は傷みが進みます。水回りの封水が切れて臭いが上がる、湿気でカビが広がるといった劣化は、放置期間に比例して進行します。売却時の印象にも直結します。
総務省の住宅・土地統計調査でも、空き家は増加傾向にあることが示されています。相続を機に使われなくなった住戸が積み上がっているのが実情です。
判断を先送りするほど、支出は積み上がり、建物の状態も悪くなります。売らないという結論であっても、賃貸に出すのか、誰かが住むのかを早めに決めておくことが負担を抑えることにつながります。
出典:総務省統計局|住宅・土地統計調査
国土交通省|住宅関連
マーキュリーが選ばれる4つの理由|あらゆる不動産を価値ある未来へ
相続したマンションの売却は、登記・遺産分割・管理組合との調整が絡みます。手続きごと引き受けられる相手を選ぶことで、負担は大きく変わります。
① 権利調整に対応
相続人が複数いる、すでに共有名義になっている、連絡の取れない相続人がいるといった状態でもご相談いただけます。権利関係を解きほぐしたうえで買い取ります。
② 再建築不可・訳あり物件の再生
旧耐震のマンション、管理状態に問題のある物件、事故のあった住戸も対象です。一般の市場で敬遠される条件でも、再生を前提に評価いたします。
③ 相続対策をワンストップで
相続登記が済んでいない段階からご相談いただけます。司法書士や税理士と連携し、戸籍の収集から登記、売却までを一括して進められます。「何から手をつければよいか分からない」という状態で構いません。
④ 直接買取で仲介手数料ゼロ・査定額がそのまま手取り
買主を探すのではなく、当社が直接買い取ります。仲介手数料はかからず、訪問査定で提示した金額がそのまま手取り額になります。金額が確定するため、遺産分割の話し合いも進めやすくなります。
相続したマンションの売却に関するよくある質問
相続したマンションについて、お客様からよくいただくご質問をまとめました。
相続登記が済んでいませんが相談できますか
その段階からご相談いただけます。司法書士と連携して登記を進めながら、並行して売却の準備を整えられます。査定だけ先に受けることも可能です。
相続人の一人が売却に反対しています
共有となる不動産は、原則として全員の合意がなければ売却できません。現金化してから分けるほうがまとまりやすい場合もあるため、話し合いの整理からご相談ください。
管理費や修繕積立金の滞納があります
滞納があっても売却は可能です。滞納分は次の所有者へ引き継がれる仕組みのため査定額には影響しますが、そのままお伝えいただければ織り込んで評価いたします。
賃貸中のマンションを相続しましたが売れますか
売却できます。賃貸借契約と敷金の返還義務は買主へ引き継がれますので、入居者に退去していただく必要はありません。
相続してすぐ売ると税金が高くなりませんか
所有期間は亡くなった方の取得日を引き継ぐため、すぐに売っても短期譲渡所得になるとは限りません。むしろ取得費加算の特例には期限があり、早めの売却が有利になる場合もあります。
まとめ|マーキュリーへご相談ください
相続したマンションは、名義を移してからでなければ売却できません。ただし、登記の準備と売却の準備は並行して進められます。
- ●相続登記を済ませなければ売買契約にも決済にも進めない
- ●相続登記は2024年4月1日から義務化。相続を知った日から3年以内の申請が必要
- ●共有名義での分割は問題の先送りになりやすい。換価分割が選ばれることが多い
- ●管理費・修繕積立金は空室でも発生し、滞納分は買主へ引き継がれる
- ●所有期間は亡くなった方の取得日を引き継ぐ。取得費加算の特例には3年10か月の期限がある
名義が親のままのマンション、管理費が滞納になっている住戸、相続人が多く話がまとまらない物件も、マーキュリーは直接買取で承ります。「まず今いくらになるのか知りたい」という段階でも構いません。査定は無料で、ご相談だけでも歓迎いたします。





