「会社で所有している事務所ビルを手放したい」「相続した一棟ビルの老朽化が進み、テナント対応にも疲れてきた」。事業用のビルや一棟ビルの売却は、住宅の売却とは確認すべきことが大きく異なります。
ビルの価格は、主に賃料収入などの収益性と、建物の状態によって決まります。さらに、法人が所有している場合は社内の意思決定や税務、テナントが入居している場合は賃貸借契約の引き継ぎなど、事業用不動産ならではの論点がいくつもあります。
この記事では、ビル売却の特徴、価格の決まり方、法人所有のビルを売るときの注意点、テナント付きのまま売る方法、建物の確認ポイント、売却の流れと準備書類、そして買取という選択肢までを順に整理します。
論点を先に整理しておけば、売却の方針を決めやすくなり、関係者との調整も進めやすくなります。
ビル売却の特徴|住宅の売却と何が違うのか
ビルの売却がマイホームの売却と大きく違うのは、買い手の多くが「投資」や「事業」の目的で検討する点です。買い手は、住み心地よりも、どれだけ安定した収益を生むか、今後どれだけの修繕費がかかるかを重視します。
また、取引の金額が大きくなりやすく、買い手は法人や投資家が中心になります。融資の審査や社内の決裁に時間がかかるため、条件の交渉から決済までが長引くこともあります。
テナントが入居している場合は、賃貸借契約の内容や賃料の入金状況、敷金の額なども取引条件に直結します。売主側でも、これらの情報を整理して開示する準備が必要です。
| 項目 | 住宅の売却 | ビルの売却 |
|---|---|---|
| 主な買い手 | 自宅を探す個人 | 法人・投資家 |
| 価格の決め手 | 立地・広さ・建物の状態 | 収益性・建物の状態・遵法性 |
| 確認される資料 | 登記・図面・修繕履歴 | 加えて賃貸借契約・収支・修繕計画 |
| 入居者 | 原則として空き家で引き渡す | テナント付きのまま売ることが多い |
たとえば、駅前の5階建て事務所ビルでも、満室で賃料が安定していれば評価されやすい一方、空室が多く大規模修繕が迫っていれば、買い手は修繕費を見込んで価格を検討します。
ビルの価格の決まり方|収益性と建物の状態で決まる
ビルの価格は、住宅のように周辺の取引事例だけで決めるのではなく、そのビルがどれだけの収益を生むかという観点から検討されるのが一般的です。不動産の鑑定評価でも、収益に着目する収益還元法が、原価法や取引事例比較法と並ぶ手法の一つとされています。
収益性を見るときは、満室時の賃料ではなく、実際の賃料収入から管理費や修繕費、固定資産税などの経費を差し引いた実質的な収益が重視されます。空室の多さや賃料の滞納、テナントの退去予定も、価格に影響します。
建物については、築年数、構造、設備の更新状況、外壁や屋上防水の状態などが確認されます。参考までに、税法上の耐用年数は、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の事務所用で50年です。ただし、これは減価償却のための年数で、建物の寿命そのものではありません。
| 価格に影響する要素 | 見られる内容 |
|---|---|
| 賃料収入 | 現在の賃料・入居率・滞納の有無 |
| 経費 | 管理費・修繕費・固定資産税など |
| テナント | 業種・契約期間・退去予定 |
| 建物 | 築年数・構造・設備・修繕履歴 |
| 立地 | 駅からの距離・周辺の需要 |
たとえば、築40年の鉄筋コンクリート造ビルでも、立地がよく修繕が行き届いていれば、建物を活かした再生や建て替え用地としての需要が見込めます。
出典:国土交通省|法令・不動産鑑定評価基準等
国税庁|主な減価償却資産の耐用年数表
法人所有のビルを売るときの論点|社内の決議・税務・消費税
法人が所有するビルを売る場合は、個人の売却にはない手続きや税務の論点があります。早い段階で顧問税理士や司法書士と方針を共有しておくと安心です。
取締役会の決議が必要になる場合
会社法では、取締役会設置会社の取締役会は「重要な財産の処分及び譲受け」の決定を取締役に委任できないと定めています。会社の規模に比べて大きな資産であるビルの売却は、取締役会での決議が必要になることが多いと考えておきましょう。
また、取締役が自分や第三者のために会社と取引をする場合は、取締役会(取締役会がない会社は株主総会)で重要な事実を開示し、承認を受けなければなりません。たとえば、会社のビルを社長個人や親族の会社に売るケースでは、この手続きが必要です。
売却益の税金と消費税
個人の不動産売却では、譲渡所得を他の所得と分けて計算します。一方、法人の場合は、売却益がその事業年度の法人の損益に含まれるため、本業の損益とあわせて税負担を検討することになります。
消費税では、土地の譲渡は非課税取引とされています。建物部分の扱いは、売主が消費税の課税事業者かどうかなどで変わるため、売買代金を土地と建物に分ける方法も含めて税理士に確認しましょう。
出典:e-Gov法令検索|会社法
国税庁|非課税となる取引(消費税)
テナント付きのまま売る|賃貸人の地位と敷金の承継
ビルの売却では、テナントに退去してもらわず、入居したままの状態で売る「オーナーチェンジ」が一般的です。立ち退きの交渉には時間も費用もかかるため、テナント付きのまま売れることは売主にとって大きなメリットです。
民法では、対抗要件を備えた賃貸借の不動産が譲渡されたときは、賃貸人の地位は買主に移転すると定めています。この移転は、所有権の移転登記をしなければテナントに対抗できません。また、賃貸人の地位が移転したときは、敷金の返還債務も買主が引き継ぎます。
さらに民法は、賃貸人の地位は、テナントの承諾がなくても売主と買主の合意で移転できるとしています。とはいえ、実務では賃料の振込先の変更などがあるため、決済後にテナントへ通知するのが通例です。
| 項目 | 売却後の扱い |
|---|---|
| 賃貸人の地位 | 買主に移転する(登記が対抗要件) |
| 敷金の返還債務 | 買主が承継する |
| テナントの承諾 | 売主と買主の合意で移転でき、承諾は不要 |
| 賃料の精算 | 決済日を基準に日割りで精算するのが一般的 |
敷金の返還債務を買主が引き継ぐため、実務では売買代金と敷金相当額を相殺するなどの方法で精算します。たとえば、預かり敷金の合計が600万円のビルなら、その額を売買代金から差し引いて決済する形がよく見られます。
出典:e-Gov法令検索|民法
建物の状態と遵法性の確認|売却前に整理したいこと
ビルの買い手は、購入後にどれだけの費用がかかるか、そのまま使い続けられる建物かを慎重に確認します。売却前に建物の状態を整理しておくと、買い手からの質問にすばやく答えられ、交渉もスムーズになります。
修繕履歴と設備の状態
外壁、屋上防水、エレベーター、空調、給排水設備などは、更新の時期によって大きな費用がかかります。いつ、どの工事をしたのかを記録した修繕履歴があれば、買い手は今後の費用を見込みやすくなります。
遵法性の確認
建築確認や完了検査の書類、増改築や用途変更の有無も確認されます。テナントの入れ替わりで用途が変わっている場合や、増築部分がある場合は、法令に適合しているかが問われます。遵法性に課題があると融資を受けにくく、買い手が限られる要因になります。
境界と権利関係
一棟ビルの敷地も、隣地との境界が確定しているかが確認されます。借地上のビルや共有名義のビルは、地主や共有者との調整が必要になる場合があります。
たとえば、検査済証が見つからない古いビルは、仲介では融資を使う買い手から敬遠されることがあります。こうしたビルは、現況のまま評価できる会社への相談も選択肢です。
ビル売却の流れと準備する資料
ビルの売却は、資料の準備から決済まで、住宅よりも多くの工程を踏むのが一般的です。全体の流れと必要な資料を先に把握しておくと、社内の決裁やテナント対応の段取りが立てやすくなります。
| ステップ | 主な内容 |
|---|---|
| 1. 方針の決定 | 売却の目的・時期、法人なら社内決裁の段取りを決める |
| 2. 資料の準備 | 登記・図面・賃貸借契約・収支資料などをそろえる |
| 3. 査定 | 収益性と建物の状態をもとに価格を確認する |
| 4. 条件交渉・契約 | 価格・引き渡し時期・敷金や賃料の精算方法を決める |
| 5. 決済・引き渡し | 代金の受領、所有権移転登記、テナントへの通知 |
| 準備する資料 | 主な内容 |
|---|---|
| 登記事項証明書・公図・測量図 | 所有者・面積・境界 |
| 建築確認・検査済証・図面 | 遵法性・建物の仕様 |
| 賃貸借契約書・レントロール | テナントごとの賃料・敷金・契約期間 |
| 収支の資料 | 賃料収入・管理費・修繕費・固定資産税 |
| 修繕履歴 | 過去の工事の時期と内容 |
資料がすべてそろっていなくても、査定の相談は始められます。たとえば、相続したビルで賃貸借契約書が一部見つからない場合でも、賃料の入金記録などから状況を確認していくことができます。
買取という選択肢|仲介との違いと向いているケース
ビルを売る方法には、不動産会社に買い手を探してもらう仲介と、不動産会社が自ら買い取る直接買取があります。それぞれの特徴を理解したうえで、ビルの状態や売主の事情に合った方法を選びましょう。
仲介は、広く買い手を募るため、条件のよいビルであれば希望に近い価格を目指せる一方、買い手の融資や社内決裁に時間がかかり、売却の時期が読みにくい面があります。
直接買取では、訪問査定で提示された金額がそのまま買取価格となり、手取り額になります。仲介手数料はかからず、買い手を探す期間もありません。空室が多いビル、修繕が必要なビル、遵法性や権利関係に課題があるビルでも、現況のまま相談できるのが一般的です。
| 項目 | 仲介 | 直接買取 |
|---|---|---|
| 買い手 | 法人・投資家など | 不動産会社 |
| 売却までの期間 | 買い手の融資・決裁しだいで読みにくい | 数週間程度が目安 |
| 手取りの考え方 | 成約価格から仲介手数料などを差し引く | 提示された査定額がそのまま手取り |
| 建物の状態 | 修繕や資料の整備を求められやすい | 現況のまま相談できる |
| 情報の広がり | 広く買い手を募る | 取引先が限られ、情報が広がりにくい |
たとえば、決算期までに売却を終えたい法人や、テナントに知られずに売却を進めたいオーナーは、買取を選ぶことがあります。条件を確かめずに契約を急がず、提示額の根拠を書面で確認したうえで判断しましょう。
ビル売却についてよくある質問
ビルの売却について、よく寄せられる質問にお答えします。売却の方針を決める前の確認にお役立てください。
テナントが入ったままでもビルは売れますか
売れます。民法では、対抗要件を備えた賃貸借の不動産を売った場合、賃貸人の地位は買主に移転すると定めています。テナントの承諾は不要で、敷金の返還債務も買主が引き継ぎます。
法人のビルを売るときに必要な社内手続きはありますか
取締役会設置会社では、重要な財産の処分は取締役会で決定する必要があります。会社の資産のなかでビルが占める割合が大きい場合は、取締役会の決議を経て売却を進めるのが一般的です。
古いビルでも値段は付きますか
立地や土地の条件によっては、建物を再生して活用する、あるいは建て替え用地として評価するなどの方法で値段が付くことがあります。築年数だけで判断せず、査定で確認しましょう。
空室が多いビルでも買い取ってもらえますか
買取であれば、空室が多いビルでも相談できます。収益性が低い状態でも、立地や活用の方法を踏まえて評価されるため、まずは現状の賃料や空室の状況を伝えて査定を受けるのがおすすめです。
マーキュリーが選ばれる4つの理由|あらゆる不動産を価値ある未来へ
テナントや権利関係、建物の状態など、確認すべき論点が多いビルほど、事情を読み解いて取引を前に進める力が求められます。マーキュリーが多くの方に選ばれている理由をご紹介します。
① 権利調整に対応
借地権・底地・共有持分など、権利関係が複雑な物件の取扱い実績が豊富です。地主や共有者との交渉、境界の調整まで自社で一貫して対応し、売主の負担を最小限に抑えて取引を前に進めます。
② 再建築不可・訳あり物件の再生
再建築不可・違法建築・傾斜地・狭小地・ゴミ屋敷状態など、活用が難しい物件も自社で再生して価値を生み出します。不動産開発事業を手がけており、買取後の活用・再販まで自社で完結できる体制です。
③ 相続対策をワンストップで
相続税の納税資金の確保、遺産分割、共有名義の整理など、単なる売却にとどまらないサポートが可能です。税理士や司法書士との連携により、税務・登記・売却を一括で進められます。
④ 直接買取で仲介手数料ゼロ・査定額がそのまま手取り
自社で直接買い取るため、仲介手数料がかかりません。査定額がそのまま買取金額として確定するため、資金計画が立てやすくなります。契約不適合責任も原則免責のため、引渡し後の心配がありません。
まとめ|マーキュリーへご相談ください
ビルの売却では、収益性と建物の状態が価格を左右し、法人所有やテナントの入居といった事業用不動産ならではの論点を整理することが欠かせません。
- ●ビルの買い手は法人・投資家が中心で、収益性と今後の修繕費が重視される
- ●価格は実質的な賃料収入と建物の状態、遵法性をもとに検討される
- ●法人所有のビルは、取締役会の決議や税務・消費税の扱いを確認する
- ●テナント付きで売ると、賃貸人の地位と敷金の返還債務は買主に引き継がれる
- ●買取なら提示額がそのまま手取りになり、現況のまま相談できる
空室の多いビル、老朽化が進んだビル、借地上や共有名義のビルも、マーキュリーは直接買取で承ります。法人の資産整理や相続したビルの売却に迷っている方は、お気軽にご相談ください。査定は無料で、ご相談だけでも歓迎いたします。





