相続した実家などを誰も住まないまま放置していると、「空家対策特別措置法」の対象になる可能性があります。
空家対策特別措置法は、適切に管理されていない空き家によって、倒壊・衛生・景観・防犯などの問題が発生することを防ぐために設けられた法律です。
特に注意したいのは、2023年12月13日に施行された改正法によって、従来の「特定空家等」に加え、その前段階にあたる「管理不全空家等」が新設されたことです。
管理状態が悪化し、市区町村から勧告を受けると、特定空家等に認定される前でも、土地に適用されている固定資産税等の住宅用地特例が受けられなくなることがあります。
さらに状態が悪化して特定空家等となり、命令にも従わない場合には、過料や行政代執行による建物の除却などにつながる可能性があります。
この記事では、空家対策特別措置法の仕組み、管理不全空家等と特定空家等の違い、固定資産税への影響、空き家を放置するリスク、所有者が取るべき対応までわかりやすく解説します。
空家対策特別措置法とは?
一般に「空家対策特別措置法」や「空家法」と呼ばれている法律の正式名称は、「空家等対策の推進に関する特別措置法」です。
適切な管理が行われていない空き家が、防災・衛生・景観などの面で地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼすことを防ぎ、あわせて空き家の活用を促進することを目的としています。
法律は2015年5月26日に全面施行され、その後、空き家の増加や管理不全への対応を強化するため、2023年に大きな改正が行われました。
現在は、危険な状態まで悪化した「特定空家等」だけではなく、その一歩手前である「管理不全空家等」に対しても、市区町村が指導・勧告を行える仕組みになっています。
法律の内容については、e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」でも確認できます。
「空家等」とはどのような建物?
空家法では、「空家等」を、建築物やそれに附属する工作物で、居住その他の使用がされていないことが常態となっているものと、その敷地として定義しています。
敷地には、立木など土地に定着するものも含まれます。
ただし、国や地方公共団体が所有・管理しているものは対象外です。
つまり、単に数週間旅行で家を空けているというだけで直ちに「空家等」となるわけではなく、居住や使用がされていない状態が常態化しているかがポイントになります。
空き家は「管理不全空家等」と「特定空家等」に注意
現在の空家法では、管理状態が悪い空き家について、大きく次の段階を意識する必要があります。
| 区分 | 状態 |
|---|---|
| 空家等 | 居住その他の使用がされていないことが常態となっている建物とその敷地 |
| 管理不全空家等 | 管理が不十分で、そのまま放置すると特定空家等になるおそれがある状態 |
| 特定空家等 | 倒壊・衛生・景観・周辺環境などの面で放置することが不適切な状態 |
2023年の法改正によって「管理不全空家等」が新たに設けられたことで、危険な状態になる前の段階から行政が対応できるようになりました。
管理不全空家等とは?
管理不全空家等とは、適切な管理がされていないため、そのまま放置すれば特定空家等になるおそれがある空き家です。
例えば、次のような状態が続いている場合は注意が必要です。
- 屋根や外壁の一部が破損している
- 雨どいや外装材などが落下するおそれがある
- 庭木や雑草が伸び放題になっている
- ごみなどが放置されている
- 窓や扉が壊れたままになっている
- 害虫や動物などが発生している
市区町村長は、管理不全空家等の所有者等に対し、状態を改善するための指導を行うことができます。
それでも改善されず、特定空家等になるおそれが大きいと判断された場合には、修繕や立木の伐採など具体的な措置を勧告されることがあります。
特定空家等とは?
特定空家等とは、通常の空き家よりも管理状態が悪化し、周辺への影響が大きくなっている空き家です。
空家法では、主に次のような状態が対象とされています。
- そのまま放置すると倒壊など、著しく保安上危険となるおそれがある状態
- そのまま放置すると著しく衛生上有害となるおそれがある状態
- 適切な管理がされておらず、著しく景観を損なっている状態
- その他、周辺の生活環境を守るために放置することが不適切な状態
例えば、建物が大きく傾いている、屋根や外壁が落下する危険がある、ごみや害虫によって衛生上の問題が生じている、庭木が道路や隣地へ大きくはみ出しているなどのケースが考えられます。
管理不全空家等と特定空家等の違い
大きな違いは、空き家の状態がどこまで悪化しているかと、行政が行える措置です。
| 比較 | 管理不全空家等 | 特定空家等 |
|---|---|---|
| 状態 | 放置すると特定空家等になるおそれがある | すでに周辺へ著しい悪影響を及ぼすなどの状態 |
| 行政からの指導 | あり | あり |
| 勧告 | あり | あり |
| 命令 | 原則なし | あり |
| 行政代執行 | 原則なし | 条件を満たせばあり |
| 住宅用地特例 | 勧告を受けると対象外 | 勧告を受けると対象外 |
特定空家等に認定されるとどうなる?
特定空家等に該当すると、市区町村から段階的に改善を求められることがあります。
1.助言・指導
まず、建物の修繕、除却、立木の伐採など、周辺環境を守るために必要な措置を取るよう助言や指導を受けることがあります。
2.勧告
助言・指導を受けても改善されない場合、市区町村から具体的な改善措置を行うよう勧告を受けることがあります。
この「勧告」は、固定資産税等にも影響する重要な段階です。
3.命令
特定空家等について勧告を受けても改善されない場合、一定の手続きを経て、市区町村長から措置を行うよう命令を受けることがあります。
命令に違反した場合には、50万円以下の過料が科される可能性があります。
4.行政代執行
命令を受けても所有者が必要な措置を行わない場合などには、行政が所有者に代わって建物を除却するなどの行政代執行が行われることがあります。
行政が撤去してくれるから費用を負担しなくてよいわけではありません。
行政代執行にかかった費用は、原則として所有者等から徴収されます。
2023年改正で「緊急代執行」も可能に
2023年の改正では、特定空家等について、緊急時に対応しやすくする制度も整備されました。
例えば、倒壊のおそれが高まり、人の生命や身体などに重大な危険が迫っていて、通常の命令などの手続きを行う時間がない場合には、一定の要件のもとで緊急代執行が行われることがあります。
災害や急速な建物の劣化などによって危険性が高まった場合には、所有者が想定するより早く行政による対応が行われる可能性があります。
管理不全空家・特定空家の勧告を受けると固定資産税はどうなる?
空き家を所有している方にとって、特に注意したいのが固定資産税等の住宅用地特例です。
通常、住宅が建っている土地には「住宅用地特例」が適用され、固定資産税の課税標準額が軽減されています。
| 住宅用地 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地 200㎡以下の部分 |
価格の1/6 | 価格の1/3 |
| 一般住宅用地 200㎡を超える部分 |
価格の1/3 | 価格の2/3 |
しかし、管理不全空家等または特定空家等について市区町村から勧告を受けると、その敷地は住宅用地特例の対象外になります。
そのため、これまで住宅用地特例によって軽減されていた土地の固定資産税等が大きく増える可能性があります。
ただし、「特定空家等に認定された瞬間に固定資産税が6倍になる」と単純に考えるのは正確ではありません。
住宅用地特例が外れるのは原則として勧告を受けた場合であり、実際の税額は土地の評価額や負担調整措置などによって異なります。
詳しくは、国土交通省「空家法とは」をご確認ください。
空き家を放置する7つのリスク
1.建物が倒壊する危険がある
人が住まなくなった住宅は、換気や修繕が行われにくくなり、劣化が進みやすくなります。
屋根や柱などが傷んだ状態を放置すると、地震や台風などをきっかけに倒壊する危険があります。
2.屋根材・外壁などが落下する
瓦や外壁材などが劣化すると、敷地外や道路へ落下し、通行人や隣家へ被害を与える可能性があります。
3.害虫・害獣や悪臭が発生する
ごみや雑草などが放置されると、害虫やねずみなどが発生しやすくなります。
動物の糞尿やごみの腐敗によって、悪臭などの衛生問題につながることもあります。
4.不法侵入や防犯上の問題が生じる
窓ガラスや扉が壊れたままになっている空き家では、不法侵入される危険性があります。
放火や犯罪などのリスクが高まり、周辺住民とのトラブルにつながることも考えられます。
5.庭木や雑草が隣地・道路へ越境する
庭木や雑草を管理しないままにすると、隣地や道路へ枝が伸び、通行を妨げたり近隣の建物へ被害を与えたりする可能性があります。
6.資産価値が下がる可能性がある
建物の劣化が進むほど、修繕や解体に必要な費用が増えていきます。
その結果、売却しようとしたときに買主が見つかりにくくなったり、査定価格が低くなったりする可能性があります。
7.固定資産税等の住宅用地特例が外れる可能性がある
管理状態が悪化して管理不全空家等または特定空家等となり、市区町村から勧告を受けると、土地の住宅用地特例が適用されなくなる可能性があります。
全国の空き家は900万戸を超えている
空き家問題は、地方だけの問題ではありません。
総務省の2023年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家数は約900万2千戸となり、過去最多を更新しました。
住宅総数に占める空き家の割合も13.8%で過去最高となっています。
さらに、賃貸用・売却用・別荘などの二次的住宅を除いた空き家も約385万6千戸に達しています。
以前は「地方の過疎地域の問題」というイメージもありましたが、現在では東京を含む都市部でも相続などをきっかけに空き家が発生しています。
最新の統計については、総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」で確認できます。
空家対策特別措置法の施行当時の資料
以下は、空家対策特別措置法が施行された当時に空き家問題や制度を紹介した資料です。
現在は2023年の法改正によって「管理不全空家等」の制度が追加されるなど内容が変わっているため、当時の資料としてご覧ください。




空き家を放置しないための対処法
定期的に管理する
すぐに売却・活用する予定がない場合でも、定期的に建物の状態を確認しましょう。
- 室内の換気
- 通水
- 雨漏りの確認
- 屋根・外壁の確認
- 庭木・雑草の手入れ
- 郵便物の整理
- 害虫・害獣の確認
遠方に住んでいて自分で管理できない場合は、空き家管理サービスを利用する方法もあります。
賃貸などで活用する
建物の状態や立地によっては、賃貸住宅などとして活用できる場合があります。
ただし、修繕費用や賃貸需要などを確認し、収支を考えたうえで判断する必要があります。
建物を解体する
老朽化が進み、修繕や活用が難しい場合には、建物を解体する方法もあります。
ただし、住宅を解体すると住宅用地特例が適用されなくなり、翌年度以降の土地の固定資産税等が増える場合があります。
解体費用だけでなく、解体後の土地利用や売却まで含めて検討しましょう。
空き家のまま売却する
今後利用する予定がない場合は、管理状態が悪化する前に売却することも一つの方法です。
老朽化した空き家であっても、土地としての需要がある場合や、不動産会社による買取であれば現況のまま売却できることがあります。
「特定空家等になるほど傷んでから売る」のではなく、建物の状態が比較的良いうちに査定を受けておくと選択肢を残しやすくなります。
空家対策特別措置法に関するよくある質問
空家対策特別措置法とはどのような法律ですか?
適切に管理されていない空き家による倒壊・衛生・景観などの問題を防ぎ、空き家の管理や活用を促進するための法律です。正式名称は「空家等対策の推進に関する特別措置法」です。
管理不全空家等とは何ですか?
適切な管理がされておらず、そのまま放置すると特定空家等になるおそれがある空き家です。2023年の法改正で制度が新設され、市区町村は所有者等へ指導・勧告を行えるようになりました。
特定空家等とはどのような空き家ですか?
倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある状態、著しく衛生上有害となるおそれがある状態、著しく景観を損なっている状態など、周辺環境を守るために放置することが不適切と認められる空き家です。
特定空家に認定されると固定資産税が6倍になりますか?
特定空家等に認定されただけで直ちに固定資産税が6倍になるわけではありません。管理不全空家等または特定空家等について市区町村から勧告を受けると、住宅用地特例の対象外となります。実際の税額は土地の評価額や負担調整措置などによって異なります。
管理不全空家でも固定資産税の特例が外れますか?
はい。管理不全空家等について市区町村から指導を受けても改善せず、勧告を受けた場合には、その敷地は固定資産税等の住宅用地特例の対象外になります。
特定空家を放置すると行政が勝手に解体することがありますか?
特定空家等について必要な措置を命じられても所有者が対応しない場合などには、一定の手続きを経て行政代執行が行われることがあります。代執行にかかった費用は原則として所有者等に請求されます。
相続した空き家を使う予定がない場合はどうすればよいですか?
今後利用する予定がない場合は、定期的に管理するほか、賃貸・売却・解体などを検討します。放置期間が長くなるほど建物が劣化し、修繕費や解体費が増える可能性があるため、早めに今後の方針を決めることが重要です。
まとめ|空き家は特定空家になる前に対策する
空家対策特別措置法は、管理されていない空き家による倒壊・衛生・景観などの問題を防ぎ、空き家の適切な管理と活用を促すための法律です。
以前は、状態が大きく悪化した「特定空家等」への対応が中心でしたが、2023年の改正によって、その前段階となる「管理不全空家等」に対しても市区町村が指導・勧告できるようになりました。
管理不全空家等や特定空家等として勧告を受けると、固定資産税等の住宅用地特例が適用されなくなる可能性があります。
さらに特定空家等の状態を放置し、命令にも従わない場合には、過料や行政代執行につながることもあります。
空き家は、使わなくなった直後から今後の管理・活用・売却について考えておくことが大切です。
マーキュリーでは、相続した空き家や老朽化した戸建て、長期間使用していない不動産などについても査定・買取を行っています。
「遠方にあり管理できない」「老朽化しているため一般の買主が見つかるか不安」「解体してから売るべきか、そのまま売るべきか分からない」といった場合も、建物の状態や土地の市場性を確認したうえで売却方法を検討しましょう。





