「広い土地の一部だけを売って、残りは自宅として使い続けたい」「相続した土地を兄弟で分けてから、自分の分だけ売りたい」。土地の一部を手放したいと考えたときに必要になるのが、分筆という手続きです。
分筆とは、登記上1つの土地(一筆)を、複数の土地に分けることです。分筆の登記をすれば、分けた土地ごとに地番が付き、それぞれを別々に売却できるようになります。
一方で、分筆には測量や隣地との境界確認が欠かせず、時間も費用もかかります。分け方によっては、残った土地に家を建てられなくなるなど、思わぬ不利益が生じることもあります。
この記事では、分筆の手続きの流れと期間を左右する要素、かかる費用、建築基準法上の注意点、分筆して一部を売るかどうかの判断軸、そして分筆せずに買取で売るという選択肢までを順に整理します。
分筆とは|1つの土地を登記上で複数に分ける手続き
分筆とは、登記記録上で一筆となっている土地を、二筆以上に分けることです。分筆の登記をすると、もとの土地は新しい地番の付いた複数の土地となり、それぞれに登記記録が作られます。
不動産登記法第39条では、分筆の登記は、表題部所有者または所有権の登記名義人以外の者は申請できないとされています。つまり、土地を買いたい人や不動産会社が、所有者に代わって勝手に分筆することはできません。
なお、一筆の土地の一部が別の地目になったときなどは、所有者の申請がなくても、登記官が職権で分筆の登記をすることがあります。ただ、売却のために分けるケースでは、所有者自身が申請するのが基本です。
たとえば、120坪の土地のうち道路側の40坪だけを売りたい場合、40坪と80坪に分筆すれば、40坪の土地だけを買主に引き渡すことができます。分筆しないままでは、一筆の土地の一部だけを登記上で移すことはできません。
分筆の手続きの流れと期間を左右する要素
分筆の手続きは、一般に土地家屋調査士に依頼して進めます。測量や境界の確認には専門的な知識が必要なため、自分だけで進めるのは現実的ではありません。
大まかな流れは、資料の調査、現地の測量、隣地所有者との境界の確認、分筆の案の作成、そして法務局への分筆登記の申請です。登記が完了すると、分筆後の土地ごとに登記事項証明書を取得できるようになります。
期間は、土地の状況によって大きく変わります。とくに時間がかかりやすいのが、隣地所有者との境界の確認です。隣地の所有者が遠方に住んでいる、相続で所有者が分からない、境界について意見が食い違っているといった事情があると、手続きは長引きます。
| 手順 | 主な内容 | 期間を左右する要素 |
|---|---|---|
| ① 資料調査 | 登記記録・公図・地積測量図などを確認する | 過去の測量図があるかどうか |
| ② 現地測量 | 土地の形状や面積、境界標を確認する | 土地の広さ・形状、境界標の有無 |
| ③ 境界確認 | 隣地所有者の立会いのもとで境界を確認する | 隣地所有者の数、連絡の取りやすさ |
| ④ 分筆案の作成 | 売る部分と残す部分の線を決める | 接道や建築の条件を満たせるか |
| ⑤ 登記申請 | 法務局に分筆登記を申請する | 申請内容の補正の有無 |
境界について隣地と話し合いがまとまらない場合には、法務省の筆界特定制度を使う方法があります。筆界特定登記官が、外部専門家である筆界調査委員の意見をふまえて、もともとの筆界の位置を明らかにする制度です。裁判をしなくても筆界をめぐる問題の解決を図ることができます。
出典:法務省|筆界特定制度
分筆にかかる費用|登録免許税と専門家への報酬
分筆にかかる費用は、大きく分けて登記の税金と、土地家屋調査士などへの報酬です。売却の手取りを考えるうえで、あらかじめ把握しておきましょう。
登録免許税
所有権の登記がある土地の分筆の登記には、登録免許税がかかります。登録免許税法の別表では、土地の分筆による登記事項の変更の登記について、分筆後の不動産の個数1個につき1,000円とされています。たとえば、1つの土地を2つに分ければ2,000円です。
測量・調査の費用
測量や境界確認、登記申請の代理にかかる土地家屋調査士の報酬は、土地の広さや形状、隣地の数などによって変わり、公的な目安は示されていません。依頼する前に見積りを取り、何が含まれているかを確認しましょう。
筆界特定を使う場合の費用
筆界特定の申請手数料は、土地の価格によって決まります。法務省の案内では、申請人の土地と隣の土地の価格の合計額が4,000万円の場合、申請手数料は8,000円とされています。手続きの中で測量が必要になると、別途その費用を負担します。
| 費用の項目 | 金額の考え方 | 確認先 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 分筆後の土地1個につき1,000円 | 登録免許税法 |
| 土地家屋調査士の報酬 | 土地の状況で変わる(公的な目安なし) | 依頼先の見積り |
| 筆界特定の申請手数料 | 土地の価格で決まる(合計4,000万円なら8,000円) | 法務局 |
| 筆界特定での測量費 | 測量が必要な場合に負担 | 法務局 |
出典:e-Gov法令検索|登録免許税法
法務省|筆界特定制度
分筆するときの注意点|接道・敷地面積・抵当権
分筆は、線の引き方ひとつで土地の価値が大きく変わります。売る部分だけでなく、手元に残す土地も含めて、次の点を確認しておくことが大切です。
接道義務を満たせるか
建築基準法第43条では、建築物の敷地は道路に2メートル以上接しなければならないとされています。ここでいう道路は、原則として幅員4メートル以上のものです(第42条)。分け方によって、どちらかの土地が道路に2メートル以上接しなくなると、その土地には原則として建物を建てられなくなります。
敷地面積の最低限度に注意する
用途地域に関する都市計画で建築物の敷地面積の最低限度が定められている地域では、敷地面積はその最低限度以上でなければなりません(第53条の2)。最低限度は200平方メートルを超えない範囲で定められます。小さく分けすぎると、家を建てられない土地になるおそれがあります。
抵当権が付いている土地
住宅ローンなどの抵当権が付いた土地を分筆すると、原則として分筆後のそれぞれの土地に抵当権が残ります。売る部分の抵当権を外すには、抵当権者の承諾などが必要です。ローンが残っている場合は、金融機関に早めに相談しましょう。
たとえば、角地を2つに分けた結果、奥側の土地の間口が2メートルに届かず、再建築ができない土地になってしまったというケースがあります。分筆の線は、建築士や不動産会社の意見も聞いて決めることが大切です。
出典:e-Gov法令検索|建築基準法
e-Gov法令検索|不動産登記法
分筆して一部を売るかどうかの判断軸
分筆して一部を売るのが得策かどうかは、土地の条件と、売却の目的によって変わります。次のような視点で整理してみましょう。
まず考えたいのは、分けたあとの土地がそれぞれ売りやすい形になるかどうかです。道路に十分に接した整った形の土地になれば、買い手は見つかりやすくなります。一方で、旗竿地のような細長い通路のある形になると、評価が下がることがあります。
次に、手間と時間をかけられるかどうかです。分筆には測量や境界確認が必要で、すぐに現金化したい事情がある場合には向かないこともあります。相続税の納付期限など、期限が決まっている場合はとくに注意が必要です。
| 判断の視点 | 分筆して一部を売るのに向くケース | 分筆以外を検討したいケース |
|---|---|---|
| 土地の形 | 分けても両方が道路に十分接する | 分けると一方が接道を満たさない |
| 残す土地の使い道 | 自宅や駐車場として使い続けたい | 残しても使う予定がない |
| 期間 | 時間に余裕がある | 早く現金化したい |
| 境界の状況 | 境界標があり、隣地と争いがない | 境界が不明確・隣地と連絡が取れない |
| 権利関係 | 単独所有で抵当権の整理ができる | 共有・借地・抵当権の整理が難しい |
土地の相場を知りたいときは、国税庁の路線価図や、国土交通省の不動産情報ライブラリで周辺の価格を調べる方法があります。分筆後の形や接道によって価格は変わるため、最終的には個別の査定で確認しましょう。
出典:国税庁|路線価図・評価倍率表
国土交通省|不動産情報ライブラリ
分筆して売ったときの税金
分筆した土地の一部を売って利益が出たときは、譲渡所得として所得税と住民税がかかります。土地の譲渡所得は、給与などほかの所得と分けて計算する分離課税です。
譲渡所得の金額は、収入金額から取得費と譲渡費用を差し引き、さらに特別控除額がある場合はそれを差し引いて計算します。分筆にかかった測量費などが譲渡費用や取得費に含められるかは、個別の状況によって異なるため、税務署や税理士に確認しましょう。
また、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかで、長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれ、税率が変わります。所有期間の数え方は取得の経緯によって異なるため、売却前に確認しておきましょう。
たとえば、親から相続した土地の一部を売る場合、取得費の資料が残っていないことがあります。売却の前に、購入時の契約書などを探しておくと安心です。
分筆せずに売る選択肢|買取という方法
分筆には時間と費用がかかり、境界の問題や接道の条件によっては、思うように進まないこともあります。そうした場合は、分筆せずに土地全体を売るという選択肢も検討しましょう。
一般の買い手にとっては、広すぎる土地や形の悪い土地は使い道が限られ、買い手が付きにくい傾向があります。一方で、土地の活用に慣れた買取会社であれば、土地全体をそのまま買い取り、買取後に自社で分筆や造成を行うことができます。
この方法なら、売主が測量や境界確認の手続きを自ら進める必要はありません。訪問査定で提示された金額がそのまま買取価格となり、手取り額になるため、資金計画も立てやすくなります。
たとえば、相続した広い土地を兄弟で分けて売ろうとしたものの、隣地の所有者と連絡が取れず分筆が進まなかったケースで、土地全体を買取で売却し、代金を分け合うことで解決した例があります。
分筆と土地の売却についてよくある質問
分筆と土地の売却について、よく寄せられる質問にお答えします。手続きを始める前に確認しておきましょう。
分筆の登記は自分で申請できますか
分筆の登記を申請できるのは、表題部所有者または所有権の登記名義人です。ただし、測量や境界の確認、地積測量図の作成には専門的な知識が必要なため、土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。
分筆にはどのくらいの期間がかかりますか
土地の状況によって大きく変わります。とくに隣地所有者との境界確認に時間がかかりやすく、所有者が遠方にいる場合や、境界について意見が分かれている場合は長引くことがあります。
分筆の登録免許税はいくらですか
登録免許税法の別表では、土地の分筆による登記について、分筆後の土地1個につき1,000円とされています。1つの土地を3つに分ければ3,000円です。このほか、土地家屋調査士への報酬がかかります。
隣地との境界が決まらないと分筆できませんか
境界の確認が分筆の前提になるため、話し合いがまとまらないと手続きは進めにくくなります。その場合は、法務局の筆界特定制度を使い、もともとの筆界を明らかにしてもらう方法があります。
分筆しないで土地の一部だけを売ることはできますか
登記上、一筆の土地の一部だけを移すことはできないため、一部を売るには分筆が必要です。分筆が難しい場合は、土地全体を買取会社に売却し、代金を分ける方法も検討できます。
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まとめ|マーキュリーへご相談ください
土地の一部を売るには分筆が必要です。ただし、測量や境界確認に時間がかかり、分け方によっては家を建てられない土地が生まれることもあります。
- ●分筆の登記を申請できるのは、表題部所有者または所有権の登記名義人
- ●期間は隣地との境界確認の状況で大きく変わり、争いがあれば筆界特定制度も使える
- ●登録免許税は分筆後の土地1個につき1,000円で、別途土地家屋調査士の報酬がかかる
- ●分けた土地が道路に2メートル以上接するか、敷地面積の最低限度を満たすかを確認する
- ●分筆が難しいときは、土地全体を買取で売却する方法もある
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