借地権を売却したり、借地上の建物を建て替えたりするときに、地主から「承諾料」の支払いを求められることがあります。
ただ、「承諾料はいくら払えばいいのか」「そもそも必ず支払わなければならないのか」と疑問に思う方も多いでしょう。
承諾料には法律で一律に決められた金額があるわけではありません。借地契約の内容やこれまでの経緯、地主との話し合いによって金額は変わります。
一方、実務上は一定の目安があり、借地権を第三者へ譲渡する際の譲渡承諾料は「借地権価格の10%程度」、建物を建て替える際の承諾料は「更地価格の3~5%程度」といわれることがあります。
この記事では、借地権の承諾料について、種類ごとの相場と計算方法、どのような場合に地主の承諾が必要になるのか、相続・遺贈との違い、地主が承諾してくれない場合の対応まで解説します。
借地権の承諾料とは?
借地権の承諾料とは、借地権者が借地契約に関係する一定の行為を行う際に、地主から承諾を得るために支払う金銭のことです。
代表的なのは、借地権を第三者へ売却するときの「譲渡承諾料」です。
このほかにも、借地上の建物を建て替えるときの「建替え承諾料」、増改築をするときの「増改築承諾料」、建物の構造など借地条件を変更するときの「条件変更承諾料」があります。
| 承諾料の種類 | 主な場面 | 一般的な目安 |
|---|---|---|
| 譲渡承諾料 | 借地権を第三者へ売却・譲渡するとき | 借地権価格の10%程度 |
| 建替え承諾料 | 借地上の建物を建て替えるとき | 更地価格の3~5%程度 |
| 増改築承諾料 | 借地上の建物を増築・改築するとき | 更地価格の1~5%程度が目安とされることがある |
| 条件変更承諾料 | 建物の構造・用途など借地条件を変更するとき | 更地価格の10%程度が目安とされることがある |
ただし、これらはあくまで実務上の目安です。
「譲渡なら必ず10%」「建替えなら必ず5%」と法律で決まっているわけではありません。
地主が独自の基準を定めている場合もあり、最終的な金額は借地契約書の内容や当事者間の話し合いなどによって決まります。
譲渡承諾料の相場と計算方法
借地権を第三者へ売却・譲渡する際に支払うのが「譲渡承諾料」です。
「名義変更料」「名義書換料」などと呼ばれることもあります。
一般的な目安は、借地権価格の10%程度です。
譲渡承諾料の計算例
例えば、借地権価格が3,000万円だった場合、10%を目安とすると次のようになります。
3,000万円 × 10% = 300万円
この場合、譲渡承諾料の目安は300万円です。
ただし、実際には地主との関係、借地契約の内容、残存期間、土地の立地などによって金額が変わることがあります。
借地権を売却する場合の流れについては、借地権を地主に買い取ってもらう方法とは?流れや注意点を解説も参考にしてください。
建替え承諾料の相場と計算方法
借地上の建物を建て替える場合、契約内容や借地権の種類などによって地主の承諾が必要になることがあります。
その際に地主へ支払う金銭が「建替え承諾料」です。
建替え承諾料は、更地価格の3~5%程度が一つの目安とされています。
建替え承諾料の計算例
例えば、土地を更地として評価した価格が5,000万円だった場合を考えてみます。
3%の場合は、
5,000万円 × 3% = 150万円
5%の場合は、
5,000万円 × 5% = 250万円
となるため、このケースでは150万~250万円程度が一つの目安になります。
ただし、木造住宅から鉄筋コンクリート造へ変更するなど、建物の構造を大きく変える場合には、単なる建替えではなく借地条件の変更として扱われることがあります。
その場合には、建替え承諾料とは別に条件変更に伴う金銭について話し合うこともあります。
増改築承諾料とは?
建物を取り壊して新しく建てる「建替え」とは異なり、既存の建物を増築・改築する場合にも地主の承諾が問題になることがあります。
特に借地契約書に「増改築禁止特約」や「増改築には地主の承諾を要する」といった内容がある場合は、契約書の確認が必要です。
増改築承諾料についても法律上の一律の金額はありません。
実務上は更地価格の数%程度が一つの目安として説明されることがありますが、工事の内容や規模によっても変わります。
地主から増改築の承諾を得られない場合、一定の要件を満たせば、裁判所へ増改築許可の申立てを行える場合があります。
条件変更承諾料が必要になるケース
借地契約では、土地上に建てられる建物について、種類・構造・用途などが定められていることがあります。
例えば、これまで木造住宅だった建物を鉄筋コンクリート造の建物へ変更するようなケースです。
このような場合、建替えだけではなく「借地条件の変更」が問題になることがあります。
条件変更承諾料は更地価格の10%程度が一つの目安として説明されることがありますが、こちらも法律で固定された金額ではありません。
建物の構造や用途を変える予定がある場合は、工事計画を進める前に借地契約書を確認し、地主と条件を整理しておきましょう。
借地権の売却・譲渡では地主の承諾が必要
土地の賃借権を第三者へ譲渡・転貸する場合、民法上、原則として賃貸人である地主の承諾が必要です。
借地権付き建物を売却すると、建物だけでなく、その建物を所有するために利用している土地の賃借権も買主へ移ることになるためです。
地主の承諾を得ずに土地の賃借権を譲渡すると、契約関係で大きな問題になる可能性があります。
そのため借地権付き建物を売却するときは、買主を決めるだけではなく、地主との譲渡条件についても早い段階から確認することが重要です。
相続では原則として承諾料は不要
「親から借地権を相続したら、地主に名義変更料を払わなければならないのでしょうか」という相談もあります。
相続によって借地権を取得する場合は、売買による譲渡とは扱いが異なります。
一般的な相続では、地主の承諾を受ける必要はなく、譲渡承諾料も原則として必要ありません。
ただし、地主との契約当事者が変わることにはなるため、誰が借地権を相続したのかを地主へ連絡しておくとよいでしょう。
借地権の相続について詳しくは、借地権の相続で要注意!相続と遺贈の違いを解説をご覧ください。
遺贈・贈与では地主の承諾が必要になることがある
相続と混同しやすいのが、遺贈や生前贈与です。
遺贈とは、遺言によって財産を特定の人へ与えることです。
贈与は、所有者が生前に財産を他人へ無償で譲ることをいいます。
これらは相続とは法的な性質が異なり、土地賃借権が第三者へ移る場合には地主の承諾が必要になることがあります。
特に、法定相続人ではない人へ借地権付き建物を遺贈する場合などは、相続だから承諾不要と決めつけず、事前に確認することが大切です。
承諾料は誰が払う?
譲渡承諾料は、一般的には借地権を譲渡する借地権者側が地主へ支払います。
例えば借地権付き建物を売却するケースでは、売主である借地権者が承諾料を負担する形が一般的です。
ただし、売買契約で買主と費用負担について別の取り決めを行うこともできます。
売却価格だけを見て手取り額を計算すると、承諾料を差し引いた後に「思っていたより手元に残らなかった」ということもあります。
借地権を売却する場合は、譲渡承諾料を含めた費用をあらかじめ確認しておきましょう。
地主から高額な承諾料を請求されたらどうする?
承諾料は法律で一律に決められていないため、地主から相場より高い金額を提示されることもあります。
その場合、提示された金額をそのまま支払わなければならないとは限りません。
まずは借地契約書に承諾料についてどのような記載があるのか確認しましょう。
あわせて、借地権価格や土地価格から一般的な目安を計算し、「なぜその金額になるのか」を地主へ確認することも大切です。
地主との関係を考えると、最初から金額だけで対立するより、売却理由や買主の情報、今後の借地契約などを含めて話し合った方がまとまりやすい場合があります。
地主が借地権の譲渡を承諾しない場合はどうする?
承諾料の金額以前に、地主から「第三者への売却自体を認めない」と言われることもあります。
この場合、まずは地主が承諾しない理由を確認しましょう。
過去の地代や更新料、買主への不安など、条件を整理すれば話し合いで解決できるケースもあります。
それでも譲渡承諾を得られない場合には、一定の要件のもと、借地借家法第19条に基づき裁判所へ土地賃借権譲渡許可の申立てを行う方法があります。
東京地方裁判所も、地主の承諾を得られない場合に、裁判所が相当と認めれば地主の承諾に代わる許可を出すことができると案内しています。
詳しくは、東京地方裁判所「借地非訟とは」をご確認ください。
借地非訟の具体的な流れや介入権については、借地非訟とは?地主が承諾しないときの手続き・代諾許可・介入権を解説でも詳しく解説しています。
承諾料について地主と話し合うときのポイント
借地契約書を確認する
最初に確認したいのが、現在の借地契約書です。
譲渡、建替え、増改築、建物構造の変更などについて、地主の承諾が必要であることや承諾料について記載されている場合があります。
借地権価格・土地価格を確認する
承諾料について話し合うためには、その計算の基準となる借地権価格や更地価格を把握しておく必要があります。
目安となる価格が分からないまま話し合うと、地主から提示された金額が高いのか低いのか判断できません。
承諾内容を書面に残す
地主から承諾を得られた場合は、口頭だけで終わらせず、承諾内容を書面にしておくことをおすすめします。
譲渡の場合であれば、誰への譲渡を承諾するのか、承諾料はいくらなのか、今後の借地条件に変更があるのかなどを明確にしておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。
借地権の承諾料に関するよくある質問
譲渡承諾料はいくらですか?
一般的には借地権価格の10%程度が一つの目安とされています。
ただし、法律で10%と決められているわけではなく、契約内容や地主との話し合いによって変わります。
建替え承諾料はいくらですか?
更地価格の3~5%程度が一般的な目安として説明されることがあります。
建物の構造変更などを伴う場合は、条件変更について別途話し合いが必要になるケースもあります。
承諾料は法律で決まっていますか?
承諾料の金額そのものについて、法律で「借地権価格の10%」などと一律に定められているわけではありません。
借地契約や地域の慣行、地主との協議などをもとに決まります。
借地権を相続したときに承諾料は必要ですか?
通常の相続であれば、地主の承諾や譲渡承諾料は原則として必要ありません。
ただし、借地権を相続したことについて地主へ連絡しておくことをおすすめします。
遺贈の場合も承諾料は不要ですか?
相続と遺贈では取扱いが異なります。
特に法定相続人以外への遺贈などでは地主の承諾が必要になることがあるため、相続と同じように考えず確認しましょう。
地主が承諾料を受け取ってくれない場合はどうなりますか?
地主が金額の問題ではなく譲渡そのものを認めない場合には、まず理由を確認し、話し合いによる解決を検討します。
それでも承諾が得られない場合、一定の要件を満たせば借地非訟によって裁判所へ地主の承諾に代わる許可を求められることがあります。
まとめ|承諾料は相場だけでなく契約内容と地主との協議で決まる
借地権の承諾料には、譲渡承諾料、建替え承諾料、増改築承諾料、条件変更承諾料などがあります。
譲渡承諾料は借地権価格の10%程度、建替え承諾料は更地価格の3~5%程度が一般的な目安として説明されることがあります。
ただし、これらは法律で一律に決められた金額ではありません。
借地契約書の内容、物件の状況、これまでの地主との関係などによって実際の金額は変わります。
また、相続の場合は地主の承諾や譲渡承諾料が原則不要である一方、売却・贈与・一部の遺贈などでは地主の承諾が必要になる場合があります。
借地権の売却を考えている場合は、売却価格だけではなく、譲渡承諾料を支払った後にどの程度手元に残るのかまで確認しておくことが大切です。
マーキュリーでは、借地権の売却や買取だけでなく、地主との譲渡条件がまとまっていない借地権についてもご相談を承っています。地主との条件調整を含めて売却方法を検討したい場合もご相談ください。





