借地権を売却しようと考えたとき、「自分の借地権はいくらで売れるのか」「借地権割合が60%なら土地価格の60%で売れるのか」と気になる方も多いでしょう。
結論からいうと、借地権の売却価格を「更地価格×借地権割合」だけで決めることはできません。
借地権割合は借地権の価値を考える際の一つの目安になりますが、本来は相続税や贈与税の財産評価などで使用される割合です。
実際の売却価格には、土地そのものの市場価格だけでなく、毎月の地代、地主が求める譲渡承諾料、借地契約の残存期間、建替え条件、地主との関係、買主が住宅ローンを利用できるかなど、さまざまな条件が影響します。
そのため、同じ地域にある同じ広さの借地権でも、契約条件が違えば売却価格が大きく異なることがあります。
この記事では、借地権の売却相場を考える方法、路線価・借地権割合を使った計算例、価格が下がる主な原因、少しでも高く売却するためのポイントまで解説します。
借地権の売却相場に一律の価格はない
借地権付き不動産には、「所有権価格の○%で売れる」といった一律の売却相場はありません。
所有権の土地であれば、周辺の成約事例や土地単価などからある程度価格を比較できます。
一方、借地権は土地そのものではなく「他人の土地を建物所有の目的で利用する権利」であるため、地主との契約条件が価格に大きく影響します。
例えば、同じ5,000万円程度の価値がある土地上の借地権でも、次のような条件が違えば売却価格は変わります。
- 借地権割合
- 毎月の地代
- 借地契約の残存期間
- 更新料の有無・金額
- 譲渡承諾料
- 建替え・増改築の条件
- 土地の形状や接道状況
- 建物の築年数・状態
- 地主との関係
- 買主が住宅ローンを利用できるか
つまり、借地権の売却価格を知るには、土地価格だけでなく「借地契約そのもの」を確認する必要があります。
借地権の売却価格を考える基本的な計算方法
借地権価格を考えるときの出発点として、次の計算式が参考になります。
土地の更地価格 × 借地権割合 = 借地権価格の一つの目安
例えば、更地価格が5,000万円で借地権割合が60%の場合は、
5,000万円 × 60% = 3,000万円
となります。
ただし、この3,000万円は「3,000万円で売却できる」という意味ではありません。
実際の売却では、ここから地代、譲渡承諾料、建物の状態、契約期間などを考慮して市場での価格を判断します。
そのため、「更地価格×借地権割合」は査定の参考値の一つとして考えてください。
借地権割合とは?
借地権割合とは、自用地としての土地価格に対して借地権がどの程度の割合を占めるかを示す割合です。
国税庁が公表する路線価図では、A~Gのアルファベットで借地権割合が表示されています。
| 記号 | 借地権割合 |
|---|---|
| A | 90% |
| B | 80% |
| C | 70% |
| D | 60% |
| E | 50% |
| F | 40% |
| G | 30% |
例えば路線価図に「500D」と記載されていれば、路線価は1㎡あたり50万円、借地権割合はDの60%という意味です。
借地権割合は一般的に土地利用の需要が高い地域ほど高く設定される傾向があります。
現在の路線価や借地権割合については、国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。
路線価から借地権価格を計算する方法
路線価を使えば、借地権の税務上の評価額を概算することができます。
例えば、次の条件で計算してみましょう。
- 路線価:50万円/㎡
- 土地面積:100㎡
- 借地権割合:60%
まず土地の自用地価格を単純計算すると、
50万円 × 100㎡ = 5,000万円
となります。
そこへ借地権割合60%を掛けると、
5,000万円 × 60% = 3,000万円
となります。
ただし、実際の相続税評価では土地の形状や接道状況などに応じた各種補正もあるため、単純に「路線価×面積」で確定するわけではありません。
また、重要なのは、路線価から計算した3,000万円は実際の売却価格ではないという点です。
路線価・借地権割合と実際の売却価格は違う
路線価や借地権割合は、借地権の価値を考えるうえで参考になります。
しかし、国税庁が定める借地権割合は、主に相続税や贈与税の財産評価で使用するものです。
実際に不動産市場でいくらで売れるかを保証する割合ではありません。
例えば、計算上の借地権価格が3,000万円でも、地代が周辺より高い、地主から高額な譲渡承諾料を求められている、建替え条件が厳しいといった場合は、買主から見た価値が下がります。
反対に、駅から近く需要の高い場所にあり、地代が低く、地主との関係も良好で、建替えや譲渡条件が明確であれば評価されやすくなります。
千代田区飯田橋周辺の路線価図
千葉県袖ケ浦市神納周辺の路線価図
借地権の売却相場を左右する7つの要因
借地権の査定では、借地権割合だけでなく、次のような条件が価格に影響します。
1.地主から求められる譲渡承諾料
借地権を第三者へ譲渡する場合は、原則として地主の承諾が必要です。
その際、借地権者から地主へ譲渡承諾料を支払うことがあります。
一般的には借地権価格の10%程度が一つの目安とされていますが、法律で一律に決められた割合ではありません。
承諾料が高ければ、その分売主の手取り額が減るだけでなく、売買条件そのものにも影響します。
承諾料については、借地権の承諾料はいくら?譲渡・建替え・増改築の相場と計算方法を解説も参考にしてください。
2.毎月の地代
借地権を購入した人は、購入後も地主へ地代を支払い続けます。
そのため、同じ価格の借地権でも地代が月3万円の場合と月10万円の場合では、買主の負担が大きく異なります。
周辺相場に比べて地代が高ければ、売却価格にマイナスの影響が出る可能性があります。
地代の相場については、借地権の地代はいくら?相場・計算方法・値上げされた場合の対処法を解説をご覧ください。
3.借地契約の残存期間
借地契約があと何年残っているかも買主にとって重要な情報です。
更新時期が近ければ、購入後すぐに更新料の支払いや地主との契約更新が必要になる可能性があります。
特に更新条件が明確になっていない場合は、買主が購入後の費用を予測しにくくなるため、売却にも影響します。
4.建物の築年数・状態
借地権付き建物を売却する場合は、土地の権利だけでなく建物の状態も価格に影響します。
建物が新しく、そのまま利用できる状態であれば買主を探しやすくなります。
一方、老朽化が進み購入後すぐに建替えが必要な場合は、建替え費用だけでなく、地主の承諾や建替え承諾料についても確認しなければなりません。
5.地主との関係・譲渡条件
借地権の売却では、地主との関係も重要です。
地主との関係が良好で、譲渡承諾料や今後の地代、建替え条件などについて話し合いやすい状態であれば、買主も購入後の見通しを立てやすくなります。
反対に、地主と長期間トラブルになっている場合や、譲渡そのものを拒否されている場合は、売却条件が厳しくなる可能性があります。
6.住宅ローンを利用できるか
借地権付き住宅では、所有権の住宅と比較して住宅ローンの審査条件が厳しくなることがあります。
金融機関によっては、地主から抵当権設定などについて承諾を求める場合もあります。
住宅ローンを利用できる金融機関が限られると購入できる人も少なくなるため、売却価格や販売期間に影響する可能性があります。
7.土地・建物そのものの市場性
当然ながら、借地権であっても立地や土地・建物の状態は価格に大きく影響します。
- 駅からの距離
- 周辺環境
- 土地の形状
- 接道状況
- 日当たり
- 土地面積
- 建物の間取り
- 建物の状態
など、通常の不動産査定で評価される条件も借地権価格に反映されます。
借地権の売却価格が下がりやすいケース
地主が譲渡を承諾していない
地主から第三者への譲渡について承諾を得られていない場合は、売却のハードルが高くなります。
買主が決まったとしても、地主との条件がまとまらなければ通常の方法では売却を完了できないためです。
地主が承諾しない場合には、一定の要件のもとで借地非訟によって裁判所へ地主の承諾に代わる許可を求める方法もあります。
詳しくは、借地非訟とは?地主が承諾しない場合の手続きをわかりやすく解説をご覧ください。
地代や更新料などの負担が大きい
借地権を購入した後も、買主は地代を継続して支払います。
また、契約内容によっては更新時に更新料が必要になる場合もあります。
こうした継続的な費用が高い借地権は、購入後の負担が大きくなるため評価が下がることがあります。
建替え条件が厳しい
建物が古い場合、買主は購入後に建替えを考えることがあります。
しかし、地主が建替えを認めない、建替え承諾料が高い、建物構造について厳しい条件があるといった場合には購入希望者が限られます。
地主とのトラブルを抱えている
地代や更新、建替えなどをめぐって地主との関係が悪化している場合も、売却価格へ影響する可能性があります。
買主にとっては、購入した時点から地主とのトラブルを引き継ぐ可能性があるためです。
借地権を少しでも高く売却するには?
地主へ買い取ってもらえるか確認する
借地権を第三者へ売却する前に、地主へ買い取ってもらえないか確認する方法があります。
地主が借地権を買い取れば、底地と借地権が一つになり完全な所有権になるため、地主にとってもメリットがあります。
ただし、地主には借地権を買い取る義務はないため、価格について双方が合意できることが前提です。
底地と借地権を同時売却する
地主も土地を売却したいと考えている場合は、底地と借地権を同じ買主へ同時に売却する方法があります。
買主は完全な所有権を取得できるため、借地権単独で売却するより不動産としての市場性が高くなります。
地主・借地権者双方の条件が合えば、単独で売却する場合より高い総額で売却できる可能性があります。
地主との条件を先に整理する
借地権の売却では、買主を探す前に地主の意向を確認しておくことが重要です。
例えば、次の条件をできる範囲で明確にしておくと、買主も購入判断をしやすくなります。
- 譲渡を承諾してもらえるか
- 譲渡承諾料はいくらか
- 購入後の地代はいくらか
- 契約期間はどうなるか
- 建替えを認めてもらえるか
- 建替え承諾料はいくらか
- 住宅ローンに必要な承諾へ対応してもらえるか
借地権の取扱実績がある不動産会社へ査定を依頼する
借地権の査定は、通常の土地・建物の査定より確認する項目が多くなります。
近隣の取引価格だけではなく、地主との契約内容や譲渡条件まで考慮する必要があるためです。
借地権の売却方法全般については、借地権は売却できる?相場・売却方法・地主の承諾や注意点を解説も参考にしてください。
借地権の仲介と買取では売却価格が違う?
借地権を売却する方法には、不動産会社に仲介してもらい一般の買主を探す方法と、不動産会社が直接買主になる買取があります。
仲介の場合は市場で広く買主を探せるため、条件のよい借地権であれば高い価格で売却できる可能性があります。
一方、買主が見つかるまで時間がかかることや、住宅ローン・地主の承諾などが原因で売却が進まないケースもあります。
買取では、不動産会社自身が買主になるため、一般の買主を探す必要がありません。
そのため、地主との調整が必要な物件、老朽化した建物、相続後にそのままになっている物件などでも売却を検討しやすい方法です。
ただし、どちらが高くなるかは物件の状況によって異なります。「時間をかけてでも高く売りたいのか」「多少条件が下がっても手間なく早く売りたいのか」も含めて比較するとよいでしょう。
マーキュリーでは借地権の条件まで確認して査定します
借地権の売却価格は、土地の路線価や借地権割合だけを見ても判断できません。
マーキュリーでは、不動産そのものの市場性に加えて、地代、借地期間、地主の譲渡条件、承諾料、建替え条件なども確認したうえで借地権を査定します。
また、マーキュリーが直接買主となる買取では、物件の状況によっては測量、残置物撤去、建物解体などを売却前に行わず、現況のまま買取を検討することも可能です。
直接買取の場合は仲介取引ではないため、マーキュリーへの仲介手数料も発生しません。
「借地権割合は70%だけれど実際はいくらで売れるのか」「地主から譲渡承諾料を提示されているが、それを含めても売却できるのか」といった場合も、現在の契約条件を確認したうえで査定することができます。
借地権の売却相場に関するよくある質問
借地権の売却相場はいくらですか?
借地権には「所有権価格の何%」という一律の売却相場はありません。更地価格と借地権割合から計算した借地権価格を一つの目安にしながら、地代、譲渡承諾料、契約期間、建替え条件、建物の状態などを考慮して実際の売却価格を判断します。
借地権割合が60%なら土地価格の60%で売れますか?
必ずしも60%で売却できるわけではありません。借地権割合は主に相続税・贈与税の財産評価で利用される割合であり、実際の売却価格とは異なります。地主の承諾条件や地代、契約期間なども売却価格に影響します。
借地権割合はどこで確認できますか?
国税庁が公開している「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。路線価図ではA~Gの記号で表示され、Aが90%、Bが80%、Cが70%、Dが60%、Eが50%、Fが40%、Gが30%です。
路線価から借地権の売却価格を計算できますか?
路線価と借地権割合から借地権の税務上の評価額を概算することはできます。ただし、路線価は実際の市場価格そのものではなく、借地権割合も売却価格を決定する割合ではないため、実際の売却相場とは差が生じます。
地主が売却を認めてくれないと借地権の価値はなくなりますか?
地主が譲渡を承諾していないからといって、直ちに借地権の価値がなくなるわけではありません。まずは地主との条件調整を行い、それでも承諾が得られない場合には、一定の要件のもとで借地非訟による譲渡許可を裁判所へ求められる場合があります。
借地権を高く売る方法はありますか?
地主へ買い取ってもらう方法や、地主と協力して底地と借地権を同時に売却する方法があります。また、第三者へ売却する場合も、譲渡承諾料や地代、建替え条件などをあらかじめ地主と整理しておくと、買主が購入判断をしやすくなります。
まとめ|借地権割合だけで売却相場を判断しない
借地権の売却相場を考える際には、路線価や借地権割合が一つの参考になります。
国税庁の路線価図では借地権割合が30~90%で設定されており、「更地価格×借地権割合」で借地権の評価額を概算できます。
しかし、この金額は主に税務上の財産評価で使われるものであり、実際にその価格で売却できるという意味ではありません。
実際の借地権価格には、毎月の地代、譲渡承諾料、契約期間、更新条件、建替え条件、建物の状態、地主との関係、住宅ローンの利用可否などが影響します。
そのため、借地権割合だけを見て「自分の借地権は○○万円」と判断するのではなく、現在の借地契約や地主の譲渡条件まで確認することが大切です。
マーキュリーでは、借地権・底地を専門的に取り扱っており、地主との条件がまだ整理されていない借地権についても査定・買取のご相談を承っています。
「路線価や借地権割合は分かるけれど実際にいくらで売れるのか分からない」という場合は、契約書や現在の地代などを確認したうえで査定することをおすすめします。







