

マンションの建替えを考えるとき、「築何年になったら建替えるのか」「費用はいくらかかるのか」「反対する人がいても進められるのか」といった点が気になる方は多いと思います。
結論からいうと、マンションは築年数だけで建替えを決めるものではありません。建物の劣化や耐震性、今後の修繕費、建替え後に建てられる規模、区分所有者の負担などを確認し、修繕・改修・建物更新・建替え・売却を比較して判断します。
また、2026年4月に改正マンション関係法が施行され、一定のマンションでは建替え決議の要件が緩和されたほか、「建物更新(一棟リノベーション)」など再生の選択肢も広がりました。
この記事では、マンション建替えの判断基準、費用、決議要件、実際の流れ、建替え以外の選択肢まで順番に解説します。
・「築47年」は税務上の法定耐用年数であり、建物の寿命ではない
・建替え決議は原則として区分所有者数・議決権の各5分の4以上が必要
・一定の客観的事由がある場合は各4分の3以上へ緩和される
・建替え費用は一律ではなく、容積率や増床の可否、建築費、土地価値などで大きく変わる
・建替えだけでなく、修繕・改修、建物更新、敷地売却なども比較する
マンションは築何年で建替える?


マンションに「築○年になったら必ず建替える」という基準はありません。築年数より、建物の状態と今後必要になる修繕費を見ることが重要です。
マンション建替えについて調べると、「47年」という数字を見かけることがあります。
これは鉄筋コンクリート造(RC造)などの住宅に用いられる税務上の法定耐用年数です。減価償却費を計算するための年数であり、マンションの物理的な寿命を表すものではありません。
築47年を過ぎても、適切な修繕を続けながら使用しているマンションはあります。一方で、築年数がそれほど進んでいなくても、耐震性や設備、構造体の劣化などに大きな問題があれば、再生方法を検討する必要があります。
建替えを考えるときは、少なくとも次の点を確認します。
- 耐震性に問題がないか
- コンクリートや鉄筋がどの程度劣化しているか
- 給排水管やエレベーターなどの更新状況
- 今後必要になる大規模修繕費
- バリアフリーや断熱など現在の居住ニーズに対応できるか
- 建替えた場合にどの程度の建物を建てられるか
「古いから建替え」と決めるのではなく、建物診断と長期修繕計画をもとに、今後も使い続けられるかを判断することが大切です。
マンション建替えを検討する主なタイミング


建替えは、単に古くなったときではなく、修繕だけでは解決しにくい問題が増えてきたときに具体的な検討へ進みます。
耐震性など安全面に課題がある
旧耐震基準で建てられたマンションなどでは、耐震診断の結果を踏まえて耐震改修や建替えを検討することがあります。
ただし、旧耐震基準というだけで直ちに建替えが必要になるわけではありません。耐震補強によって使い続けられるのか、それとも建替えの方が合理的なのかを比較します。
今後の修繕費が大きくなっている
高経年マンションでは、外壁や屋上防水だけでなく、給排水管、エレベーター、機械式駐車場など大きな設備更新が重なることがあります。
修繕を続けるために多額の費用が必要になる場合は、「あと何年使えるのか」と「その間にいくら修繕費がかかるのか」を整理し、建替えとの比較が必要になります。
現在の建物では居住ニーズに対応しにくい
建物そのものは使えても、エレベーターがない、段差が多い、断熱性能が低い、設備スペースが不足しているなど、現在の住まい方に合わなくなっていることがあります。
部分的な改修では解決しにくい課題が多い場合は、建物更新や建替えを含めて検討します。
建替えによって土地を有効活用できる
建築当時より現在の容積率に余裕があるマンションでは、建替えによって床面積や住戸数を増やせる場合があります。
増えた住戸を販売できれば、その収益を事業費へ充てられる可能性があります。一方、容積率に余裕がないマンションでは、区分所有者の負担が大きくなりやすいため、事業性を早めに確認することが重要です。
マンション建替えの費用は誰が負担する?


建替え費用に全国一律の相場はありません。建替え後に増やせる床面積や住戸数、土地の価値、建築費などによって、区分所有者の負担は大きく変わります。
マンション建替えでは、新しい建物の建築費だけでなく、解体費や設計費、各種手続きなど多くの費用が必要になります。
ただし、その全額を現在の区分所有者だけで均等に負担するとは限りません。
たとえば、建替え後に住戸を増やせるマンションでは、増加した住戸などを販売し、その収益を事業費へ充てる方法があります。
区分所有者の負担を考える際は、次のような条件をまとめて確認します。
- 現在の土地・建物の評価
- 建替え後に建築できる延床面積
- 増やせる住戸数
- 建築費・解体費
- デベロッパーへ売却できる床の価値
- 建替え後に取得したい住戸の広さ
建築費以外に仮住まい・引越し費用も必要
既存マンションを取り壊して建て直す間は、居住者は原則として一度退去します。
再入居を予定している場合でも、仮住まいの家賃に加え、仮住まいへの引越しと完成後の再引越しが必要です。
- 仮住まいの家賃
- 2回分の引越し費用
- 家財の保管費用
- 家具・家電の買替え
- 各種契約や住所変更に伴う費用
東京都では、一定のマンション建替えについて都営住宅などを仮住まいとして利用できる支援制度も設けられています。利用できる制度は地域によって異なるため、自治体の支援策も確認するとよいでしょう。
住宅ローンが残っている場合は資金計画を早めに確認する
現在の住戸に住宅ローンが残っている状態で建替えを迎えることもあります。
その場合は、既存ローンの扱いに加え、建替え後の住戸を取得するために追加資金が必要になる可能性があります。金融機関の融資を利用できるかも含め、早い段階で資金計画を確認しておきましょう。
2026年現在のマンション建替え決議の要件


単棟マンションの建替え決議は、原則として区分所有者数・議決権の各5分の4以上が必要です。2026年4月の改正法施行により、一定の客観的事由がある場合は各4分の3以上へ緩和されました。
マンションは多くの区分所有者が権利を持っているため、一人の判断だけで建替えることはできません。
区分所有法では、単棟マンションの建替えについて、原則として区分所有者数と議決権のそれぞれ5分の4以上の多数による建替え決議を求めています。
2026年4月1日に施行された改正法では、一定の客観的事由があるマンションについて、この要件が各4分の3以上へ緩和されました。
対象となる主な事由として、国土交通省は次のようなものを示しています。
- 耐震性が不足している
- 火災に対する安全性が不足している
- 外壁等の剥落によって周囲へ危害を与えるおそれがある
- 給排水管などの腐食により著しく衛生上有害となるおそれがある
- 一定のバリアフリー基準に適合していない
反対者が一人でもいると建替えできないわけではない
建替え決議は全員一致を求める制度ではありません。
法定の多数要件を満たして決議が成立した場合は、建替えに参加しない区分所有者についても、法律に基づいて権利を整理する手続きがあります。
ただし、法律上決議できることと、実際に事業が円滑に進むことは別です。費用負担や仮住まい、建替え後の住戸などを具体的に示し、多くの所有者が判断できる材料をそろえることが重要です。
既存不適格マンションは建替え後に小さくなることがある


現在建っているマンションと同じ大きさを、そのまま建て直せるとは限りません。建替え前に現在の用途地域・容積率・高さ制限などを確認する必要があります。
建替え事業の成否に大きく影響するのが「既存不適格」です。
既存不適格とは、建築当時は適法だったものの、その後の法改正や都市計画の変更などによって、現在の規制には適合していない建物をいいます。
たとえば、現在の容積率では既存マンションと同じ延床面積を確保できない場合、建替え後の住戸数や住戸面積を減らさなければならない可能性があります。
反対に、容積率に余裕があるマンションでは増床できることもあります。建替えを本格的に検討する前に、「今の敷地にどの程度の建物を建てられるのか」を確認しておくことが欠かせません。
マンション建替えの流れ


建替え決議をしたらすぐ工事が始まるわけではありません。検討、合意形成、決議、権利調整、退去、解体・新築、再入居まで複数の段階があります。
| 段階 | 主な内容 |
|---|---|
| 1 | 修繕・改修・建替えなど再生方法を比較する |
| 2 | 建物診断・法規制・事業性を調査する |
| 3 | 建替え計画と概算負担額を作成する |
| 4 | 区分所有者への説明・合意形成を進める |
| 5 | 建替え決議を行う |
| 6 | マンション再生組合の設立や権利調整を行う |
| 7 | 居住者が仮住まいへ移転する |
| 8 | 既存建物を解体し、新マンションを建築する |
| 9 | 完成後に再入居・登記・清算を行う |
1.建替え以外の方法も含めて比較する
検討の最初から「建替えをする」と決めるのではなく、修繕や改修で今後も利用できるのかを比較します。
建物の状態だけでなく、区分所有者が今後どの程度住み続けたいのか、どこまで費用を負担できるのかも重要です。
2.建物診断と事業性調査を行う
耐震性や構造体、設備の劣化を確認するとともに、現在の法規制でどの程度の建物を建築できるかを調査します。
増床の可否や建築費、土地の市場性などを調べ、建替え事業として成立する可能性を確認します。
3.計画と区分所有者の負担額を具体化する
建替え後の建物規模、住戸タイプ、事業費、各区分所有者の権利評価、追加負担の見込みなどを整理します。
この段階で「賛成か反対か」だけを聞くのではなく、自分がいくら負担するのか、完成後にどの住戸を取得できるのかをイメージできる資料を示すことが大切です。
4.建替え決議と権利調整を行う
計画が具体化した後、区分所有法に基づく建替え決議を行います。
法律に基づく建替え事業では、その後、マンション再生組合の設立や権利変換などの手続きを進めます。
5.仮住まいへ移り、解体・新築する
既存マンションを取り壊すため、居住している人は仮住まいへ移ります。
工事期間中の生活費や通勤・通学、医療・介護などへの影響もあるため、費用だけでなく生活面まで考えて準備する必要があります。
6.完成後に再入居・清算する
新マンションが完成したら、住戸を取得する区分所有者は再入居します。
その後、登記や事業費の清算などを行い、建替え事業が完了します。
2026年から「建物更新(一棟リノベーション)」も選択肢に


建物をすべて解体する建替えだけでなく、既存の構造躯体を残しながら共用部分と専有部分を一体的に更新する「建物更新」の制度が2026年4月から加わりました。
2026年4月施行の改正区分所有法では、新たに建物更新決議が設けられました。
建物更新は、既存の構造躯体を維持しながら、共用部分とすべての専有部分を大きく更新する、いわゆる一棟リノベーションを想定した仕組みです。
| 方法 | 既存建物 | 主な考え方 |
|---|---|---|
| 大規模修繕 | 利用する | 劣化した性能を回復する |
| 改修 | 利用する | 設備・性能を向上させる |
| 建物更新 | 構造躯体を維持 | 共用部・専有部を含め一棟全体を大幅に更新する |
| 建替え | 解体する | 新しい建物へ建て替える |
建物更新決議は、原則として区分所有者と議決権の各5分の4以上の多数が必要です。
建替えと同様に大きな合意形成が必要な手法ですが、既存躯体を活用できるマンションでは、新たな再生方法として検討できるようになりました。
参考:国土交通省「改正マンション関係法の施行に伴う関係政令」
修繕・改修については、マンション修繕と改修の違い|建物の維持と資産価値向上も参考にしてください。
マンション建替えは実際どのくらい行われている?


高経年マンションは増えていますが、建替えまで完了した事例はまだ限られています。合意形成と事業採算の難しさが大きな理由です。
国土交通省によると、マンション建替えの実績は2025年3月31日時点で累計323件、約2万6,000戸です。
建替えが進みやすいのは、土地の市場性が高い、容積率に余裕があるなど、事業費を確保しやすい条件がそろったマンションに偏る傾向があります。
そのため、マンションが古くなったからといって、すべての建物が同じように建替えられるわけではありません。
建替え以外にマンションを売却する方法もある
所有者全員が建替え後のマンションへ戻りたいとは限りません。費用や年齢、今後の暮らしによっては、売却して金銭化する方が合う場合もあります。
マンション再生を検討するときは、「修繕するか建替えるか」の二択ではありません。
高齢化や費用負担、仮住まいへの移転などを考えると、建替え後の住戸を取得せず、別の住宅へ移りたい区分所有者もいます。
2026年4月の制度改正では、建物敷地売却や建物取壊し敷地売却など、多数決による新たな再生・売却手法も整備されました。
マンション全体を売却して所有者が金銭を受け取る方法が適しているケースもあるため、建替えの事業性が低い場合は売却まで含めて比較することが大切です。
マンション敷地売却については、建替え以外の選択肢|マンション敷地売却制度とは?もあわせてご覧ください。
マンション建替えを検討するときに最初にやること


最初から賛否を取るのではなく、建物の状態、法規制、事業性、区分所有者の意向を整理します。
建物の状態を調べる
まず、耐震性や構造体、設備の劣化状況を把握します。
「築年数が古いから危険」という印象だけで話を進めず、客観的な調査結果を共有することが重要です。
建替え可能な規模と事業性を確認する
用途地域、容積率、高さ制限などを確認し、現在の敷地にどの程度の建物を建築できるのかを調べます。
既存不適格や増床余地の有無は、建替え後の住戸数や所有者の負担額に大きく影響します。
区分所有者の意向を把握する
同じマンションでも、所有者の考え方はそれぞれ違います。
- できるだけ長く現在の建物を使いたい
- 建替え後も住みたい
- 費用負担はできるだけ抑えたい
- 建替えを機に転出したい
- 賃貸用として所有している
こうした意向を早い段階で把握しておくと、現実的な再生方法を比較しやすくなります。
修繕・建物更新・建替え・売却を比較する
それぞれについて、今後必要になる費用、改善できる性能、工事期間、所有者の負担を比較します。
建替えありきで進めるより、複数の選択肢を同じ条件で比べた方が、区分所有者にも説明しやすくなります。
マンション建替えに関するよくある質問
建替えの検討中でも自分の住戸を売却できますか?
建替え決議前であれば売却自体は可能ですが、建替え検討の進み具合は購入判断に影響するため、重要な情報は適切に伝える必要があります。決議成立後は権利関係や事業手続きが進むため、売却を考えている場合は管理組合や専門家へ早めに確認しましょう。
賃貸に出している住戸も建替えの対象になりますか?
区分所有者が自分で住んでいるか、賃貸に出しているかにかかわらず、区分所有されている住戸は建替え事業の対象になります。賃借人がいる場合は、退去や補償、契約関係の整理も必要になるため、早めの対応が必要です。
建替え後の部屋は今と同じ広さになりますか?
必ず同じ広さになるわけではありません。建替え後の建物規模、権利評価、取得を希望する住戸、追加負担の有無などによって変わります。計画段階で、自分が取得できる住戸の広さと必要な負担額を確認することが大切です。
マンション建替えで容積率を緩和してもらえることはありますか?
一定の要件を満たすマンションの再生では、特定行政庁の許可などにより容積率の特例を利用できる場合があります。ただし、すべての建替えで適用される制度ではないため、対象になるかは自治体や専門家へ確認が必要です。
建替えの仮住まいに公的住宅を利用できますか?
地域によっては、マンション建替え中の仮住まいとして公的住宅を利用できる支援制度があります。対象となる事業や世帯要件は制度ごとに異なるため、マンション所在地の自治体へ確認してください。
建替えを考え始めたら最初に誰へ相談すればいいですか?
まず管理組合内で現在の建物状態や課題を整理し、マンション再生に詳しい建築士、コンサルタント、不動産会社、デベロッパーなどから専門的な意見を得る方法があります。自治体によってはマンション再生の相談窓口やアドバイザー制度を設けている場合もあります。
「マンション再生」に関連する項目
マンション再生でお悩みならマーキュリーへご相談ください
高経年マンションの再生は、建替えをするかどうかだけで決められるものではありません。
建物の状態、現在の法規制、修繕費、区分所有者の意向、土地の市場性などによって、適した方法は変わります。
マーキュリーでは、専門会社とも連携しながら、修繕・改修、建物更新、建替え、敷地売却など複数の方法を比較し、マンション再生の可能性を検討しています。
「建替えた場合に事業として成立するのか知りたい」「合意形成が進まない」「建替えだけでなく売却も検討したい」といった段階からご相談いただけます。





