住宅ローンの返済中でも、家は売却できます。「完済してからでないと売れない」と思い込んでいる方は多いのですが、実際には売却代金でローンを完済するのが通常の流れです。
鍵になるのは、売却価格とローン残債のどちらが大きいかです。売却代金が残債を上回る状態をアンダーローン、下回る状態をオーバーローンといいます。この二つで、取れる手立てがまったく変わります。
アンダーローンであれば、通常の売却と同じように進められます。オーバーローンの場合は、不足分をどう手当てするかを先に決めなければなりません。
この記事では、残債の確認方法から、抵当権の仕組み、アンダーローンとオーバーローンそれぞれの進め方、売却の流れ、返済が滞っている場合の選択肢までを整理します。
まず確認すること|残債と査定額
判断の出発点は二つの数字です。ここが分からないまま動いても、方針は立ちません。
一つ目がローンの残債です。金融機関に依頼すれば残高証明書を発行してもらえます。毎年送られてくる返済予定表でも、現時点の残高を確認できます。複数の借入がある場合、あるいはペアローンや連帯債務の場合は、それぞれの残高を把握してください。
二つ目が不動産の査定額です。いくらで売れる見込みがあるのかを確認します。ここで大切なのは、売却代金がそのまま手元に来るわけではないという点です。仲介であれば仲介手数料が差し引かれ、抵当権抹消の費用も必要になります。
この二つを並べれば、アンダーローンかオーバーローンかが分かります。
| 状態 | 内容 | 進め方 |
|---|---|---|
| アンダーローン | 売却代金 > ローン残債 | 通常の売却。完済して差額が手元に残る |
| オーバーローン | 売却代金 < ローン残債 | 不足分の手当てが必要。任意売却も選択肢 |
相場の見当をつけるには、公的なデータが役に立ちます。国土交通省の不動産価格指数では、マンション(区分所有)が222.2、住宅総合が145.4という水準です(2010年平均を100とした値)。令和7年地価公示では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続の上昇が確認されています。実際の成約価格は不動産情報ライブラリで調べられます。
出典:国土交通省|不動産価格指数
国土交通省|令和7年地価公示
国土交通省|不動産情報ライブラリ
なぜ完済が必要なのか|抵当権の仕組み
「ローンが残っていると売れない」と言われる理由は、抵当権にあります。
住宅ローンを組むとき、金融機関はその不動産に抵当権を設定します。返済が滞った場合に不動産を差し押さえ、競売にかけて回収するための権利です。登記簿に記載され、誰でも確認できます。
抵当権が付いたままの不動産を買う人は、まずいません。前の所有者の返済が滞れば、自分が買った家を失うことになるからです。そのため、売買では抵当権を抹消して引き渡すのが前提になります。
抵当権を抹消するには、ローンを完済して金融機関の承諾を得る必要があります。つまり「完済してから売る」のではなく、「売った代金で完済し、同時に抵当権を抹消する」という順序になります。
この一連の手続きは、決済の日に同時に行われます。買主から代金が振り込まれ、その場でローンを完済し、司法書士が抵当権抹消と所有権移転の登記を申請します。どれか一つだけが先に進むことはありません。
たとえば、決済当日には金融機関の応接室に売主、買主、司法書士が集まり、1時間から2時間ほどですべてが完了します。事前の段取りさえできていれば、当日の手続き自体は難しいものではありません。
アンダーローンの場合の進め方
売却代金が残債を上回るなら、話は比較的単純です。
まず金融機関に売却の意向を伝え、完済に必要な金額と手続きを確認します。繰上返済の手数料が生じる場合もあるため、あわせて確認してください。
次に売却の方法を選びます。仲介であれば市場価格を狙えますが、買主が現れるまでの期間は読めません。その間もローンの返済は続きます。直接買取であれば期間が読め、仲介手数料もかかりません。
決済日には、買主からの代金でローンを完済し、抵当権抹消の手続きを行います。残った金額が手元に入ります。ここから、譲渡所得税や次の住まいの費用を賄うことになります。
税金についても押さえておきましょう。売却益が出た場合、課税されるのは売却価格そのものではなく、取得費と譲渡費用を差し引いた譲渡所得です。自分が住んでいた自宅であれば、マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除を使える可能性があります。所有期間が10年を超えるマイホームなら、軽減税率の特例も併用できます。
所有期間は、売却した年の1月1日時点で判定します。5年を超えていれば長期譲渡所得、5年以下であれば短期譲渡所得です。これらの特例は確定申告をして初めて適用されます。
出典:国税庁|土地や建物を売ったとき(譲渡所得)
国税庁|マイホームを売ったときの特例(3,000万円控除)
国税庁|長期譲渡所得の税額計算
オーバーローンの場合の選択肢
売却代金が残債に届かない場合、不足分をどうするかを決めなければ売却できません。
第一の方法は、不足分を自己資金で補うことです。預貯金や親族からの援助で差額を埋められるなら、通常の売却として進められます。最も手続きが単純です。
第二に、住み替えローンという仕組みがあります。新しい住まいの購入資金に、旧居の残債を上乗せして借りる方法です。ただし審査は厳しく、返済負担も大きくなります。
第三が、任意売却です。返済が滞っている、あるいは滞る見込みがある場合に、金融機関の同意を得て売却する手続きです。抵当権を外すことに合意してもらい、売却代金を返済に充て、残った債務は分割などで返済していきます。
第四に、売却を見送り、返済条件の変更を金融機関と協議する道もあります。返済期間の延長や一時的な減額で乗り切れるなら、住み続けられます。
判断の分かれ目は、返済を継続できるかどうかです。継続できるなら焦って売る必要はありません。継続が難しいなら、早く動くほど選べる手立てが多く残ります。日本銀行は金融システムレポートで金融環境の動向を公表していますが、個別の条件は金融機関との協議が先です。
たとえば、収入が減って返済が苦しくなった段階で相談すれば返済条件の変更で済んだものが、数か月延滞してから相談したために任意売却しか選べなくなった、という例があります。
任意売却と競売の違い
返済が滞ってしまった場合、二つの道が分かれます。違いを知っておくことが重要です。
| 比較項目 | 任意売却 | 競売 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 市場相場に近い水準を狙える | 相場より低くなる傾向がある |
| 引き渡し時期 | 話し合いで調整できる | 裁判所の手続きに従う |
| 周囲への知られ方 | 通常の売却と同じ形で進む | 情報が公告され誰でも閲覧できる |
| 引っ越し費用 | 売却代金から配分される場合がある | 原則として自己負担 |
| 残債の返済 | 協議して分割などを相談できる | 一括請求される場合がある |
差が最も出るのは価格です。競売では現況のまま入札にかけられ、内見もできないため、買い手はリスクを見込んで低い価格で応札します。売却価格が高いほど返済に充てられる額が増え、残る債務は小さくなります。
任意売却には期限があります。返済の延滞が続くと期限の利益を喪失し、保証会社の代位弁済を経て競売の申立てが行われます。裁判所の手続きが進み、開札の日を過ぎると任意売却はできません。
残った債務は、任意売却でも競売でも消えません。ただし任意売却では債権者との協議を経ているため、収入や生活の状況を踏まえた分割返済を相談しやすくなります。
離婚・相続がからむ場合の注意点
残債のある不動産は、事情が重なるとさらに複雑になります。
離婚の場合、名義と債務は別の問題です。財産分与で名義を一方に変えても、金融機関に対する返済義務がそのまま移るわけではありません。連帯債務や連帯保証になっていれば、離婚後も責任は残ります。金融機関の承諾なく名義を変更すると、契約違反となる可能性もあります。売却して現金を分けるほうが、後腐れがない形になりやすいといえます。
相続の場合、住宅ローンは団体信用生命保険で完済されていることが多くあります。まず加入の有無を確認してください。完済されていれば抵当権抹消の手続きだけで済みます。完済されていない場合は、債務も相続の対象になります。
いずれの場合も、名義の確認が出発点です。相続した不動産であれば、登記名義を相続人へ移さなければ売却できません。相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務化されており、相続を知った日から3年以内の申請が求められます。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。
共有名義の場合は、売却に共有者全員の合意が必要です。合意が取れない場合、自分の持分だけを売却するという選択肢もあります。
進めるうえでの注意点
残債のある不動産の売却では、気をつけたい点がいくつかあります。
第一に、金融機関への連絡を後回しにしないことです。売却の意向を伝えないまま話を進めても、抵当権抹消の承諾が得られなければ決済できません。早い段階で相談してください。
第二に、売却期間中も返済が続くことです。仲介で買主を待つあいだも、毎月の返済と固定資産税は発生します。期間が読めない方法を選ぶと、その分だけ負担が積み上がります。
第三に、査定額の根拠です。国民生活センターは、高額な金額を提示したあとで理由をつけて値下げを迫る手口について、繰り返し注意を呼びかけています。残債があると足元を見られやすいため、説明を求めてください。
第四に、契約する相手が宅地建物取引業の免許を受けている事業者かどうかです。国土交通省の検索システムで、免許の有無と行政処分の履歴を確認できます。
第五に、不動産の売買契約にクーリング・オフは原則として適用されません。期限が迫っている状況につけ込まれないよう、書面を持ち帰る時間を確保してください。
出典:国民生活センター|不動産売却トラブル注意喚起
国土交通省|建設業・宅建業者等企業情報検索
マーキュリーが選ばれる4つの理由|あらゆる不動産を価値ある未来へ
残債のある不動産は、時間が経つほど選択肢が減ります。期間の読める方法を持つ相手を選ぶ意味があります。
① 権利調整に対応
複数の抵当権が設定されている、共有名義である、税金の滞納による差押えがあるといった状態でもご相談いただけます。関係者との調整を含めて対応いたします。
② 再建築不可・訳あり物件の再生
旧耐震の建物、再建築不可の土地、傷みの進んだ住宅も対象です。一般の市場で買主の融資が通らない条件でも、再生を前提に評価いたします。
③ 相続対策をワンストップで
相続した不動産にローンが残っている、登記が済んでいないといった段階からご相談いただけます。司法書士や税理士と連携して進められます。
④ 直接買取で仲介手数料ゼロ・査定額がそのまま手取り
買主を探すのではなく、当社が直接買い取ります。買主の融資審査を待つ必要がないため、決済までの期間が読めます。仲介手数料はかからず、提示した金額がそのまま返済に充てられます。
住宅ローンが残る家の売却に関するよくある質問
住宅ローンが残る不動産について、お客様からよくいただくご質問をまとめました。
ローンが残っていても売却できますか
できます。売却代金でローンを完済し、抵当権を抹消して引き渡すのが通常の流れです。完済してから売るわけではありません。
売却代金が残債に届かない場合はどうなりますか
不足分を自己資金で補うか、住み替えローンを利用するか、任意売却を検討することになります。返済が滞る前に相談を始めるほど選択肢は多く残ります。
金融機関に売却を知られると困りますか
むしろ早めに伝えるべきです。抵当権抹消の承諾が得られなければ決済できません。売却の意向を伝えることで不利になることはありません。
離婚するので名義を変えたいのですが可能ですか
金融機関の承諾なく名義を変更すると契約違反となる可能性があります。連帯債務や連帯保証の責任も離婚では消えません。売却して現金を分ける方法も検討してください。
相続した家にローンが残っています
団体信用生命保険で完済されている場合が多くあります。まず加入の有無を確認してください。完済されていれば抵当権抹消の手続きだけで済みます。
まとめ|マーキュリーへご相談ください
住宅ローンが残っていても、家は売却できます。判断の起点は、残債と査定額のどちらが大きいかです。
- ●売却代金でローンを完済し、抵当権を抹消して引き渡すのが通常の流れ
- ●売却代金が残債を上回るアンダーローンなら、通常の売却として進められる
- ●下回るオーバーローンでは、不足分の手当てか任意売却の検討が必要
- ●任意売却ができるのは競売の開札日まで。過ぎると選べなくなる
- ●離婚では名義と債務は別問題。連帯債務や連帯保証の責任は残る
残債があって売れるか分からない、返済が苦しくなってきた、離婚や相続で整理が必要という方も、マーキュリーへご相談ください。直接買取であれば期間が読めるため、時間が限られている場合にも対応できます。査定は無料で、ご相談だけでも歓迎いたします。





