不動産を複数人の共同で所有する際に、それぞれが持っている権利の割合を「共有持分」と言います。不動産を共有持分で所有しておけば、住宅ローン控除や居住用として使用し共有者同士がローンを組んでていた場合(例えば夫婦でペアローンなど)には、各共有者が3000万の特別控除が受けられるなど、様々なメリットを受けることが可能です。
しかし共有持分割合を決める方法は、状況によって変わります。
根拠のない割合で適当に持分を設定してしまうと、余分な税金が必要になるケースがあるため、注意が必要です。
そこでこの記事では、共有持分の割合を決める6つの方法を詳しく解説します。
相続時と購入時のそれぞれのケースで解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
共有持分の割合とは
不動産を共有で所有する場合、共有者の数に応じた持分を決めます。
主に、以下の割合を示す場合に必要です。
- 所有権
- 使用権
- 各費用負担
所有マンションの共有持分が3分の1の場合、その割合でマンション全体の使用が可能です。
さらにマンションの固定資産税や修繕費用などが年間30万円かかる場合、3分の1である10万円が負担割合となります。
共有持分はあくまでも「権利の割合」になるため、物理的な割合で共有するわけではありません。
つまり「300㎡の面積のうち100㎡だけを利用できる」ではなく「300㎡全体を利用できる権利が3分の1ある」ということです。
共有持分の割合を決めるメリット・デメリット
共有持分には、メリットやデメリットがあります。
例えば、マイホームを建てる際に夫婦などの「共有」で住宅ローンを組めば、共有者それぞれの残高に対して控除できます。
また、マイホームを売却する際に利用できる3,000万円特別控除が2倍の6,000万円まで利用可能です。
さらに親と共有名義にすれば、資金援助の際に必要な贈与税を回避できます。
しかしマイホームの売却は、共有者の承諾がなければできません。
また、一方の共有者が死亡すれば相続税が必要になります。
共有持分を決める際には、メリットやデメリットを把握して検討するようにしましょう。
【相続時の共有持分】割合の決め方3選
親や配偶者からの相続により、不動産を取得するケースは少なくありません。ここでは、相続時の共有持分の決め方を3つ解説します。
法定相続分の割合にする
一般的に相続による共有持分の割合は、法定相続分によって決めます。法定相続分とは、法律によって定められている「遺産の分割割合」のことです。
例えば、夫が亡くなり配偶者と子ども2人が相続するケースで共有持分を計算してみましょう。
【夫が単独所有、妻と子どもそれぞれに相続される】
- 妻の共有持分 1/2
- 子どもの共有持分 1/4づつ
夫が不動産の単独名義だった場合は、上記の計算で共有持分を算出します。
一方、夫が妻と1/2ずつの共有持分だった場合、以下のような計算です。
【夫の共有持分1/2が、妻と子どもそれぞれに相続される】
- 夫の共有持分1/2×妻への法定相続分1/2=1/4
- ● 夫の共有持分1/2×子どもへの法定相続分1/4=1/8
妻が持っている共有持分1/2と合わせると、1/2+1/4=3/4・・・相続後の持分
子ども2人がそれぞれ1/8・・・相続後の持分
相続時の共有持分を法定相続分で決めるケースは多いため、簡単な計算はできるようにしておきましょう。
遺産分割協議書で割合を決める
相続では、遺産分割協議によって財産を分ける方法があります。遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合って決める方法です。
相続人全員の同意があれば、遺言書の内容に従わずに遺産を分け合うことが可能です。もちろん不動産の持分を自由に決められるため、話しがまとまれば遺産分割協議書を作成しておきます。
不動産自体が取得できなくても持分だけを相続するケースがあります。その場合は、持分の売却を視野に入れるのもおすすめです。
遺言書の内容に従って割合を決める
遺言書があることで遺産分割協議を行わない場合は、内容に従って遺産の分割や持分割合を決めましょう。
例えば「別荘は妻に、自宅は3人の子どもに平等に相続させるという内容の場合、別荘が妻の単独所有となり、自宅は持分1/3ずつで子どもの所有となります。
万が一遺言書の内容が法定相続人に対して不利な場合、遺留分を他の相続人に請求できます。
例えば、現金1,000万円のうち500万円が法定相続分にもかかわらず、遺言書で「100万円を遺贈する」となっていた場合でも、遺留分の250万円を請求できるケースです。
遺言書の内容で持分割合を分ける場合、法定相続人に不利になる場合は遺留分を請求できることを知っておきましょう。
【購入時の共有持分】割合の決め方3選
共有で不動産を購入する際には、持分の決め方で揉めるケースが多いです。ここでは、スムーズに共有持分割合を決めるための方法を3つ解説します。
購入金額の負担で決めるのが一般的
購入時の共有持分を決める一般的な方法は「購入する費用負担の割合」で決めることです。分かりやすいように、5,000万円の不動産を購入した以下の事例で見ていきましょう。
【費用負担の割合】 | |
---|---|
夫3,000万円 | 妻2,000万円 |
この場合、費用を負担する金額を不動産の購入費用で割るため、以下の計算で算出します。
夫の持分 | 妻の持分 |
---|---|
3,000万円÷5,000万円=0.6 | 2,000万円÷5,000万円=0.4 |
つまり、夫の持分が3/5となり、妻が2/5となります。共有名義で不動産を購入する場合は、費用負担の割合で持分を算出するのがスムーズな決め方です。
住宅ローンを利用する場合の方法は2つある
住宅ローンを利用してマイホームなどを共有名義で購入する場合は、2パターンの組み方によって持分の決め方が異なるため、注意が必要です。
連帯債務型
1つの住宅ローンを夫婦2人で返済していく借り方です。この場合の持分は「返済額の割合」によって決めます。例えば、住宅ローン総額が5,000万円のケースで見ていきましょう。
【費用負担の割合】 | |
---|---|
夫3,000万円 | 妻2,000万円 |
それぞれの返済額を住宅ローンの総額で割るため、以下の計算で算出します。
夫の持分 | 妻の持分 |
---|---|
3,000万円÷5,000万円=0.6 | 2,000万円÷5,000万円=0.4 |
この場合、夫の持分が3/5となり、妻が2/5となります。
ペアローン
夫婦や親子でペアローンを組む場合は、不動産購入時に支払う頭金と借入額に応じて割合を決めます。住宅購入費用が5,000万円のケースで見ていきましょう。
夫の頭金 | 妻の頭金 |
---|---|
200万円 | 100万円 |
夫の借入額 | 妻の借入額 |
1,800万円 | 2,900万円 |
夫の支払額合計 | 妻の支払額合計 |
2,000万円 | 3,000万円 |
この場合、次のような計算で持分を求めます。
夫の持分 | 妻の持分 |
---|---|
(夫の頭金200万円+借入額1,800万円)÷5,000万円=0.4 | (妻の頭金100万円+借入額2,900万円)÷5,000万円=0.6 |
この場合、夫の持分が2/5となり、妻が3/5となります。
親からの援助があれば出資額をもとに算出する
親からの住宅資金の援助がある場合は、以下のように計算します。
例えば5,000万円の不動産を住宅ローンを組んで購入する際に、夫の親から1,000万円の贈与があったケースで見ていきましょう。
夫の親からの贈与額 | 夫・妻それぞれの借入額 |
---|---|
1,000万円 | 2,000万円 |
この場合、次のような計算で持分を求めます。
夫の持分 | 妻の持分 |
---|---|
夫の親からの贈与1,000万円+夫の借入額2,000万円÷5,000万円=0.6 | 妻の借入額2,000万円÷5,000万円=0.4 |
夫側の親が贈与した場合は、夫の借入額と合算して計上します。
この場合、親が援助し、その金額に対する割合の持分を取得させない場合、贈与を受けた側(夫)に対して贈与税が発生してしまう可能性があるので注意が必要になります。
参照:国税局 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
共有持分の割合を決める3つの注意点
ここでは、共有持分の割合を決める3つの注意点を解説します。理解しておかないと損をするケースがあるため、しっかり確認するようにしましょう。
共有持分と負担額が相違する場合「贈与税」が課せられる
持分割合は、不動産購入の負担額や住宅ローンの借入額の割合で決める必要があります。
「夫婦だからきっちり半分にしよう」という考えで持分割合を決めてしまうと、贈与税の発生や住宅ローン控除額の減少などで損をするケースがあるからです。
持分割合を適当に決めてしまうとどんな損をするのか、事例で見ていきましょう。例えば、5,000万円のマイホームを購入したケースです。
夫の費用負担額 | 妻の費用負担額 |
---|---|
4,000万円 | 1,000万円 |
この場合の持分は、本来以下のようになります。
夫の共有持分 | 妻の共有持分 |
---|---|
4/5 | 1/5 |
ここで持分を1/2ずつに設定した場合、夫婦それぞれ半分(2,500万円)ずつ負担することになります。
しかし妻は実際に1,000万円しか負担していないため、相違が生まれます。
この場合、差額となる1,500万円は夫から妻へ「贈与」されたことになります。
実際の住宅ローン借入負担額の割合と異なる持分に設定してしまうと、贈与税が課せられるおそれがあるため注意しましょう。
住宅ローン控除で損をするケースがある
持分の割合を適切に設定しない場合、住宅ローン控除額で損をする恐れがあります。以下の例で解説します。
夫のローン残高 | 妻のローン残高 | 各持分 |
---|---|---|
3,000万円 | 2,000万円 | 各持分1/2 |
上記の場合、夫のローン残高3,000万円に対して控除されるため、以下の控除額になると思うのが一般的です。
ローン残高3,000万 |
---|
3,000万円×0.7%=21万円 |
しかし持分を1/2に設定しているため、控除額は5,000万円の半分の2,500万円となり、以下の計算になります。
持分に応じた控除になる |
---|
2,500万円×0.7%=17.5万円 |
この場合、3.5万円分の控除額が減ってしまいます。
差額の500万円は夫の住宅購入費用とみなされないため、住宅ローン控除の対象外です。
持分を夫婦それぞれのローン残高割合に合わせずに持分を設定してしまうと、上記のように損をするケースがあるため注意しましょう。
持分が割り切れない場合は端数を調整する
持分の割合が割り切れないケースがあります。その場合は、端数を調整しましょう。以下のケースの場合で解説します。
夫の費用負担額 | 妻の費用負担額 |
---|---|
3,700万円 | 1,800万円 |
夫の持分 | 妻の持分 |
---|---|
3,700万円÷5,500万円=0.672727272727… | 1,800万円÷5,500万円=0.327272727272… |
このように、数が割り切れない場合は端数を調整して以下のように直します。
夫の持分 | 妻の持分 |
---|---|
0.67272727…=67.2727…/100=67/100 | 0.32727272…=32.7272…/100=33/100 |
端数を調整した分、夫の持分が減少して妻の持分が約0.27増加しています。
5,500万円に対して譲渡した持分を計算すると約15万円になります。
基本的にこの場合「贈与税」が課税されますが、年間110万円までの基礎控除があるため、上記の場合は課税されません。
持分の端数を調整する際には、贈与税がかかるかどうかを意識するようにしましょう。
共有持分の割合が決まらない場合の対処法3選
共有持分の割合が決まらない場合は「売却」という選択肢があります。
共有者同士の持分問題をスムーズに解決するために、視野に入れましょう。
ここでは、持分売却の3つの方法を解説します。
持分を他の共有者に売却する
持分を他の共有者に売却する方法があります。他の共有者が持分を購入するメリットは「単独所有」になることです。
例えば、2人の共有名義で持分1/2ずつ所有している建物の場合で見てみましょう。
- 共有の場合は・・・売却や利用する際に自分一人の意見で自由がきかない
- 単独になれば・・・売るなり住むなり自由に活用できる
この場合、共有持分を買い取った共有者には不動産を自由に利用できるメリットがあります。
しかし、相手に経済的な余裕がない場合は実現しません。そのため、極端に安い価格でしか購入してもらえない可能性があります。
売却価格が整わない場合、争いに発展する恐れもあるため注意が必要です。
共有持分を一般の第三者へ売却する
共有者でなく、一般の第三者へ共有持分を売却する方法です。
共有持分を取得しても目的が達せられない場合など「購入する意味がないケース」が多いため、共有者以外の第三者が購入してくれる可能性は、極端に少ないことを知っておきましょう。
共有持分を買取業者に売却する
共有持分をスムーズに売却する方法でおすすめは、持分買取専門の業者に売却することです。専門の買取業者なら、トラブルを起こさずに共有持分を購入してくれます。
自己の共有持分は他の共有者の承諾がなくても単独で売却できるため、共有名義から抜け出せます。さらにスピーディーに現金化できるため、数日で売却することも可能です。
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この記事で解説した「共有持分の割合を決める6つの方法」を知っておけば、それぞれの状況に応じた共有持分を適切に決められます。相続時と購入時では、共有持分の決め方が異なるためしっかり理解しておきましょう。
しかし、共有持分を相続などで取得しても使い方が分からず「できれば早めに処分したい」と悩んでいる方も多いでしょう。
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