法律

民法を簡単に解説!不動産に関する法務・契約・権利・相続

民法を簡単に解説!不動産に関する法務・契約・権利・相続

普段は特に意識しないかもしれませんが、私たち国民は民法に定められた内容に則って生活をしています。
スーパーで買物をしたりすること(売買契約)、駐車場を借りること(賃貸借契約)、車を買って所有権が移ること、土地を騙されて買った場合、契約を取り消すことができるということ、これらは全て民法で規定されています。
買った家の柱が腐っていた、急な相続で不動産を取得したなど、民法は不動産の分野でも大きく関わってきます。
安全に不動産の取引ができるように、ある程度の知識を身に着けておいたほうが安心です。
民法の基本原則は「公共の福祉」、「信義誠実の原則」、「権利濫用の禁止」の3つです。
(民法第1条)
条文によっては常識で理解できる内容もありますので簡単に解説していきます。

「売る」、「買う」など意思表示。契約に契約書は不要?!

意思表示とはそのままの意味で、心の中で思っていたことを相手に伝えることです。
主に「売る」、「買う」、「貸す」、「借りる」のことを指します。
「このゲームを1万円で買います。」という意思表示に対して「このゲームを1万円で売ります。」という意思表示がされると売買契約は成立します。
口頭での意思表示で契約は成立するため、契約書などの書面は不要です。
例えば「契約書にサインはしていないが口頭で売買の約束をした」という場合は、当事者の意思表示が合致していればすでに契約は成立しています。
※契約書は契約成立の要件ではありませんが、なにかトラブルがあったときに証拠が残らず、裁判で不利になる恐れがあります。そのため不動産売買などは契約書を作成します。
しかし、意思表示が冗談であった場合、言い間違えてしまった場合、契約の内容を勘違いをしていた場合、騙されていた場合も契約は成立しているのか…
民法ではこのような問題がある意思表示についても規定しています。(民法93条~96条)

意志と表示。これらに問題がある場合は?!

意思表示は心の中で思っている「意志」と相手に伝える「表示」の2つに分かれます。
「意志」と「表示」が合致していない場合など問題があった場合にはどうなるのでしょうか。

心裡留保(民法第93条)

例えば、Aさんが本当はマンションを買う気がないのに「マンションを買わせてください」と営業マンBさんに伝えた場合、買う「意志」がないのに、買いたいと「表示」をしたことになります。
このように「意志」と「表示」が合致しない意思表示のことを心裡留保といいます。
※一般的には冗談として語られる戯言のことを指します。
この場合は「マンションを買わせてください」という意思表示は有効となります。
買う「意志」があるかどうかは営業マンBさんには分からないので買いたいという「表示」を信じたのにも関わらず無効になってしまうと大変迷惑で混乱するためです。
ただし、営業マンBさんがAさんの言葉が冗談であるということを知っていた場合(悪意)や注意すれば冗談だと分かる場合(過失がある)には、Aさんの意思表示は無効となります。
しかしながら、これらの心裡留保による意思表示の無効は善意の第三者には対抗することはできません。
Aさんが売る意志がないのにも関わらず、Bさんに土地を売る契約をして登記も移したとします。Aさんが売る意志がなかったことをBさんが知っていた場合(悪意)、Aさんの意思表示は無効となり、AさんBさん間の土地の売買契約も無効になります。
ですがAさんBさん間でそのような土地の売買があったことを知らない善意の第三者であるCさんがBさんから土地を買った場合、AさんはCさんに対してAさんBさん間の売買の無効を主張することができません。
ここでポイントとなるのは善意の第三者ということです。BさんとCさんが共謀していた場合(悪意)は当てはまりません。

おまけ: 民法上の「善意」、「悪意」
民法では、事情を知らないことを「善意」、事情を知っていることを「悪意」といいます。一般的な「善い行いをすること」、「危害を加えること」とは意味が違いますので注意が必要です。「善意」であるか「悪意」であるかによって法律の効果が異なることが数多くあります。

虚偽表示(民法第94条)

虚偽表示とは、当事者間で権利の移動があったかのように見せる虚偽の契約をすることです。例えば、Aさんの財産を隠すためにBさんに協力してもらい、Bさんに土地を売ったフリをするなどです。
この場合もAさんは土地を売りたいという「意志」がないのに、土地を売ったという「表示」がされていますが、心裡留保とは違いBさんもグルになっているため相手方を保護する必要がありません。つまり契約は無効となります。
ただし、AさんとBさんの契約が虚偽表示であることを知らない善意の第三者に対しては無効を主張できません。

錯誤(民法第95条)

錯誤とは簡単にいうと勘違いのことで、例えばAさんはBさんに土地を1,000万円で売りたいという「意志」がありましたが、勘違いをして100万円で売ると「表示」をしてしまったなどという場合です。
錯誤による意思表示をしてしまった人は、冗談で意思表示をした人(心裡留保)や虚偽の意思表示をした人(虚偽表示)よりも保護される必要があります。
しかしながら、常に無効とすると後から勘違いだったといえば何でも無効を主張できることになってしまうため問題です。
そこで民法では錯誤が「法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる」としました。(民法95条1項)
そして重過失の場合(少し注意すれば錯誤が避けられる場合)には下記②点の場合を除いて意思表示を取り消すことができません。(民法95条3項)

  • 相手方が本人に錯誤があることを知っていた、もしくは重過失によって知らなかった場合
  • 相手方が本人と同じ錯誤に陥っていた

おまけ: 錯誤の取り消し
民法では「無効」と「取り消し」という表現がされています。「無効」はそもそも契約が無効でなかったということ、「取り消し」の場合、契約は一旦「有効」ですが後から撤回できるという意味です。「無効」は誰でも主張できますが「取り消し」は取消権者のみが主張できます。
錯誤による意思表示は自動的に無効になるのではなく、取り消して初めて「無効」となります。したがって取り消し権には行使できる期間の制限があるので注意が必要です。

詐欺・脅迫(民法第96条)

騙されたり、脅されたりなど意思表示に違法な行為が加えられている場合は、さらに保護される必要があります。
違法行為をした人の立場によって契約の取り消しの要件が異なりますので順に解説していきます。

  • 当事者間の詐欺・脅迫の場合
  • AさんがBさんから「この絵は有名な画家の作品でとても価値のあるものだ」と騙されて高い値段で絵を買ってしまった場合、Aさんの意思表示は詐欺による意思表示として取り消すことができます。また、「この絵を買わないとひどい目に合うぞ」などと脅されて意思表示をした場合も取り消すことができます。(民法96条1項)
    ※ただし詐欺による意思表示の取消は善意無過失の第三者には対抗(主張)できません。
    善意無過失とは詐欺の事実を過失なく知らないという意味です。

  • 第三者の詐欺の場合
  • 契約相手ではなく、それ以外の第三者によって騙されて契約をした場合は契約の相手方が詐欺の事実を知っていた、または知ることができたときに限り、意思表示を取り消すことができます。(民法96条2項)
    例えばAさんがBさんを騙してBさんの土地をCさんに売らせたときにCさんがAさんの詐欺を知っていた場合、または知ることができたときにだけBさんはCさんに対する意思表示を取り消す事ができます。

  • 第三者の脅迫の場合
  • 契約相手以外の第三者に脅迫されていた場合は制限はありません。
    上記の②の例でAさんがBさんを脅迫していた場合はCさんがそのことを知らなくてもBさんは意思表示を取り消すことができます。
    詐欺の場合は騙されてしまったBさんにも少しの落ち度がありますが、脅迫の場合は命の危険がある可能性もあり、保護されるべきだからです。

意思表示に問題があった場合の取り扱いについては以上となります。意思表示を取り消すことができる内容もありますが、できるだけ注意して、慎重に意思表示をすることが大切です

土地を借りて家を建てる時、賃借権と地上権の違いは?

所有権と賃借権と地上権

家を建てたいと思った時に土地を用意する方法として土地を購入する、土地を賃借する、土地に地上権を設定するという方法があります。
土地を購入した場合、土地の所有権を持つことになりますので自由に利用することができます。(※ただし自由に利用できるというのは民法上の話で、都市計画法・建築基準法・その他関係法規の制限を受けます)
土地を賃借するというのは、いわゆる借地のことで地主との間で一定期間の賃貸借契約を結び、家を建てます。それに対し、地上権を設定するというのは地主との間で地上権設定契約を結び、家を建てます。
賃借権も地上権も「借地権」であり、どちらも第三者の土地を借りて建物を建てる権利ですが内容に違いがあります。
賃借権は地主との間の個人的な契約であり、契約を結んだ人が土地を使用できる債権のことです。賃料を必ず払う必要があり、相続はできますが他人に譲渡する場合は原則として地主の許可が必要です。また、登記をするときは地主の協力が必要で、登記がないと地主が第三者に土地を譲渡した場合に対抗できません。(※借地借家法により借地上に所有する建物について登記すれば賃借権を新地主に対抗できるという内容に緩和されています。)

一方で地上権は土地を使用するための物権のことで、契約内容に地主は関係ありません。
地上権のほうが土地に関して強い権利を持っており、地主の許可なく譲渡、転貸ができ相続もできます。また物権のため権利者だけで登記をすることができ、登記で第三者に対抗できます。(民法177条)そのため地主が第三者に土地を譲渡しても影響はありません。

おまけ: 区分地上権
他人の土地に地下鉄やモノレールを通す場合など、土地の空中もしくは地中など一部分だけについて利用するという範囲を定めた地上権を設定することも可能です。
これを区分地上権と言います。すでに地上権が設定されている土地でも区分地上権は設定できます。

抵当権とは?分かりやすく解説_担保物権

抵当権とは?!

抵当権とは担保目的物を抵当権設定者(抵当権が設定された側)の手もとにおいて、使用収益ができるようにし、債権の弁済がないときは担保目的物を売却し、その代金から優先弁済を受ける担保物権です。(民法369条1項)
抵当権設定者は担保目的物を自由に使用することができ、第三者への譲渡も可能です。
対抗要件は登記で、登記さえあれば第三者に譲渡された場合も担保目的物を売却し、優先弁済を受けることができます。抵当権者が複数いる場合は登記の前後で優劣が決まります。

例えばAさんは戸建てを購入するために銀行Cで住宅ローンを組み、お金を借ります。銀行CはAさんが購入した戸建てに抵当権を設定し、万が一Aさんが住宅ローンの返済ができなくなった場合には戸建てを競売にかけ、その代金を回収します。
Aさんを抵当権設定者、銀行Cを抵当権者、Aさんが購入した戸建てを担保目的物といいます。

抵当権の抹消について

上記の例でAさんは銀行Cの抵当権が設定された家を自由に使用することができ、第三者のDさんに売却することも可能です。
しかし戸建てがDさんの所有物となり登記が済んでいたとしても銀行Cの抵当権の登記がそのままでAさんが返済できなくなってしまった場合、戸建ては競売にかけられてしまいます。それではDさんは安心して暮らせないため、実際の不動産取引では抵当権が抹消されてから(抵当権の抹消と同時に)売買をすることが一般的です。
不動産を購入する際は抵当権が設定されていないこと(売買契約前に抹消されること)を念の為確認しましょう。
抵当権の抹消は住宅ローンの完済後に抵当権設定者に銀行から必要書類が届くので司法書士に依頼するか、法務局で手続きをします。(その際は登録免許税がかかります)

急な相続時に損しないための知識_相続法

相続とは?!マイナスのときは放棄できる?

相続とは

相続とは死亡した人の親族関係の人が、死亡した人の財産を受け継ぐことです。
相続する人を「相続人」、死亡した人を「被相続人」といいます。相続は死亡により開始し、(民法882条)相続人は被相続人の死亡時に生存していなければいけません。
相続によって承継される財産を「相続財産」といい、プラスの場合もあればマイナスの場合もあります。

相続の単純承認、限定承認、相続放棄

相続にはプラスの場合もあればマイナスの場合もあるため相続人には内容を確認するために三ヶ月の考慮期間が与えられます。(民法915条)
相続の内容をしっかり確認した上で、単純承認、限定承認、相続放棄のいずれかをすることができます。

  • 単純承認
  • 被相続人の権利義務を全て承継することです。(民法920条)預金や不動産、車、借金などプラスの財産もマイナスの財産も全て承継します。何らかの形で単純承認の意思表示がされれば家庭裁判所への申述は不要です。三ヶ月間の考慮期間内に限定承認、放棄がされないときは単純承認がされたとみなされます。

  • 限定承認
  • 限定承認をすると相続財産のプラスの限度で借金などの債務の負担を引継ぐことになります。(民法922条)形見の品を残すことができ、大きな借金を背負わなくて済むことがメリットです。ただし、相続人が複数いる場合は全員の同意が必要で(民法923条)、一人でも単純承認をすると、他の相続人は限定承認できません。

  • 相続放棄
  • 相続放棄をするとプラスの財産もマイナスの財産も承継しないことになります。(民法939条)形見も残すことができず全ての財産を放棄することになります。(経済的な価値が殆ど無い場合は残すことができる場合があります)

相続人は誰がなれるの?

相続人は親族であれば誰でもなれるわけではなく、順序が決まっています。誰がどのような順序で相続するのかを解説していきます。
配偶者は常に相続人となり(民法890条)、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。なお、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。また、内縁関係の人は、相続人に含まれません

  • <第1順位>被相続人の子
  • 被相続人の子が既に死亡しているときは、そのさらに子供が相続人となります。

  • <第2順位>被相続人の直系尊属。(父母や祖父母など)
  • 父母も祖父母もいるときは、親等の近いほう(父母)が相続人となります。
    第2順位の人は、第1順位の人がいないとき相続人になります。

  • <第3順位>被相続人の兄弟姉妹
  • 被相続人の兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。
    第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。

    参照:国税庁HP(No.4132 相続人の範囲と法定相続分)

どれだけ相続するの?法定相続分とは?

相続人が一人の場合は相続財産はすべてその人が相続しますが、相続人が複数いる場合はそれぞれの割合が民法で規定されています。これを法定相続分といいます。(民法900条)
法定相続分は次のとおりです。なお、子供、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けます。
また、民法に定める法定相続分は、相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の持分であり、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。

配偶者と子供が相続人である場合

配偶者2分の1 子供(2人以上のときは全員で)2分の1

配偶者と直系尊属が相続人である場合

配偶者3分の2 直系尊属(2人以上のときは全員で)3分の1

配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合

配偶者4分の3 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)4分の1

参照:国税庁HP(No.4132 相続人の範囲と法定相続分)

遺留分とは?相続人への最低限の保証

遺留分とは

配偶者は常に相続人となりますが、もし配偶者へは遺産を渡さないという内容の遺言があった場合にはどうなるのでしょうか。
例えば愛人に全ての財産を相続させるなどという遺言が見つかることがあるかもしれません。そのときに残された家族を守るために、相続人が相続財産の一定の割合の額を受け取れるように定められたのが遺留分です。
相続では被相続人の意志も大事ですが相続人の財産への期待も保護されており、遺留分は遺言の内容よりも強い権利です。そのため被相続人の財産の処分はある程度は制限されているといえます。
ただし、遺留分の侵害を理由に財産処分行為を無効にできる、自動的になかったものになるというわけではなく、一定の相続人が遺留分侵害額請求権(民法1046条)により受遺者もしくは受贈者に対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払いが請求できるというものです。
すなわち愛人へ全ての財産を相続するという遺言が見つかった場合、その遺言は無効になるわけではなく、愛人に対して遺留分の請求を行うということです。
※実際の相続の際は遺産分割協議の段階で遺留分を考慮した分割を行い、訴訟などの手続きを省略することが多いです。

遺留分が認められる人とその割合

遺留分が認められるのは、法定相続人の中の配偶者、子、直系尊属(親、祖父母など)のみで、兄弟姉妹が相続人の場合には遺留分はありません。
遺留分の割合は下記のとおりです。

  • 相続人に配偶者、もしくは子を含む場合
  • 被相続人財産の2分の1

  • 直系尊属のみが相続人である場合
  • 被相続人財産の3分の1

民法を修正・補完する法律_特別法

民法は1条から1050条までありますがそれだけでは私たちの生活の全てを規律するには不十分です。
不動産の分野では借地借家法、区分所有法、不動産登記法などの特別法があり、より細かくルールが定められています。
民法は一般法ですが原則として特別法は一般法よりも優先されます。

借地、底地は法律トラブルが多い

ここまで民法の権利関係、契約、相続について解説してきました。
トラブルが起きた際にどのように取り扱うのか、それぞれにどのような権利があるのかを取り決めているのが民法です。
不動産売買では債務、債権に関して地主さんが絡んでくる借地、底地の取引の時にトラブルが起きるケースが多いです。
そこで私たちは地主さんと借地権者さん間の交渉を引き受けるなど、借地底地の専門家として相談を承っております。

これだけ複雑な法律関係を個人で解決するには非常に困難です。
弊社では法律のプロである弁護士と連携し、これまでも様々なトラブル・悩みを解決してきました。
ささいなことでも構いませんので、お困りごとがございましたら、ぜひ、ご相談ください。ご相談も査定も無料で承っております。