アパートを相続すれば、家賃収入が得られるため喜ばしいことですが、多くの課題も伴います。特に、築年数が古いアパートを相続した場合、さまざまな問題に対処することが必要です。
対処すべき問題を放置すると、経営リスクが高まるばかりか、資産価値の低下にも繋がります。
そこでこの記事では、築年数が古いアパートを相続した際に注意すべきポイントや、アパート相続後に賃貸経営を安定させるポイントについて詳しく解説します。
アパートの相続に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
古いアパートを相続した場合の3つの選択肢
相続した物件が築年数の経過した古いアパートである場合、3つの選択肢があります。ここでは、それぞれの注意点や考慮すべきポイントを詳しく解説します。
1. 賃貸経営をそのまま継続する
古いアパートを相続した際、賃貸経営をそのまま継続する方は多いでしょう。
しかし、古いアパートは築年数に応じて、修繕やメンテナンスが必要となる場合が多く、特に耐震性や断熱性などの面で現行の建築基準法に適合していない場合、修繕費用がかさむ可能性があります。
また、設備の老朽化による「入居者離れ」や、新規入居者の獲得が難しくなることが大きなリスクです。リスクを回避するためには、定期的なメンテナンス計画を立て、必要な修繕を行うことが重要です。
2. リノベーションして再利用する
相続した古いアパートを改装し、再び賃貸物件として利用する選択肢があります。
古いアパートは、築年数が経過するにつれてその価値が低下しますが、リノベーションを行うことで、建物の価値を再生させることが可能です。
リノベーションによって、最新の設備やデザインを導入することで、入居者のニーズに応えやすくなります。
しかし、リノベーションには多額の費用がかかるため、事前に詳細な見積もりを取り、費用対効果を十分に検討することが重要です。
専門家である不動産会社のアドバイスを受けながら計画を進め、効果的なリノベーションを実現して収益性を向上させましょう。
3. 売却して資産を現金化する
古いアパートを相続した際、賃貸経営やリノベーションに対して時間や資金を投入することが難しい場合、売却して資産を現金化する選択肢が考えられます。
売却によって、相続税や修繕費用などの経済的負担を軽減し、得た資金を他の投資や生活資金として利用することが可能です。
ただし、売却する際には不動産市場の動向を把握し、適切なタイミングで売却することが重要です。
また、売却に伴う手続きや税務上の注意点についても、不動産会社のサポートを受けながら進めることで、スムーズかつ有利な取引を実現できます。
売却を検討する場合は、複数の不動産会社に査定を依頼し、適正価格を提示する会社を選ぶことが成功の鍵です。
アパート相続時に行うべき5つのステップ
アパートを相続することは、一見複雑に思えるかもしれません。
しかし、適切なステップを踏むことでスムーズに進めることができます。ここでは、アパート相続時に行うべき5つのステップについて詳しく解説します。
ステップ1. 相続税の確認と納付
相続税額は、アパートの評価額によって変わるため、正確に評価することが重要です。相続税路線価図を活用して、おおよその評価額を確認しましょう。
また、相続税は、相続開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に納付する必要があります。
納付が遅れると延滞税が発生するため、早めの準備が必要です。
参考資料:国税庁|路線価図・評価倍率表
ステップ2. 相続登記の手続き
相続登記とは、不動産の名義を被相続人(亡くなった人)から相続人へ変更する手続きです。
手続きには時間を要するため、早めに司法書士や不動産会社に相談するようにしましょう。
相続登記をせずに放置しておくと、売却や賃貸契約がスムーズにできない恐れがあります。
登記手続きは、必要書類を揃えて法務局に申請します。自分でも申請できますが、司法書士に依頼することで、スムーズに手続きを進めることが可能です。
ステップ3. 準確定申告の準備
準確定申告とは、被相続人が生前に得た所得に対して税金を確定させるために、相続人が被相続人の代わりに確定申告を行うことです。
被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得金額及び税額を計算して、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に申告と納税をします。
相続人が2人以上いる場合は、連署により申告書を提出します。
ただし、相続人それぞれが他の相続人の氏名を記載して別々に提出することも可能です。
この場合、申告書を提出した相続人は、その内容を他の相続人に通知する義務があります。
参考資料:国税庁|準確定申告
ステップ4. アパートの現状評価とリノベーション計画
相続したアパートの現状を正確に把握し、必要なリノベーション計画を立てることが重要です。
建築士や工務店の専門家に依頼して、建物の老朽化状況、耐震性、配管や電気設備の状態などを調査します。
リノベーションを行う場合、内装の変更やキッチンやバスルームの設備取り換え、間取りの変更などが考えられます。
設備を新品にしてグレードをあげることで、物件の価値を向上させることが可能です。
ステップ5. 継続経営か売却かの判断
最終的に、相続したアパートを継続経営するか、売却するかを判断します。
継続経営する場合は、月々の賃料収入や経費(修繕費、管理費、固定資産税など)を詳細に計算し、利益が出るかどうかを確認しましょう。
近隣地域の賃貸市場の動向を調査し、空室リスクや賃料の将来性を見極めることが重要です。
一方、売却を選ぶ場合、現在の不動産市場の価格動向を調べ、売却のタイミングを慎重に検討します。
例えば、周辺地域での最近の取引価格を参考にし、不動産会社と相談して最適な売却価格を設定します。
また、売却に際しては広告宣伝費や仲介手数料などの費用も考慮し、総合的な利益を見積もるようにしましょう。
どちらの選択肢が最適かを判断するためには、不動産会社に相談し、アドバイスを受けることがおすすめです。
築年数が古いアパートを相続した場合の注意点3選
古いアパートを相続する場合には、多くの注意点があります。ここでは、特に重要な3つのポイントについて詳しく説明します。
注意点1. 必要な修繕費用の見積もりをとる
築年数が古いアパートは、経年劣化により多くの箇所で修繕が必要となる恐れがあります。例えば以下のような状況です。
- ●屋根や外壁の劣化
- ●配管の老朽化
- ●内装の傷み
修繕を怠ると、入居者の安全性や住み心地に悪影響を与えるだけでなく、空室リスクも高まります。修繕が必要な箇所を詳細に調査し、修理業者に見積もりを依頼することが重要です。
修理箇所に対しての確認点は、以下の表を参考にしてください。
修理箇所 | 確認点 |
---|---|
屋根と外壁 | 雨漏りやひび割れがないか確認 |
配管と電気設備 | 漏水や漏電のリスクを確認 |
内装と設備 | 壁紙や床材の劣化、キッチンやバスルームの老朽化を確認 |
修繕費用を正確に把握して「適切な予算」を立てることで、アパートの資産価値を維持し、安定した賃貸経営を継続できます。
注意点2. 現行の建築基準法への適合性を確かめる
相続した古いアパートが、現行の建築基準法に適合しているかを確認することは重要です。
特に、耐震基準や火災安全基準を満たしていない場合、入居者の安全に直結する問題となります。
具体的な対応策としては、以下のとおりです。
- ●耐震補強:地震に備えて建物の耐震性を強化
- ●火災報知機の設置:火災時に早期発見が可能となるよう設置
- ●避難経路の確保:非常時に安全に避難できるよう経路を確保
これらの対策を講じることで、入居者の安全を守り、空室リスクの軽減に繋がります。建築士や不動産会社などの専門家に依頼して、建物の適合性をチェックし、必要な改修を行うことが大切です。
注意点3. 入居者との契約内容を見直す
入居者との契約内容が古いままだと、現行の法律や市場状況に合わない場合があります。
以下の点に注意して、契約内容を見直しましょう。
- ●保証会社や火災保険の加入:未加入の入居者がいる場合、加入を促す
- ●賃料の見直し:家賃が相場より安い場合、適正な賃料への改定を検討
- ●新たな契約書の作成:契約内容が古い場合、新たに契約書を作成し再締結する
契約内容を見直すことにより、法的なトラブルを未然に防ぎ、賃貸経営の安定性を向上できます。
入居者との信頼関係を構築し、契約内容の理解と納得を得るようにしましょう。
アパート相続後に賃貸経営を安定させる4つのポイント
アパートを相続した後、安定した賃貸経営を行うためには4つの重要なポイントがあります。これらのポイントを押さえることで、空室リスクを低減し、長期的な収益を確保することが可能です。
1. 賃貸経営戦略を再確認する
賃貸経営を成功させるためには、アパートが所在するエリアの賃貸需要や供給のバランスを把握することが不可欠です。
周辺の新築物件やリノベーション物件の賃料設定や空室率を調査し、競合状況を理解しましょう。さらに、入居者のターゲット層(単身者、ファミリー、高齢者など)を明確にし、それに応じた賃貸経営戦略を立てることが求められます。
例えば、大学やオフィス街が近い場合、単身者向けの設備やサービスを充実させるといった具体的な施策が効果的です。
地域の特性や住民のニーズを反映した戦略を採用することで、長期的な安定収益を確保できます。
賃料設定やマーケティング施策を最適化し、空室リスクの軽減につなげましょう。
2. 建物管理とメンテナンスを定期的に行う
アパートの資産価値を維持し、入居者の満足度を高めるためには、建物管理とメンテナンスが欠かせません。
特に、古いアパートの場合は、老朽化が進んでいるため、修繕が必要な箇所は早めに対応することが大切です。
例えば、屋根や外壁の塗装、配管の交換、電気設備の取替えなど、具体的なメンテナンス項目を計画的に実施することで、予期せぬトラブルを未然に防ぎ、修繕費用を抑えることが可能です。
また、メンテナンス計画を立て、専門業者に依頼することで、効率的かつ確実な管理を実現できます。これにより、入居者の満足度を高め、賃貸経営が安定します。
4. 専門家のサポートを受ける
賃貸経営においては、以下の専門家のサポートを受けることが重要です。
- ●税理士
- ●建築士・工務店
- ●不動産管理会社
例えば、税理士に相談することで、相続税や所得税の適切な申告が行えます。
年間の収入と経費を正確に計算し、節税対策を立てることが可能です。税務調査が入った場合にも税理士が対応することで法的トラブルを未然に防止できます。
また、リノベーションや修繕が必要な場合には、建築士や工務店に相談することが有効です。
例えば、古くなった設備の交換、耐震補強工事、内装のリノベーションなど実施することで、物件の価値を高められます。
さらに、不動産管理会社を利用することで、入居者募集や賃貸管理業務を効率化できます。
具体的には「入居者の選定」「賃貸借契約書の作成」「家賃の集金」「クレーム対応」など、日常の管理業務の代行です。
不動産管理会社は、定期的な物件の巡回点検やメンテナンスの手配も行ってくれるため、安心して任せられます。
まとめ
アパートの相続には、多くの手続きや判断が必要ですが、適切なステップを踏むことでスムーズに進めることが可能です。
アパートを相続する際に必要な一連の流れを、しっかりと押さえておきましょう。
また、築年数が古いアパートの場合、修繕費用の見積もり、建築基準法への適合性の確認、入居者との契約内容の見直しが重要です。
これらのポイントを適切に対応することで、相続後の賃貸経営が安定します。
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